林間合宿 編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
目を覚ますと、見知らぬ場所で厳重に拘束され椅子に座らされていた。
「お目覚めのようだ」
「てめェ!ユウをどこにやりやがった!」
「そう怖い顔するなよ。まずは君を連れてきた目的から話そうじゃないか。あのじゃじゃ馬娘の話はその後だ。早速だが...ヒーロー志望の爆豪勝己くん。俺の仲間にならないか?」
「寝言は寝て死ね」
TVに雄英の記者会見が映し出される。
それを見てうだうだと話し始める死柄木にイライラがどんどん募っていく。
「話は聞いてやった。だからユウが何処にいるか教えろ」
「そこまでご執心とは恐れ入ったよ。いい彼氏を持ったじゃないかユウ」
「は」
奥にある扉から現れたのはユウだった。拘束も何もされておらず、ごく自然に死柄木の横に並ぶユウに嫌な予感がする。
「てめェ...ユウに何しやがった」
「何も?ただ君と違って俺らの話を分かってくれた。それだけのことだ」
『かっちゃん、私ヴィラン連合に入ることにした。この人達のやっている事は間違えてない。ステインと戦った後、ずっとヒーローって何だろうって考えてた。ヒーローも国民も全て今の社会は間違ってる』
「という事だ爆豪くん。ユウ、拘束外せ」
「暴れるぞこいつ」
「いいんだよ 対等に扱わなきゃなスカウトだもの。それにこの状況で暴れて勝てるかどうかわからないような男じゃないだろ?」
『かっちゃんも仲間になってよ。ねえ...』
至近距離で見つめられ、思わず目を逸らす。ユウの指先がオレの体をするりと撫でる。
「なあ、ユウ。お前にとってオレはなんだ」
『大好きで大切な私の彼氏だよ』
「決まりだ」
笑みを浮かべ死柄木が歩いてきたタイミングで爆破をかます。
「無駄だよ。オレはオールマイトが勝つ姿に憧れた。そこァもう曲がらねえ」
『かっちゃん、どうして...』
「ハッ いつまで続けるつもりだ?ユウはぜってえあんな事言わねえし、しねえよ。てめェは誰だ?本物のユウは何処にいる?」
『フフッ...フフフッ まさかバレちゃうとは思いませんでした。愛の力とは偉大ですね!素敵です」
蝋のようにユウの姿が溶け、団子頭の女に変わる。
「バレちゃったし、服着てくるね弔くん!」
「待ちやがれ!」
「まあ待てって。愛しのユウチャンがどうなってもいいのか?」
「クソ野郎...!」
突如聞こえたドサッという音に驚き、音の方を見るとワープゲートから先程の女がユウとともに出てきた。
「傷だらけで寝てるユウちゃんカァイイね!爆豪くん!」
ユウは傷だらけで、名前を呼んでも床に倒れたまま動かない。
「てめェら...!ぶっ殺す!」
「君が俺を殺すのと、オレがこいつを殺すのどっちが早いと思う?君が仲間になってくれれば、この女の命は保証しよう。さあどうする?」
「っ!」
最悪の展開だ。これではユウを救ける事も逃げる事も出来ない。
オレとユウどちらも、引き入れたい訳ではなくユウはオレを引き入れる為の餌ってわけか。
とことんムカつく事をやってくれるじゃねえか...!
『ん...』
「ユウ!」
『...!かっちゃん!痛ッ』
「動くな。更に痛い目を見ることになるぞ。さあ爆豪くんどうする?」
『あ...』
事を察したらしく、絶望の表情を浮かべるユウに嫌な汗がぶわっと噴き出し、鼓動が早くなる。
「ユウ!やめろ!!」
「こいつ!?」
「どーもォ ピザーラ神野店です」
声が聞こえた途端壁が壊れ、ヒーロー達が一斉に突入してきた。一瞬呆気にとられてしまったが、直ぐにユウの元へと向かう。
「ユウ!もう大丈夫だから安心しろ!」
『かっちゃん...ごめん...私の...せい...で』
「お前血が!早く口開けろ!」
っ!出血が酷い。どうすればいい?とりあえず持っていたハンカチで舌を抑えるが、赤く染まっていくハンカチに焦りと不安が増していく。
保護に来てくれたヒーローに急いでユウを救急車に運んで貰う。汗と震えが止まらない。
「怖かったろうに...よく耐えた!もう大丈夫だ!少年!」
「オールマイト、ユウが舌噛んで血が止まんなくて、どうしたらいいか分かんなくて... ユウ大丈夫だよな!?死んじまったりしねえよな!?」
「落ち着け爆豪少年!三条少女なら大丈夫だ」
オレのせいだ...
オレが目なんてつけられてなければユウはこんな目に合わなかった。オレが無理にワープを潜らなければ舌を噛むなんてこと...
「爆豪少年!余計な事は考えなくていい。君はよく頑張った」
「違う、オレの、!?っだこれ 体が...飲まっれ...」
黒い液体に体が飲み込まれ、気が付くと別の場所に飛ばされていた。
「悪いね 爆豪くん」
「あ!!?」
背筋がゾッとする。こいつは確実にヤバい。
今までのヴィランとは比べ物にならない。演習試験の時のオールマイトのような...
「君としては彼女も一緒がよかっただろうが、もうコマとしては使えない事が分かってしまったからね。まさか高校生の女の子が、躊躇なく自害しようとするなんて思いもよらなかったよ。攫われてすぐも、君を解放しろと暴れ回っていたし余程君が大切らしい。健気で可愛いらしいじゃないか。そう思うだろ?爆豪くん」
「てめェ...!」
背後から突然声がして振り向くと、連合の奴らが同じように黒い液体から出てきた。間違いなくこいつが敵のボス。先生と言われていた人物だろう。どうすれば逃げられるか必死に考えていると、オールマイトが登場し風圧で体が飛ばされる。しかし敵のボスはそれほどの威力の攻撃を素手で弾き、オールマイトを吹き飛ばした。
「オールマイト!!!」
「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ。だから...ここは逃げろ弔。その子を連れて」
さっきまでとは違って強引にでもオレを連れてく気だ。6対1...
とりあえずこのクソ仮面には触られちゃいけねー!
!!
突然壁が崩れ、見覚えのある氷結が空高くそびえ立つ。
「来い!!」
「...馬鹿かよ」
差し伸べられた切島の手を取り、何とか敵地を抜け出した。駅前のモニターには戦っているオールマイトが映し出されていた。攻撃を受け、やせ細った姿に変わったオールマイトに唖然としてしまう。
やせ細り傷だらけで立つオールマイトは今にも倒れてしまいそうだ。でも...
「勝てや!!オールマイトォ!!」
画面に映るのはスタンディングをするオールマイト。
きっとこれが最後の...
「次は君だ」
オールマイトの最後の言葉にデクだけは周りと全く違う反応をしていた。
幼馴染達が変わっていく中、自分だけが取り残されていく。
ユウを救けるどころか、怪我を負わせ、自害するような状況に追い込んでしまった。
何にも出来ないと蔑んでいたやつにピンチを救われた。
オールマイトを終わらせてしまった。
オレのせいで事が全部悪い方へと進んでいく。
全部全部オレのせいだ...