ゆーあーmyヒーロー
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黒い靄に覆われ、視界が晴れるとそこは瓦礫の上だった。ここは一体どこだろう。そんなことを考える間もなく、突き刺さる悪意で満ちた視線に体が強ばる。
「大丈夫だ。すぐにオレが片付けてやる」
『かっちゃん...!』
パッと手を離され、そこでようやく私はずっと彼に手を握られていた事に気が付いた。だから一緒に飛ばされたんだ。もし1人で飛ばされていたらと考えるだけで恐ろしくなる。
「ユウ!爆豪!無事か!」
『切島くん!』
「おい、クソ髪!ここはオレら2人でやるぞ!危ねえからユウは動くな」
「おう!」
『わ、分かった』
2人は私を囲うように陣形をとり、敵を倒し始めた。2人ともすごい!どんどん敵がなぎ倒されていく。
この何もしていない状況が心苦しいが、下手に動くとかえって邪魔だろうし、大人しくしていた方がいいだろう。それでも多少サポートをと個性を発動し、耳を澄ませる。
「よし、終わったか?」
『切島くん!まだドアの辺りに3人くらいいる!』
「OK!」
2人は無傷なまま見事に全員倒してしまった。
『ありがとう2人とも。足引っ張ってごめん』
「全然!むしろサポートサンキューな!」
「こんなんよゆーだわ」
『これってみんなそれぞれ別の場所に飛ばされてるってことだよね?』
「多分な!早くみんなを助けに行かねえと!オレらが先走ったせいで13号先生が後手に回った。先生があのモヤ吸っちまえばこんなことになっていなかったんだ。男として責任取らなきゃ...」
『切島くんかっこいい...!』
「べ、別にそれくらい漢なら当然だろ!」
漢らしいし、めちゃくちゃヒーローらしい!流石ヒーロー科だなあ。個性使ってから目線若干ズラされてる気がしなくもないけど!
「行きてぇなら1人で行け。オレはあのワープゲートぶっ殺す!」
なんで私の幼馴染はこうなんだろうか...切島くんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい...
...!この視線!
慌てて狐火をヴィランに飛ばす。
「かっちゃん後ろ!」
瞬時に反応し、背後のヴィランをノールックで爆破させたかっちゃんには流石としか言いようがない。
「おい!馬鹿ユウ!今お前の出した火で焼けそうになったぞ!コントロールできねえ様なもん使うんじゃねえ!危ねえだろうが!」
『ごめんなさいー!』
「まあまあ爆豪、ユウはお前を助けようとして使ったんだし、そんなに怒ってやるなよ。な?」
「チッ!」
『切島くんありがとう〜!』
「おう!見た目が変わるのも驚いたが、ユウの個性って火出せるんだな!遠距離攻撃もできるし、かっこよくていいな!」
『全然、そんな大したもんじゃないよ。火炎放射とかできるわけじゃないし火の玉だけだし、威力もそこまでないし…コントロールも下手だし...』
「おいおい、そこまで卑屈になる必要ねえだろ。威力は劣っても、火による被害を最小限に抑えられるし、コントロールできるようになれば出来ることもかなり多そうだぞ!」
『ほんと切島くんって優しいし前向きだし、Theヒーローって感じだね!』
「そ、そうか?ありがとな」
「おい!ユウ!早くワープゲートんとこ行くぞ」
『えー!?私なんもできないよ!?』
「はなっからお前にはなんも期待してねえわ!どこに行ったってヴィランがいるんだ。安全な場所がねえ今、オレの横が一番安全だろうが」
『た、確かに!』
言い切る爆豪もすげえけど、それをすぐ肯定するユウもなかなかだよなと切島は心の中で思った。
「つーかワープゲートのとこ行くったって、生徒に充てられたのがこんな三下なら大概大丈夫だろ」
『なるほど!』
「だからお前は何もせず、オレの傍にいろ。お前のことはオレが絶対守ってやる」
『うん!ありがとうかっちゃん!』
「なんだよそれ爆豪かっこよすぎるぜ!」
「あ!?てめえはとっとと他のヤツんとこ行けや」
「待て待て!ダチを信じる...!男らしいぜ爆豪!ノったよおめェに!」
何だかんだでそのまま3人でワープゲートのところへ向かうことになった。
「そういえばなんかユウの尻尾増えてねえか?」
『尻尾の本数で、使える技が増えるの。1本の時は身体強化で2本の時は身体強化とさっきの狐火が使えるって感じ。九尾の個性だから恐らく9個技があるんだろうけど、私は2つしか使えないんだよね…』
「9個も技使えるって実質個性9個持ってるようなもんじゃねえか!すげえにも程があんだろ!」
「使えてればだろ。9分の2しか使えてねえうえに、1個はコントロールクソで、もう1個は、こいつの自前の運動能力の低さのカバーで帳消し。完全に宝の持ち腐れってやつだな」
『かっちゃん酷い!でもその通り!しかも使うと筋肉痛になるし、疲れるし、お腹空くし眠くなる!』
「効率悪すぎだろ!」
こんな状況の中、かっちゃんと普通に話せたことに私は安心していた。私の事をどう思ってようが、彼にはきっと関係ないのだ。私がどんなに嫌な奴だろうがヒーローだから救ける。それだけだ。
私が1人で気にしてるだけ。
1人で怒って悲しんで馬鹿みたいだなあ私。
底知れぬ脅威を知るまであと少し