インターン&文化祭 編
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かっちゃんに背負われ寮に着くと、何があったと既に集まっていたクラスのみんなに囲まれる。
『えっと...』
「ふざけた奴らのせいで階段で盛大に転けた。分かったら早く退けや」
どう答えようか困っていると、割り込むようにかっちゃんが答え、有り無し言わせぬ態度で突き進む。
『言わないでくれてありがとう』
「正直に答えるほどデリカシー死んでねえっつーの。お前も言い訳くらいちゃんと考えとけよ。手当てできるもん持ってくる。出来そうなら上だけでも着替えておけ」
『うん。手間かけちゃってごめん...』
「エレベーター下りて上るくらいなんでもねえわ」
部屋を出て行くかっちゃんを見送り、痛みに耐えながらクローゼットへと向かう。
膝はスカートの方が治療しやすいし、壊されたりしてないからこのままでいっか。手当てしてもらうのに、邪魔にならない服にしなければと、Tシャツを手に取る。
あれ?手が震えてる。
そうか...私怖かったんだ。
気持ち悪さや、かっちゃんを悪く言われた怒りが強すぎて気付かなかった。でもきっとずっと怖かったのだ。思い出した途端に足に力が入らなくなってそのまま床に座り込んでしまった。
ヴィラン相手でもビビらず戦えるようになったのに、触られたくらいでバカみたい...
少し経つとノックと入っていいかと声が聞こえた。
良いよと答えるとかっちゃんは部屋に入り、床に座っている私を見て焦った顔をして駆け寄ってきた。
「足そんな痛えのか!?やっぱ保健室行った方が」
『違う違う!なんか情けないことに腰が抜けちゃって...ヴィランと戦った時もこんな事なかったのに変だよね。ただ触られただけなのにさ。そんな乙女って、か弱いキャラでもないのに笑っちゃうよね』
「変でも情けなくもねえだろ。強くなろうがなんだろうがお前は女なんだからよ。ベッドまで運ぶぞ」
『ごめん、よろしく...ってうわっ!』
かっちゃんが背を向けてくれるのを待とうとすると、突然の浮遊感に襲われた。
「暴れんな」
『う、うん...』
これってお姫様抱っこってやつでは?まさか人生でお姫様抱っこをされる日が来るとは夢にも思わなかった。
顔近いしなんかこれ恥ずかしい...
「お前、何か顔赤くねえか?風邪でもひいたか?」
『ううん...お、お姫様抱っこなんて、されるの初めてでなんか恥ずかしくて...』
「は?」
目を丸くしキョトンとした顔をする、かっちゃんに更に恥ずかしさが募っていく。
『だから、その...早く降ろして...』
「あっははっ!十分乙女じゃねえかユウチャンよォ」
『むぅ...』
「...可愛い」
『へ!?』
「どうした突然」
『な、なんでもない...』
聞き間違いっていうか幻聴だよね?かっちゃんなんでもない顔してるし、第一かっちゃんから可愛いなんて言葉が出るはずない。しかも私になんて絶対ありえない。
めっちゃ自意識過剰じゃん!頭お花畑じゃん!恥ずかしくて死にたい...
「フハッ!顔真っ赤」
『うぅ...』
やっとベッドに降ろして貰えたが、もう私の精神はズタボロである。
『かっちゃんのいじわる...』
「ベッドに運んでやっただけだろーが。まず足からだな。痛えと思うが我慢しろ」
『いっ...』
慣れた様子で綺麗に処置を施していくかっちゃんには流石としか言いようがない。
それに...
私に触れる手がとても優しくて、温かい。触れるという行為自体は同じ筈なのに、どうしてこんなに違うのだろう。
「よし、最後は顔だな。...さっきより腫れてきてんな」
悲しそうに揺れる赤い瞳に申し訳ない気持ちになっていると、かっちゃんは顔を近付け、私の左頬にそっと手を添えた。
なに...この感じ...
かっちゃんが私に触れる事も、この距離まで近付く事も初めてじゃないのに、なんでこんなに恥ずかしくてドキドキするんだろう。
「骨折してねえとも限らねえし、やっぱ明日保健室で診てもらった方がいいな。口ん中は大丈夫かって...っ!?おまっ!なんつー顔してんだよ!」
『え...?』
「んな顔で見んじゃねーよ!危ねえだろうが!」
フイっと横を向いてしまった、かっちゃんにショックを受ける。
そんな見るに堪えないほど酷い顔してたなんてショックだ...鏡見たくないなあ...
「なんとか終わったな」
『ありがとうかっちゃん』
「下行くか?」
『んーおんぶして貰うのも申し訳ないし、ちょっと疲れちゃったから休もうかな』
「そうか。
...お前こんな事されてもまだ他科の為になんて文化祭やんのか?オレはもうやんねー。他科の為になんて冗談じゃねえ」
『私はやるよ。色んな人の不満の声たくさん聞いてきた。心無い声もたくさん聞いたし、かっちゃんの事悪く言うのはほんとムカついた。でも中には、ストレスを感じながらも無事帰ってきてくれて良かったって言ってくれた人もいるから、その人達の為になりたいし頑張りたい。それに此処で引いたら、あの3人に負けたみたいで嫌だ』
「なら頑張れ。...つーか今3人つったか?3人ってお前襲った奴らの事だよなァ?」
『う、うん』
「女1人に3人とかふざけやがって!クソッ!ぜってえ殺す!おい、覚えてねえって言ってたが本当にか?」
『ほ、本当に顔も声も全然思い出せなくて、多分個性のせいだと思うんだけど...というか聞いてどうするの?殺すとか殴るとか絶対ダメだよ!?退学になっちゃう』
「本当の本当に殺してえし、クッッソムカつくがしねえよ。そうなったらソイツらの思うツボっぽくて更にムカつく」
『良かった...さっきは本当に殺すんじゃないかって焦ったよ...かっちゃん信じられないくらいキレてたし怖かったし...』
「さっきは頭に血上ってどうなるとか何にも考えられなかったし、ガチで殺そうとしてた」
『え?冗談だよね...?私のせいで、かっちゃん殺人犯になっちゃうとか絶対嫌だからね!?そんなんなったら自殺するしかない...』
「そんな簡単に死のうとすんなや!ったく...でもなんか思い出したら言え。お前の他にも被害者がいる可能性も出る可能性もあるからな」
『...!そうだね。そうする。...かっちゃん、救けてくれてありがとう』
「ああ。後でお前の分の夕飯持ってくる。それまでゆっくり休んどけ。なんかあればラインしろ」
『うん。ありがとう』
かっちゃんが出ていった部屋で1人ベッドに寝そべる。
かっちゃんって本当に器用だな。どの傷も包帯やテーピングでとても綺麗に処置されている。
そっと頬に触れると、先程の事が頭を過ぎった。触れ方もぬくもりも、憂いげな表情も生々しいほど鮮明に浮かび、体が熱くなる。
今日の私なんか変だ...
きっと全部あのお姫様抱っこ事件のせいだ。幻聴まで聞こえる始末だったし、そうに違いない。私のこと軽々持ち上げちゃうし、手大きいし、なんかすごい男の人って感じがして...
もう!変な事ばっかり浮かんじゃうしダメだ。寝よう!
お姫様にはほど遠い