ゆーあーmyヒーロー
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前方にとてつもなく嫌な気配がする。先程まで相手にしてきたヴィランとは比べ物にならない。本当にこんなものに勝てるのだろうか?そう思ったのを見透かしたようにかっちゃんが、大丈夫だと呟く。
『かっちゃん、切島くん。多分この先にワープゲートと、あと数人ヤバい奴がいる。しかもそいつらと恐らく誰かが交戦してる!私はちょっと後ろの奴らの邪魔してから行く!直ぐに追いつくから、2人は先に行って!』
「分かった!」
「ぜってえ無理すんな。すぐ来なかったら承知しねえぞ」
『了解!』
コントロールができずとも的を絞らず、乱れ打ちなら問題ない。後方に狐火を放ち2人を追いかける。
「オールマイトォ!」
いずっくんの声!
続けてかっちゃんの声が聞こえた。
お願い...2人とも無事でいて...!
声の聞こえた方へ猛ダッシュで走り出す。
辿り着いた場所には、先に行った2人といずっくんの他にも轟くんとオールマイトがいた。
ヴィランと思われる人物は3人。手がたくさん付いている男と凍って下半身だけ地面から出ている何か。そしてかっちゃんが見事にワープゲートを捕まえ、地面に押さえつけている。
しかしセリフといい、表情といい、かっちゃんがヒーローに全く見えない...
こちらが有利に見えたが、形勢逆転。足だけ見えていた何かが立ち上がり、損傷部分がみるみる回復していく。全員に動揺が走る。
なにあれ...
大きく損傷していたはずの脳が丸見えな化け物の体は全て一瞬にして治ってしまった。
あんなの勝てるはずない...気配が他のそれとは比べ物にならない。レベルが違いすぎる。体の震えが止まらない。脳が逃げろと警告を出している。
『こんなのどうすれば...』
化け物がこちらを向いた。恐怖のあまり体が固まるのと同時に、先程の敵の言葉が咄嗟にフラッシュバックする。
あいつの狙いはかっちゃんだ!!
かっちゃんの方へ1歩踏み出すと敵はもうかっちゃんの近くに迫っていた。
ダメだ間に合わない どうすれば このままだとかっちゃんが 嫌 絶対それだけは それだけは嫌だ...!!
そう思った後、私の意識はプツンと途絶えた。
気付いた時には目の前にあの化け物が目の前に迫っていた。それを認識した瞬間、目の前に大きな壁が現れた。グラッと壁が揺れ地響きがする。
「狐だ...」
そう呟くデクの声が聞こえハッとする。
壁に見えたそれは、たくさんの尾を持つ大きな狐の体だった。鳴き声が響き渡り、狐が化け物を踏み潰した。化け物は潰されることなく耐えたが徐々に押し負け、バキバキと音を響かせながら地面に沈んでいく。
圧倒的だった。誰もが声を失いその様子を見ている。そしてピクピクと虫の息になった化け物に狐が食らいつこうとした瞬間、衝撃的な事が起きた。あの大きな狐が一瞬で消え、人へと姿を変えたのだ。
ひゅっと息が止まった。地面へ向かい落ちていくその姿は見間違えるはずもないあいつのものだった。
「ユウ!!」
オレが走り出すより先にオールマイトがユウをキャッチし、こちらへ運んできた。
「爆豪少年、彼女を頼んだ」
受け取ったユウは顔は青白くぐったりとしていて、呼びかけても体を揺すっても起きる気配が全くない。嫌な汗が頬を伝う。
「おい!ユウ!目覚ませ!ユウ!」
「おいおい、なんだよそのガキ。そんな化け物地味た個性反則だろ。まあ反動がデカくてもう使えないみたいだけど。その化け物狐のおかげで命拾いしたね爆発小僧」
そうだ...オレのせいだ。油断していた。速すぎて反応出来なかった。だからユウは...
「かっちゃん!そんな奴の話なんて聞かなくていい!」
「早くこっちに来い!」
考えるのは後だ!今はユウを救ける事だけに集中しろ!ユウを抱え、3人の後方へと走る。
「ユウちゃん!」
「緑谷!敵から目を離すな!今は三条と爆豪を守ることだけ考えろ!」
「早くオールマイトをサポートして奴らを倒さねえと!」
「ダメだ!逃げなさい!彼女をもっと安全な場所に!」
「...警戒しながら後退するぞ」
「おい来たぞ!やるっきゃねえ!」
早くユウを後方に連れて行きたいが、ユウを抱えたままじゃ、他のヴィランに遭遇した時にどうしようも出来なくなる。
クソ!早くどうにかしねえとなのに!
その時、オールマイトの気迫によって敵の足が止まり、再生する化け物はオールマイトの凄まじい連続攻撃により外へ吹っ飛ばされた。
「見た所外傷はねえな。脈もある。だが顔色が悪いし油断ならねえな」
「かなりヤバそうだ。早くどうにかしねえと!ここはオールマイトに任せて早くユウを後方に!...って緑谷!?」
デクがすごい速さで敵へと向かっていった。
あいつ何やって...!やられそうになったその時、銃弾の音が響き、プロヒーロー達が一斉に入ってきた。
これで行ける!一気に出入口を目指して駆け抜ける。
来ていた救急車により直ぐにユウは病院へ搬送されることになった。
「両足重症の彼と、意識不明の彼女を除いて...ほぼ全員無事か」
「ユウ...三条の様態はどうなっていますか」
「デクくんは...」
「彼は保健室で間に合うそうだ。彼女は依然意識は戻っていないが、命に別状はないらしい。君が早くに連れてきてくれたおかげだね」
「...」
違う...オレがいなけりゃユウはあんな目にあうことはなかった。怖くて震えていたはずなのにあいつはオレを守るために...
この日、ユウが目覚めることはなく、オレは一睡も出来ずに、朝を迎えた。
夕方に目を覚ましたと病院から連絡が入り、オレは急いで病院へ向かった。
『あれ?かっちゃんどうしたの?』
きょとんとした顔でオレを見るユウに急いで駆け寄る。
「意識不明だったくせに、どうしたの?じゃねえよ。オレがどれだけ心配したと思ってんだ馬鹿ユウ...」
一気に体の力が抜けた。オレを見つめるユウを見て、目頭が熱くなる。生きてる...本当に良かった...馬鹿みたいに繰り返しその言葉を噛み締める。
『ごめん...私、全然何にも覚えてないんだけど何があったの?なんかあばら骨折れてるらしいんだけど...え...かっちゃんもしかして泣いてる...?』
「泣いてねえ!何にもって、デカくなったことも覚えてねえのか?」
『デカくなった!?え、どういうこと?』
「ワープゲートと手がいっぱい付いたやつと脳が丸見えの化け物の事は覚えてるか?」
『うん...あれ...?私もかっちゃんも無事ってことはあの化け物倒せたの?絶対勝てないと思ったのに』
「オールマイトが倒した。だがその前に、でけえ狐になったお前があの化け物を踏み潰した」
『踏み潰した!?えっ何にも覚えてない...そこであばら折れたの?』
「あばら折れたのはオレを庇ったからだ。...悪い...お前のこと守るって言ったのにオレのせいで...」
『かっちゃんのせいじゃないよ。全部ヴィランのせい。全然覚えてないけど、かっちゃんが無事で本当に良かった!』
「お前のせいで生きた心地がしなかったけどな...顔色真っ青でぐったりしたまま何やっても起きねえし、このまま死んじまうんじゃねえかって...怖かった...」
『ごめんね、私かっちゃんに迷惑かけてばっかりだ。次こそはって思うのにいつも失敗しちゃう。かっちゃんの言う通りすぐ騙されちゃうし...
でも轟くんは悪い人じゃないから喧嘩売っちゃダメだよ?表情は分かりずらいけど、かっちゃんと同じ正直で思ったことハッキリ口に出す裏表のない人だって分かるもん。悪い気配を何にも感じない。これはクラスみんなにいえることだけどね』
「悪かった...イライラしてて、思ってもないこと言っちまった」
『そうだったの...?良かった...』
怒られると思っていたのに、ただただ安心した表情をするユウに、ずっと気にしてたんだなと申し訳なくなる。
怒っているから避けられたのだと思っていたが、きっとこいつは言われた事がショックで、どうオレに接すればいいか分からなかったのだろう。それだけの事をオレは言ってしまったのだ。
「ほんと悪かった...お前、明日は学校来れんのか?」
『うん!今日退院であとはリカバリーガールのとこに通って治してもらえって言われた』
「じゃあ明日の朝迎えに行く。そんで帰りはスーパーな」
『分かった!ありがとうかっちゃん!』
嬉しそうに笑うユウを見て安心した。もう二度と笑ってくれないのではと本当に心配したし不安だった。
ユウを家まで送り届けたあと、家に帰りこの日は直ぐに眠ってしまった。
私は一体...