体育祭 編
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「三条、遂に動けなくなってしまったか!?」
必死に立ち上がろうとしているが限界らしく、地面についた手は体を起こすことが出来ない。
少しして、気絶したらしく頭と力んでいた手がかくんと地面に伏せた。
クソ...追い込めば防衛本能で力が発動されると思っていたが失敗だった。これじゃただただユウに怪我を負わせただけだ。場外に出さないために、叩きつけるように攻撃することが多かったし、相当痛かっただろう。
何やってんだオレ...
「三条さん戦闘不能!勝者」
「ッ!」
突然だった。ユウの蹴りをすんでのところで避ける。意識が戻った。でもこの動きはなんだ?とても動けるような状態じゃなかった。それなのにさっきまでより格段に速い。というか別人のような動きだ。
「ってェ...!」
避け切れずユウの蹴りが腕に入る。さっきまでこんな威力はなかった。なのになんだよこの力...!
「避けてばかりじゃつまらぬぞ小僧」
誰だ。声も見た目もユウだが、確実に違う‘なにか’だ。
「誰だてめえ」
「妾は九尾。いずれこの娘の体を貰う者じゃ」
「やるわけねえだろクソ狐!」
「おうおう、いい攻撃ではないか小僧。その個性、其方が例の幼馴染じゃな?」
「幼馴染だからなんだってんだ!早くソイツに体返しやがれ!」
「おっと怖い怖い。心配するなちゃんと体は返す。今の状態ではこの娘の体が持たぬしな。
だがせっかく外に出られたし、其方にも会えたのだ、もう少しだけ使わせて貰う。
ずっと其方に会ってみたかったのじゃ。この娘が焦がれ続けていたお前にな」
「オレはてめえに用はねえ。とっとと体返しやがれ!」
「短気で怒りっぽく、話を聞かない。妾の大嫌いなタイプじゃな」
「奇遇だなァ!オレもてめえが大っ嫌いだ!」
「ふふ、そう言うな。妾は其方に礼が言いたかったのじゃ。其方がいたお陰で、この娘は自ら命を絶つ事をしなかった。あんな劣悪な環境ですぐに死なれないか取り憑いた直ぐはヒヤヒヤしたがな。せっかく何百年ぶりかに若い娘の体を手に入れたのだ。手放したくはなかろう?だから本当に感謝しているのだ」
「お礼を言うくらいならソイツから出てけや!」
「それはできぬ相談じゃ。妾はこの体を気に入っておる。妾が自由に扱える器になるにはまだまだ掛かりそうじゃが、其方がいれば早く事を進められそうじゃしな。本当に其方には感謝せねばの。だから今回は特別に其方に協力してやる。この娘を安心させたいのだろう?
多少遊ぶ程度で終わらせるから存分にやるがいい。其方のことは絶対殺さぬし安心しろ」
九尾がにいっと笑うと煙に覆われ、あの時の大狐が現れた。会場が激しくざわつく。
踏み潰されそうになるのを避けるが、尻尾に叩きつけられ、地面に体を強打する。
クソッ...なんつー威力だ。1本でこれかよ。
繰り返し爆破するがあまり効いていない。これは特大火力で飛ばす他ない。この巨体を場外まで飛ばすにはかなりの火力が必要だが体は燃えるように熱く、コンディションは最高だ。あのクソ狐に対しては爆破しようとしても体が拒否反応を起こすことはない。
タイミングや距離さえミスらなきゃ問題ねえ!
顔のすぐ近くに飛び上がる。一気に決めてやる!
「ハウザーインパクト!!」
大爆発が起こりフィールドが爆煙に包まれる。
「さて、そろそろかの。体は娘に返そう。相当無理をしたし1日以上は動かんじゃろうがな。心配するな、この娘が完全な器になるまで体を取るつもりはない。この娘にも其方にももっと強くなって貰わねばな。
お前が死ねばこの娘も死ぬ。それをゆめゆめ忘れるな」
すっと声が消え、徐々に爆煙が消えていく。そこに大狐の姿はなく、場外にユウが横たわっていた。
「三条さん行動不能!爆豪くんの勝利!」
「ここで三条の猛反撃も終わりかークーッ!惜しかった!よって決勝は轟対爆豪に決定だあ!!!」
急いでユウの元へ走る。個性が消え元の姿に戻ったユウは以前と同じように顔が青白く、これだけの騒ぎの中でも全く反応がなく瞼はピクリとも動かない。それに加え体中傷だらけで前回より格段にヤバそうな状態だ。担架でリカバリーガールの元へ運ばれていくユウの後を追う。
あの狐は1日以上は動かないと言ったが、死ぬとは言っていなかった。ユウが死ぬのは困ると言っていたし恐らく命に別状はないのだろう。それでも...
「心配させんじゃねえよバカ...」
握った手は冷たく、観客席でオレの手を触っていた時の温もりは微塵もない。先程のハウザーインパクトを打った反動が大きく、少し掌が火傷したようになっていた。
こいつが知ったら悲しみそうだな。
それだけの威力で撃った。それなのにあいつは倒れていなかった。あの至近距離でオレのコンディションも最高だったのにも関わらずだ。爆煙で姿は見えなかったが、あの口調からダメージを受けていたようには思えない。攻撃力もめちゃくちゃ高いし、本気を出されていたら多分死んでいた。先程の戦闘はあの狐にとっては言っていた通りただの遊びに過ぎないのだろう。
つまりオレは全然あいつに歯が立たなかったのだ。
あんなでかい口叩いておいてこれかよ...
クソッ!こんなんじゃダメだ。もっともっと強くならねえとこいつ1人救えねえクソ雑魚になっちまう。ナンバーワンヒーローなんて夢のまた夢だ。
まずここで負けるわけにはいかない。決勝に勝って1位の座は俺が貰う!
「約束通り、金メダル見せてやるから早く起きろ」
ギュッと1度強く握ったあとユウの手を離す。
ぜってえ勝ってやる...!