ゆーあーmyヒーロー
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試験当日、お守り代わりのストラップをカバンに付け新幹線に乗り、道に迷いながら何とか雄英高校に辿り着いた。ものすごい大きな建物にものすごい人数の受験者。どんどん受かる自信がなくなっていく。
ソワソワしながら試験の説明を受けていたが、聞き始めてすぐに頭が混乱してきた。
ロボット倒すってどういうこと?何それ!?試験ってそんななの!?混乱状態のまま、気合いに満ち溢れた人達におされ、あっという間に会場へと流されていく。
会場に入ってびっくり、街だ。建物の中に街がある。
見渡すと街中にロボットが歩いている。
あれを倒すのか。
よし!まずは身体強化!狐耳と尻尾が生える感覚には未だに慣れないがThe運動音痴な私は個性を使わなければへっぽこもへっぽこなので仕方がない。
早速ロボットに攻撃を仕掛けるが思った以上に手応えがない。
うわ、私弱...ショックを受けながら次の手に出る。まだコントロールは下手くそだけど、的大きいし何とかなるはず!というかこれでダメならもう打つ手なしだ。ロボットに向けて手をかざす。
『いけ!狐火!』
尻尾が2本に増え火の玉が生成される。
火の玉が当たったロボットはガラガラと崩れた。
『やった!』
試験終了まで何体かロボット倒したけど、そう言えば個体によってポイントが違うって言ってたっけ?ちょいちょい人助けをしてたから時間もロスしちゃったし、最後まであの超巨大なヤツは倒せなかった。既に不安しかない。
試験が終わり、クタクタになりながら外に出る。筆記も一応ほとんど埋めれたけど、心配だなあ...
ヤバい。個性使いすぎたせいで眠いしお腹空いた...
でも早く帰らないとだし、どうせまた道に迷うし...
あー頭が回らなくなってきた。
あっ
足が滑り、前に体が倒れていく。コケる...!
しかしグイッと背中のリュックを引かれ、体が元に戻る。
「何やってんだ!とろくせえ!」
『ひぃぃ!すいません!』
バッと後ろを向き即座に頭を下げる。ヤバい怖い人だ!助けてくれたけど怖い人だ!
『本当にごめんなさ...』
心臓がどくんと跳ねる。顔を上げて目に映ったのは、クリーム色のツンツン頭の鋭い赤目の男の子。
鼓動が早くなっていく。もしかして彼は...
『かっちゃん...?』
不機嫌な顔が一変して驚きの表情へと変わる。
「...ユウか?」
『うん、そうだよ...』
どうしよう泣きそうだ。こんなにたくさん人が歩いてるような場所で...何とか我慢しなきゃ...
そう思うのに視界は徐々に歪んでいく。せっかく会えたのに、言いたいことがあるのにこんなんじゃ話せない。情けなくて唇を噛み締め下を向く。
「おい、あっち行くぞ」
『えっ』
私の腕を掴むと何も言わずに、彼はどんどん歩いていく。
どこ向かってるんだろう。
辿り着いたのは、誰もいない小さな公園だった。
「...お前、雄英受けたんか」
『...うん』
「お前は別にヒーローに興味なかっただろ。なのになんで雄英受けたんだよ」
『...かっちゃんに会えるかもって思ったから』
「そんな理由で雄英受けたのかよ。ずっと音信不通だったくせに今更っ...」
苛立った様子で彼はそっぽを向いた。
『ごめんね...私、住んでる場所も電話番号も何も覚えてなくてそれで...昔、かっちゃんが雄英行くって言ってたの思い出して雄英に行けば会えるかもって、私にはそれしか思いつかなくて...かっちゃんにどうしても伝えたいことがあったから...
会える保証もないのに馬鹿みたいだよね...』
そっぽを向いていた彼が視線を私に戻し、じいっと見つめてくる。言わなくちゃ...!緊張で体が震える。視線を逸らしたくなるのを必死に抑え、意を決して赤い瞳を見つめ返す。
『ごめんなさい』
必死に紡いだ声は震えていた。
『絶交なんて言ってごめんなさい!
大嫌いなんて言ってごめんなさい!
かっちゃんはいつだって私を守ってくれてたのに、私、何にも分かってなかった。酷い事言ってかっちゃんを傷付けた...
ずっと...ずっと後悔してたの...だから例え嫌われてても、忘れられていたとしても、もう一度貴方に会って謝りたかった!』
泣きそうになったし、声は震えていたけど、やっと言えた。
「んな昔のことずっと気にしてたのかよ。馬鹿だろ」
『うん...』
「チッ...泣いてんじゃねえよ」
そう言って涙を拭ってくれるかっちゃんの手は昔と変わらず優しくて温かかった。
「お前が泣いてんの見るのは心臓に悪い...オレもあの時...救けてやれなくて悪かった」
『あの時って...?』
「チッ!お前が連れてかれた時だよ!救けてってあの時お前言っただろ!」
『そんなのあの時はまだ幼かったし、アレはどうしようもないよ。かっちゃんが謝ることじゃない』
「だとしてもだ!あの時オレは敗けた。ヒーローに敗けは許されねえんだよ!」
『ほんとかっちゃんってかっこいいね』
「あ?」
『何事にも妥協しないし、いつだって真っ直ぐだ。私はかっちゃんみたいには絶対なれない』
「お前は」
ぐ〜っとお腹がなり、恥ずかしさのあまり顔を手で覆う。こんな時に恥ずかしすぎる...
「ハッ相変わらず空気の読めねえ女だな。おい、何処か食い行くぞ」
『うう...ごめんなさい...でも私新幹線乗らなきゃだからあんまり長居できないんだ』
せっかく会えたのにな...出来ることは全てやったが私が雄英に合格できるかは分からない。もしかしたらこれでもう会えないかもしれない。
「なら駅まで行って時間があったら食う。それでいいか?」
『う、うん!もしかしてかっちゃんも新幹線乗るの?』
「ちっげえわ馬鹿!オレの家は前と変わってねえ。新幹線なんて乗らねえわ」
『えっ!?』
「どうせお前、駅まで迷わず行けねえだろ。仕方ねえから連れてってやるつってんだよ!そんくらい分かれや!」
『あ、ありがとう』
どうしよう全然分からないや...
わざわざ申し訳ないなとも思ったが、まだ一緒にいられるのはすごく嬉しいし、彼の言う通り迷わず行ける自信がないのでお言葉に甘えることにした。
『かっちゃん大きくなったね』
少し前を歩く彼はあの頃に比べて身長が伸び、体格もがっしりしていて、とても大人っぽい。
「あたりめえだろ!小学校から育ってなくてたまるか。お前はチビのまんまだな」
『これでも一応大きくなってますーきっとまだこれからだもん』
「ハッどうせてめえはチビのまんまだわ。オレはまだまだでかくなるけどな」
『む〜!あとめっちゃ人相悪くなった!ヤンキーになった!昔より更に怒りっぽいし口悪くなった!』
「んだとゴラァ!!」
ぎこちなかった空気は徐々に消えていき、昔に戻ったような感覚だ。姿は変わったけれど、かっちゃんはやっぱりかっちゃんでそれがとても嬉しかった。
怒鳴られるのも悪態つかれるのも嬉しいなんて、私はやっぱり馬鹿だ