仮免試験 編
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帰って来てすぐ眠ったせいか、変な時間に目が覚めてしまった。しかも若干お腹が空いている。もう一度寝てしまおうかとも考えたが、この前ヤオモモちゃんがくれた高級プリンを試験後のご褒美に取っておいたのを思い出し食べることにした。
『美味しそう...!』
しかし蓋を開けたところで気が付いてしまった。
スプーンがない!諦めようと思ったが結局、食欲に勝てず大人しくスプーンを取りに行くことにした。
見られると恥ずかしいし、早くスプーン持って戻ろう。
忍び足でキッチンへ向かっている最中に、小さな話し声と足音が聞こえ、机に身を隠す。
かっちゃんといずっくん?
こんな夜中にどうしたんだろう。声を掛けようにも掛けられない状態で固まっていると、なんと2人は外へ出て行った。
こんな時間に何を...?
気になって2人を追いかけることにした私は外へと出たが2人は既にいなかった。
どこ行ったんだろう。
個性を使い、耳を澄ませると爆破の音が聞こえた。急いで音のした方へ向かうとかっちゃんがいずっくんに攻撃しているのが遠くに見えた。止めなければと思ったが、かっちゃんの声を聞いて思わず立ち止まってしまう。
「なのになんでオレはっオレは...オールマイトを終わらせちまってんだ。
オレが強ければあんな事になってなかった!オールマイトが秘密にしようとしてた...誰にも言えなかった!考えねえようにしてても...フとした瞬間湧いて来やがる!
ユウの事だってオレが強ければ、怪我することも自害なんて選択肢取らせちまうこともなかった!
オレのせいであいつが、死にそうになったのはもう2度目だ。
ガキの頃からあいつを救けるのはオレだってずっと思ってた。なのにいつも、いざって時に救われてるのはオレで、あいつはオレのせいで傷付く。オレが傍にいるとあいつを傷付けちまう。
離れる事があいつを救ける事に繋がるって分かってんのに色々思い出して、どうしようもなく苦しくなんだよ...
前みてえには戻れねえのに、戻っちゃいけねえのに喪失感にかられて、無意識にあいつを探しちまう。
もうどうすりゃいいかわかんねーんだよ!!」
私と同じだ...そんな...かっちゃんのせいじゃないのに...悪いのは私なのになんで...
「やるなら...全力だ」
戦う決心をしたらしく、いずっくんは戦闘態勢に入る。そこから2人の激しい戦いが始まった。止めなきゃいけないのかもしれない。
でも、かっちゃんの気持ちといずっくんの決意を考えると簡単に止められるものではないし、止めてはいけないような気がした。
2人の会話で互いが互いをどう思っていたか私は初めて知った。
幼い頃、いつからか2人の仲は悪くなっていて、高校ではそれが更に悪化していた。昔からかっちゃんのいずっくんに対する態度が私には理解できないし、すごく嫌だった。いずっくんがかっちゃんに憧れていたのは分かっていたから尚更その態度が許せなかった。今の会話を聞いても許せるものではないが、彼には彼なりに思うことがあったのだと知る。
「三条少女」
『!オールマイト...ごめんなさい...私2人のこと...』
「いいんだ。私としては2人の戦いを止めないでいてくれて感謝している。あれは彼らにとって必要な戦いだ」
空中での大接戦が繰り広げられた後、いずっくんがかっちゃんに押さえつけられ、勝敗は決まった。
「そこまでにしよう二人共。悪いが聞かせてもらったよ」
オールマイトの登場にかっちゃんの思いが爆発する。叫んでいるのに、弱々しい悲痛に満ちたその声に、泣きそうになる。
「互いに認め合い、まっとうに高め合うことができれば、救けて勝つ 勝って救ける 最高のヒーローになれるんだ」
最高のヒーロー...
「三条少女。こっちに来なさい」
帰ろうかと思っていたところで、突然名前を呼ばれ驚いたが、言われた通り3人のいる方へと歩みを進める。
「ユウ!?」「ユウちゃん!?」
「彼女も君達の戦いを見ていた。話の内容で、私と緑谷少年の関係は何となく察しがついたんじゃないかな?」
『はい...すいませんオールマイト...』
「謝ることはない。こうなった以上は爆豪少年にも三条少女にも納得いく説明が要る。それが筋だ」
オールマイトは全て話してくれた。個性のこと。傷を負い限界を迎えていたこと。後継にいずっくんを選んだこと。
「結局...オレのやる事は変わんねえや...ただ今までとは違え デク。オレも全部オレのモンにして上へ行く。選ばれたおまえよりもな」
「じゃっ...じゃあ僕はその上を行く。行かなきゃいけないんだ...!」
「...だから そのてめェを超えてくっつってんだろが」
「いや だからその上を行かないといけないって話で...」
「あ゙あ゙!!?」
『ふふっ なんか2人の関係が変わったみたいで嬉しいな』
「以前と違って真っ当にライバルっぽくなったね」
『良かった...何度言っても仲は最悪で、もう関係が良くなることはないんじゃないかって、諦めちゃってたので夢みたいです』
いい感じの雰囲気だったが、そのまま平和に終わることはなく、寮に帰るやいなや相澤先生に2人が捕縛される。
「試験終えたその晩にケンカとは元気があって大変よろしい。あと三条なんでお前までいる」
『すいません...2人が出てくの見ちゃって追いかけました』
「行ったなら止めるなり報告するなりしろ!」
『すいません...』
「相澤くん待って。原因は私にあるんだよ」
「...だからルールを犯しても仕方ない...で済ますことは出来ません。然るべき処罰は下します。先に手ェ出したのは?」
「オレ」
「僕もけっこう...ガンガンと...」
「爆豪は四日間!緑谷は三日間!三条は一日の寮内謹慎!寮内共有スペースの清掃!朝と晩!!+爆豪、緑谷は反省文の提出!!三条には課題を出す!!怪我については痛みが増したり、ひかないようなら保健室へ行け!ただし余程の事でなければ婆さんの個性は頼るな。勝手な傷は勝手に治せ!以上!寝ろ!」
ヒェ...あんまりだ...しかも私だけ課題って流石相澤先生...
「ユウちゃん、なんか巻き込んじゃってごめんね...」
『ううん...勝手についてって何もしなかった私が悪いです...』
「そんな!多分何言われても僕もかっちゃんもあの戦いは辞めなかっただろうし。じゃ、じゃあ明日掃除頑張ろうね...!おやすみユウちゃん」
『おやすみいずっくん』
エレベーターに乗った、いずっくんを見送り、少し離れた場所で壁に寄りかかっている、かっちゃんの方へと向かう。話し掛ける。ただそれだけのことなのに、緊張で体が震える。
『かっちゃんに話したいことがあるの』
言葉が足りなかったのはきっと私達も同じだ