ゆーあーmyヒーロー
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『美味しいー!生き返る!』
「チキンぐらいで大袈裟なんだよ。ほんと馬鹿だな」
『かっちゃん私のことバカにしすぎ!』
「実際馬鹿だろお前。馬鹿のくせによく雄英受けたな。どうせ今日の筆記もボロボロだろ」
『一応ほとんど埋めれたもん!雄英入るために中学入ってからずっと勉強してたし多分大丈夫...だと思う...』
「自信がねえのは相変わらずだな。勉強苦手なお前がそれだけ頑張ったんだ。もしかしたら受かるかもな」
『受かってるといいな...
ねえ!もし受かったら何処か遊びに連れてってよ!』
「はあ?」
『だって私この辺のこと何も知らないし、都会はとにかく道に迷う!今日だって学校に行くのにどれだけ手こずったことか...』
「都会でもねえだろココ。ほんと馬鹿だな。しょうがねえから連れてってやるよ」
『やった!受かるといいな〜夢の一人暮らしを始めて、都会を満喫して〜ふふっ楽しみ!』
「単細胞」
『なんだと』
「それより早く食った方がいいんじゃねえか。お前のくだらねえ話で結構時間経ったぞ」
『ヤバっ』
慌てて食べ始めるが心配することはなく、かなりお腹が空いていたのでテーブルに置かれた食べ物はどんどんなくなっていった。
『かっちゃんのそれ1口ちょうだい!』
かっちゃんがかぶりつく度にバリバリと美味しそうな音を立てるチキンを指さしておねだりをしてみる。
「てめえ食い意地はりすぎだろ。女らしさの欠片もねえな」
文句を言いつつも差し出してくれたチキンを喜んで1口食べる。
!?!?
『辛っ!!』
「ハッ!お子ちゃまが」
騒ぐ私を鼻で笑い、かっちゃんは普通の顔してむしゃむしゃとチキンを食べていく。信じられない...彼はああ言ったが、私は別に辛いものは苦手じゃない。現にあちこちの席で辛っ!と言う声が聞こえてくる。かっちゃんの味覚大丈夫か?
そんな事を考えながらひたすらオレンジジュースを飲んでいるとズズっと音がなり、何も吸えなくなった。
まだ辛さは全然治まっておらず、私はフタを開けて氷を口の中へ入れた。
「そんなに辛いかよ。ほら、これでも飲んどけ」
渡されたジュースを直ぐに口の中へ入れる。
シュワシュワと弾ける炭酸が辛さを飽和していく。
『ありがとう、助かりました』
「そんなんなるなら食うんじゃねえよ」
『かっちゃん何も言わずに普通に食べてるし、そんなに辛いやつだとは思ってもなかったの!』
「食い意地はった罰だな」
目の前の彼はニヤニヤ笑い、涼しい顔でチキンを完食し、量を確かめるようにカップを振ると結構飲んだなと呟きながらコーラを1口飲んだ。
『あーあ帰りたくないなあ...』
刻一刻と迫り来る幸せな時間の終わりに気分は急降下していく。
「...そっちでの生活はどうなんだよ。あの人達と上手くやれてんのか?」
首を横に振ると、そうかと一言言い、彼は口を閉じた。
新幹線の到着時刻を表示する電光掲示板見て私は小さく息を吐いた。
「おい、スマホ貸せ」
『え、私スマホ持ってないよ?かっちゃんのスマホ充電切れちゃったの?』
「ちげえわ!あーークソ」
かっちゃんはイライラした様子で自分のカバンを漁り出した。何事かとその光景を眺めていると、取り出したノートの端に何か書き乱暴に千切った。
「ん」
差し出された切れ端を受け取ると、そこには数字が書かれていた。
「オレの電話番号だ。雄英落ちても遊びに行くくらい付き合ってやる。だから来る時には連絡よこせ」
『うん!ありがとう!』
今日会えただけでも、幸せなのにまた会えるなんて本当に夢のようだ。え?これもしかして夢?
『痛い』
「何やってんだお前」
自分の頬をつねる私をかっちゃんは呆れた顔で見ている。
『あまりに幸せすぎて夢なんじゃないかと思って』
「現実だわばーか」
『痛っ!もう現実だって分かったから!』
デコピンされた額をさすっている私をかっちゃんは笑って見ている。この馬鹿力め...
『これ遊びに来る時以外も電話していいの?』
「たまにならな」
『やったー!じゃあ毎日するね!』
「たまにつったろ!耳付いてんのかテメェ!」
その後も少し話をしているとすぐに時間になってしまった。
『あーあ、もう行かなくちゃ...』
また会えると思っても、やっぱり寂しいものは寂しいし、このまま一緒にいたいと思ってしまう。
「そんな顔すんな。また会えばいいだろ」
そう言って頭を撫でてくれるかっちゃんにまた涙が出そうになる。変わらないな...
『うん...!またねかっちゃん!』
新幹線から外の景色を眺める。
大きくなったけど、変わってなかったな。
口も悪いし怒りっぽいけど、彼はとても優しい。大きくなった今それがすごくよく分かる。もっと早くそれに気付けていればな...
今まで私はどれだけ彼に救われていただろう。
時が経ってもやっぱり君はヒーローだ