林間合宿 編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「返せ!!」
耳を済ますと声が聞こえた。知らない男の声といずっくんの声。
常闇くんとかっちゃんも捕まってるなんて...
彼も良いと判断したってどういうことなのだろうか。
かっちゃんと私はその基準を満たしていたから狙われたってこと?
途切れ途切れにしか会話が聞こえず、全容が分からない。
「あと三条ちゃんは、元々君と同じ殺害優先リストに入ってたんだけど、爆豪くんと付き合ってるって話だったからさ。何か使えるんじゃないかと思って一緒に貰うことになった」
「この野郎!!貰うなよ!」
「開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に回収地点へ向かえ!」
幕引き、5分?不味い時間が無い。しかしいくら暴れても、状況が変わることはなく、自分が何処にいるのか分からないままだ。
知らない声が増えた。いずっくん達は私達を取り返そうと必死に戦ってくれているみたいだ。
そこにまた新たな声が加わる。
ワープゲート...!間違いなくUSJで聞いたものと同じ声だ。ここでワープさせられたら追跡しようがなくなってしまう。
2人だけでもなんとか逃がせられないだろうか。
話を聞く限り、私はオマケってことだ。向こうにとってはかっちゃんがとにかく第一優先。元の状態に戻れれば一瞬は隙を作ることが出来る。そうすれば2人のことは逃がせられるかもしれない。
「哀しいなあ 轟焦凍」
轟くんが近くにいるの?一体何が...
「確認だ。解除しろ」
!!もしかして...!
視界が開け、目の前には走ってくるいずっくんの姿が見える。横には轟くんと常闇くんに障子くん。それに.....
後ろを振り向くと首に手をかけているツギハギの男と目が合い、男はニヤリと笑った。
「問題なし」
いずっくんの声が聞こえる。でも私はもう振り返れない。この男の視線を他に向けさせないようにするのが私の最後の役目だから。ありがとうも、さよならも言えないけど、大切な人を守って死ねるなら、なんの後悔もない。.......はずだよね...?
「ユウ!!!!」
聞こえた声に咄嗟に反応してしまう。振り向くと、必死の表情をして私へと手を伸ばす、かっちゃんの姿が見えた。
「どういうことだ...!」
後ろから聞こえる声に焦るが、これだけワープが閉まっていては外へ出るのは困難だろう。例え出ようとしてもそれを食い止めるくらいは私でもできるはずだ。
かっちゃんの目が大きく見開かれる。
ありがとう、さよなら。口パクで伝えた言葉はちゃんと彼に届いたらしい。目を伏せ、ごめんねも言うべきだったなと少し反省する。でも伝えられて良かった。
「手出せ!!早く!!」
彼の顔を見た瞬間、反射的に手が動き伸ばされた彼の指先に触れるとグッと力強く手を握られる。
ダメ...ダメなのにどうして!!
動揺から姿が元に戻ってしまう。手を振りほどこうとするが、力強く握られた手は振りほどけず、ワープに無理矢理飛び込み、かっちゃんは私の体を抱き寄せる。私を包む香りと温度に泣きそうになる。
ダメだ私...
「一時はヒヤッとしたが、結果2人とも連れてこれたな」
「飛び込まなきゃ救かったのに馬鹿だなこいつ」
「愛です!素敵です!」
敵の声...かっちゃんは...?奥の方に手足を拘束され倒れているかっちゃんを見つける。
「熱っ!!」
「クソッこいつもう起きたのか!?」
「何やってる。そいつは手荒にしてもいい。早く捕らえろ」
『かっちゃんを解放しろ、クソ野郎...!』
「口の聞き方がなってねえ餓鬼だ」
「ユウちゃん素敵!血が出てれば更に素敵なのです!」
何この子...!見た目は普通の女子高生なのに、色々ぶっ飛んでる。攻撃を避けながら、狐火を再び作ろうとした所でいきなり体が勢いよく引っ張られる。
何!?グラサンの男の持っている棒に体が引き寄せられて...!
『うっ!』
「おいたが過ぎるわ狐ちゃん」
『ッあ!』
「それくらいにしといてやれ。手潰しときゃ火は使えない。そいつには利用価値があるんだ。死なれちゃ困る。もう一度眠らせておけ」
「弔くん!私もちょっとでいいからユウちゃんと遊びたい!」
「血を摂るくらいにしておけよ」
「やったー!ユウちゃん、私トガって言います!私、ユウちゃん好きになっちゃった。だから血がもっと見たいです!」
『いっ...』
「血が出てるふわふわのお耳と尻尾のユウちゃんすっごくカァイイね!」
頬を赤く染めて興奮しながら話す姿は狂気に満ちている。間違いなくこの子は異常だ。
「あとこっちはお薬です!おやすみユウちゃん」
急激に訪れた眠気に耐えられず、私はそのまま意識を手放した。