体育祭 編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ずっと体育祭の話題が尽きぬまま、放課後になった。
行くぞと私のリュックを持つかっちゃんの後を追うと、教室の出入口が何やら渋滞していた。
『うわっすごい人!』
「敵情視察だろザコ」
なるほど体育祭やべえな...
しばらく出れそうもないなと考えていると、まさかのかっちゃんがオラオラモード全開で廊下にいる人達に突っかかって行った。
マジかーかっちゃん!
あんまりな物言いの数々にいずっくんと飯田くんと慌てふためく他ない。
もうヒーローじゃなくてただのヤンキーだよ!
そんなかっちゃんに普通科の目付きの悪い男の子とB組の男の子が物怖じせずに食らいつく。
すげえ〜2人に拍手送りたいなんて思いながら、次のかっちゃんのアクションが怖くて心を無にする。
「上に上がりゃ関係ねえ」
その言葉にハッとした。キッパリと言い切る彼は先程までとは違い、とてもかっこよく見えた。
「何ぼーっとしとんだ、行くぞ」
私の手を掴み、人混みをかき分けながら進んで行くかっちゃんとともに半端ない注目を浴びて恥ずかしすぎて死にそうだ。あれもこれも全部体育祭のせいだ。許すまじ体育祭...
『すごいいっぱい売ってる!なに食べようかな〜!』
「食べようかなじゃなくて作ろうかなだろ!自炊するって言ったのおめえだろうが」
『するよ!するする!』
スーパーに来てはしゃいでいる私をかっちゃんは冷めた目でいている。
「何作るつもりなんだ?」
『んー作れるか分かんないけどオムライスとかハンバーグとか、味噌汁食べたい!』
「アンバランスだなおい」
『生姜焼きとかうどんもいいよね』
「はあ...とりあえず材料と調味料だな」
どんどんかごに物を入れていく、かっちゃんにひたすらついて行く。
『おーめっちゃ色々入ってる』
「最低限置いてあった方がいい物は買っとかねえと泣くことになる。ここで米は厳しいな...」
あれだけ料理出来るし、家でもよく作ってるんだろうなあ。オラついてるけどなんだかんだで良い子だよなかっちゃん。
『かっちゃん!袋持つから貸して!』
「言いつってんだろ!」
私のリュック+自分のバッグ+ものすごい量の買い物を持つかっちゃんに対して私は全くの手ぶらである。
流石にダメだし無茶だろと反論するも全く聞いてくれない。結局この言い合いを続けてるうちに家に着いてしまった。
買ってきたものをしまっていると、かっちゃんが突然ピタッと止まった。
「おいてめえ...調理器具なんもねえじゃねえか!」
『あ!ない!どうしようー!』
その後かんかんに怒られながら、調理器具とお米を買った。
『かっちゃんほんとごめん...重いものばっかり持って疲れたよね』
「お前と一緒にすんな。ただお前の馬鹿さ加減にはほんと疲れたわ」
『買ってきたプリンあげるから許して』
「なに余計なもん買っとんだ」
ギリっと睨まれて目を逸らすと、ご飯の炊けた合図が鳴る。
『すごいお米炊けるの早!』
「高速にしたからな。時間かかっちまったし簡単に今日はオムライスな」
『オムライスって簡単なの?難しそうだけど』
「作り方簡略化して慣れてれば楽だな。多分お前は毎日オムライス生活を数年すれば作れるようになる」
『めっちゃムズいじゃん!毎日オムライスは流石に嫌だし!』
「じゃあ諦めろ」
『酷い!』
慣れた手付きで調理を始めるかっちゃんをじいっと眺める。
『何か私にも手伝わせて!』
かっちゃんはものすごく面倒くさそうな顔をした後、卵とボールを私に渡した。
『わーい!卵割るの何年ぶりだろ。上手く割れるかな』
何とか殻は入ることなく割れたが、黄身が割れてしまった。あれおかしいな...
「そんなんでよく目玉焼き作れるって言ったな」
『前はできたのに〜!』
横ですごい速さで野菜を切っているかっちゃんを見ながら卵を混ぜる。すごい敗北感だ。
「もういいからあっち行ってろ。気が散る」
『むう...』
仕方なく台所を離れて、調理するかっちゃんを眺める。少しするといい匂いがしてきて、出来たぞとかっちゃんがオムライスを持ってきてくれた。
『わー!美味しそう!しかもどっからともなく、サラダとスープが...』
「ちゃんと野菜も食え。味噌汁は今度な」
『えっ味噌汁作ってくれるの?やったー!でもこれ私自炊してなくない?』
「さっきお前が言ってたものでオムライス以外はお前でも多分それなりには作れる。教えてやるから次はお前が作れ」
『ほんと!?ありがとう!かっちゃんが教えてくれるなら絶対美味しいのできるね!』
「お前がとんでもない失敗しなければな」
『あはは...』
「明日の朝また迎え来る。くれぐれも安静にしとけよ?あとオレが教えるまでは包丁触るな。分かったな?」
『分かった...』
完全に子供扱いである。
それから数日包丁の持ち方等基礎中の基礎から教えて貰ったのにも関わらず早々に指を切ってしまい、怒られまくっていた。
「ゆっくり慎重にしっかり抑えて切れって言っただろうが!」
『ごめんなさいー!』
「ったく...体育祭まであと少しなのに怪我してんじゃねえよ」
『かっちゃんもみんなも体育祭へのやる気すごいね。私は運動苦手だし緊張で死にそうだし憂鬱でしかない...』
「個性使っていいんだから、お前でもなんとかなんだろ。それに忘れたのか?あの普通科のモブが言ってたこと」
『普通科のモブ?...あっ!ヒーロー科クビになる!ヤバいどうしよう』
「本気でやればどうにかなるわ。てか手抜くような真似したら許さねえ。相手が誰であろうと全力でぶつかれ」
『わ、分かった!頑張る!』
せっかく入学できたのだ。ヒーロー科クビだけは絶対免れなくてはいけない。
でもあのUSJの事件があって以降、私は個性を使うことが怖くなっていた。授業でもできるだけ使用時間を短くしたり、力をセーブして使っている。
かっちゃんの言う通り、全力で頑張らなくては私なんかがいい成績を残せるはずない。
そんな不安を抱えながら体育祭は幕をあげる。
自分が怖い...