『なんか先生多くない？』


突如知らせれた試験内容の変更。2人1組で先生と対戦

...待って、1人余るじゃん！！えっもしかしてもしかしなくても私じゃない？やだー私も2人がいいよー...


「三条すごい顔になってるけど大丈夫？」

『ちょっと大丈夫じゃないかも精神が...』


まず発表されたのは轟くんと八百万さんのチーム。
めっちゃ頭良さそう。強そう。いいなーでも相澤先生とかあ〜どっちが勝つかなあ...


「そして緑谷と三条」

『やったー！』


2人だ！しかもいずっくん！！作戦考えてくれそうだし、コミュニケーションもバッチリ！こんな高待遇でいいの？相澤先生ありがとう！


「三条めっちゃテンション上がったな」

「分かりやす〜」

「演習への不安じゃなくてチームが不安だったんだ...」

「と爆豪がチームだ。で、相手は」

「私がする！協力して勝ちに来いよ。幼馴染3人！！」

『』


終わった...


「おい！三条！気持ちは分かるが戻ってこい！」

「テンション急降下してったな...」

「分かりやすっ！？」


「3人にしてやったんだ。感謝しろよ三条」

『先生ーこのチームに悪意を感じるのは私だけでしょうかー』

「善意100%だ」


嘘つけ！！スマホくれたし、めっちゃいい先生という立ち位置になってたのに、振り出しに戻ったよ！あんまりだよ先生！これじゃ連携どころの話じゃないし、憂鬱すぎる...かえって1人の方がマシでは？






「...しりとりとかする？......」


お通夜かってくらい暗く静まり返ったバスの中、オールマイトに謎の提案をされる。


『バナナといったらりんご...』

「三条少女、それ違うぞ！？しかもりんご！？」


いやあかんって何この空気...なんでそんな離れたとこに座るの？気まずすぎてどっちの横にも座れねえし！
作戦会議は？なんか言ってくれないと私やらかすよ？言ってくれてもやらかすけどさぁ！？




「さて、ここが我々の戦うステージだ」


着いちゃったじゃん！どうすんの！？
勝利条件は誰か1人がゴールかオールマイトに手錠...
ムッず！ハンデあって無いようなもんじゃん！だってオールマイトでしょ？手錠とか粉砕でしょ！


「三条少女顔が...」

『もうやだ...』

「ユウちゃん、とりあえず作戦「おいユウ！作戦考えるから来い！」


オールマイトの方を向くと視線を逸らされた。私、変身はできるけど分身は出来ないよ？
でもここは頑張らないと...せっかく学科どうにかなったのにここで落ちたらあんまりだ...


『ハイハイ3人でやるよー』

「...」「...」

『なんで黙るの！？私の話聞いてた！？2人とも頭良いし、強いんだから、ちゃんと作戦立てれば勝てるって！多分...』


いずっくんが説得に応じてくれたが、かっちゃんが全く聞く耳を持たず、結局何も決まらないままテストが始まってしまった。


ほんと信じらんない！なんなの？
現在も倒す、避けるで2人は揉めまくっている。そしてどっちの方が有力なのか判断出来ない私は口を挟めずにいる。
もうテスト始まってるのに何この状況。仲間割れしてる暇なんてないってのに...
そんな事を考えていたら、前方にいたいずっくんが横に投げ出された。


『ちょっとなにやってんの！もしかして今殴った！？』


私の声を一切無視し、2人は激しい言い争いを始めた。


『あーーもう！えっ！？』


何が起こったのか全然分からなかったが、建造物が一気に吹き飛んだ。何事かと目を見開いていると砂煙の中からオールマイトが姿を表した。すごい威圧感...耳と尻尾の毛がブワッと逆立つのを感じる。ステインと戦った時と同じ感覚。こんなの作戦もなしに突っ込んで行って勝てるはずない。


「私はヴィランだ。ヒーローよ、真心込めてかかってこい」

『ねえ！どうす』


即座にかっちゃんがオールマイトに突っ込んでいった。
あの戦闘馬鹿！！

共通の敵が現れれば、少しはやる気になってくれるんじゃないかと期待していたが、期待も虚しく2人はバラバラなまま。しまいには衝突事故を起こす始末だ。
そんな2人に畳み掛けるように、オールマイトが攻撃を仕掛ける。いずっくんがガードレールに挟まれ、それを救けに向かうと、かっちゃんがものすごい勢いでオールマイトに吹っ飛ばされた。


『かっちゃん！』


オールマイトに対してパワーの弱い私1人じゃどうにも出来ない。とにかく早くいずっくんの救出を！


「あのクソの力ぁ借りるくらいなら...負けた方がまだ...マシだ」


今なんて言ったの...？

理解が追い付かず私が唖然としている間に、いずっくんがガードレールから抜け出し、かっちゃんを思いっきり殴った。


「負けた方がマシだなんて君が言うなよ！」


その言葉を聞いて我に返った私は、急いでいずっくんの後を追った。


「それで作戦なんだけど、かっちゃんとユウちゃんなにかあるかな？」

「...」

『あーーーもう！ふざけんのも大概にしろ！！』


かっちゃんの腕を引っ張り頭に思いっきり頭突きをかます。


「ユウちゃん！？」

「痛ぇ...！てめえ何しやがる！」

『何しやがるはこっちのセリフだわ。何も聞く耳持たねえし、作戦もないまま勝手に突っ込んで、負けた方がまだマシだ？ふざけんな！
手を抜いたり、妥協をしない。なんでも全力でトップを目指すのがかっちゃんでしょう？1番すごいヒーローは最後に必ず勝つんでしょう！？それなのに、クソつまんねえことで勝つのを諦めてんじゃねえよ！』


シーンと空気が静まり返る。


「ええ！？ユウちゃん泣いてる？ご、ごめんね！僕がもっと早くこうしてれば...」(目に見えてかっちゃんがへこんでるっていうかショック受けてる！)

「...悪い...その通りだ.....勝ちに行くぞ。いいか二度は言わねえ」






かっちゃんの指示通り隠れた場所で狐火を大量に生成する。
今だ！いずっくんが籠手を使うタイミングに合わせて狐火を集結させ、爆破の火力を上げる。
威力エグっ！？急いでゴールに向けて走り出す。
追ってこない...？今のうちに早くゴールに！
瞬間、ぞぞゾッと毛が逆立つ感覚がした。


『いずっくん！かっちゃ』


速い！一瞬で追いつかれた。


「さあ、2人は捕まえた。どうする三条少女？」


コントロールできるようになったとはいえ狐火を使えば、いずっくんやかっちゃんを盾に使われるのは目に見えている。私の力じゃオールマイトにはまるで通用しない。どうする...


『うああああああ！』


オールマイト目掛けて突っ走る。


「やめろユウ！」

「逃げてユウちゃん！」

「やけくそは良くないぞ三条少女」


至近距離でオールマイトへ向けて巨大な狐火を放つ。


「おいおい、味方もいるんだぞ！？」


オールマイトは2人を置いて後退しようとしたが、炎の中から起こった爆発によって後退を阻まれた。


「おい、ユウ！心臓に悪いことすんじゃねえ！死ぬかと思ったわ！」

『でも生きてるでしょ？火力下げるのは得意なの私』

「ブッとばす」

『ええ！？それはちょっとあんまりじゃって、いずっくん！？』


まさかの死ね！！！という掛け声とともにいずっくんがゴールに向けてぶん投げられた。手荒すぎる！！
しかもオールマイトに思いっきり腰やられた！痛い！見ているこっちの腰まで痛くなる。大丈夫かなあれ！？


『いずっくん大丈夫！？』

「行けユウ！デク！！」

『いずっくん！』


かっちゃんがオールマイトと戦ってる間にゴールを目指す。これだけかっちゃんが頑張ってくれてるんだ。絶対勝たなきゃ！


『いずっくん、聞いて』







オールマイトに地面に投げつけられ踏みつけにされる。逃げ出そうともがいている横で、かっちゃんが地面に叩きつけられた。


『かっちゃん！』

「折れて折れて、自分捻じ曲げてでも選んだ勝ち方でそれすら敵わねえなんて...嫌だ...！！！」


かっちゃん...大丈夫、大丈夫だよいずっくんならきっと


「SMASH！！」


オールマイトにいずっくんのパンチが炸裂する。オールマイトが驚いた顔で私を見た。二っと口元を釣り上げる。


『残念ハズレ』


吹き飛んだオールマイトを背にいずっくんと駆け出す。


『身代わりになるからゴールまで走ってって言ったのに作戦と違うじゃんいずっくん！』

「ご、ごめんねユウちゃん。やられてる2人見たら救けなきゃって思って...」

『まあ、それでこそいずっくんだよね。...かっちゃんにはだいぶ無理させちゃった...』

「うん...」







傷だらけのヒーローに勝利を