ゆーあーmyヒーロー
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次の日、学校へ行く途中でデクに会った。
「なんだよ。また待ち伏せしやがって。何度聞かれてもオレは言わねえぞ」
「それはもういいんだ。直接聞いたから」
「は?」
「あのさ、今日ユウちゃんがかっちゃんに謝るって言ってたから、その...許してあげてね」
「許すも何もあいつは何もしてねえだろ。...もしかしてお前、直接聞いたって」
「うん。れいくんに聞いた。それで僕もカッとなっちゃって、こうなった」
喧嘩なんてしないはずのこいつが頬にでかく、ガーゼを貼られていたから初めから気にはなっていたが、あのクソ野郎と喧嘩してできた傷だったとは。
「お前も怒って喧嘩とかするんだな」
「だってあんなの許せるわけないじゃん...」
「そうだな。1度殺しても殺したりねえ」
「殺すは流石にやりすぎだよ...だけど、僕もまだちょっと物足りないや。
昨日この事をユウちゃんに話したら、見たことないくらい泣いてた。かっちゃんに酷いこと言っちゃった、もう許してもらえないってずっと泣いてた。でも今日学校に来てかっちゃんに謝るって言ってたから、仲直りしてあげて」
「...分かった。分かったから余計なお節介すんじゃねえ!」
ひいっと縮こまるデクを置いて学校へと走る。明日からはまた一緒に登校できるなんて柄にもないような事を思いながら久しぶりに明るい気持ちになった。
教室に着き、ずっと席に座っていたが、あいつが来ることはなく始業のチャイムが鳴り先生が教室へ入ってきた。遅刻か、来れなくなったかどっちだ?なんていつもろくに聞いていない先生の話を今か今かと待つ。
けれど先生の口から出たのは、そんな予想を遥かに超えたものだった。
「三条ユウさんは引越すことになりました。親戚の方の元へ行くそうです。急にはなりますが」
思わず立ち上がり、教室を出る。ザワつく教室や待ちなさいという先生の声を無視してユウの家へと走る。おかしい。あまりに急すぎる。デクの話からして昨日まで学校に来るつもりだったのは間違いない。
オレもデクも何も知らされてないってことは、オレらの親も何も知らなかったということだ。なんでいきなり...考えるな!走れ!会って直接聞けばいいだろ!
あいつの家の前に車が停まっているのが見えた。
『嫌だ、離れたくない!離して!離してよお!』
悲鳴にも近いような叫び声が聞こえ、車まで無理やり引きずるように連れられてくるユウが見えた。
「ユウ!!」
『かっちゃん...!』
「なんでこんな時間に子どもが。おや?君は」
そう言ってユウの腕を掴んだままオレを睨む男は、あの時家から出てきた男だった。
「ユウを離せよ」
「離せなんて何を言ってるんだい。この子の両親はもう居ない。うちで引き取ることになったから連れていく。それだけのことだ。こっちも忙しいんだ邪魔しないでくれるかな。ここまで連れてくるのにもかなり時間を取られたんだこれ以上時間を無駄にする訳にはいかない」
無理やりユウを車に入れようとするが、ユウが抵抗して暴れる。
『嫌!行きたくない!かっちゃん救けて!』
その声に弾かれるようにして体が動いた。
「ユウを離せ!」
男に向かって個性を発動させる。ボンッ!という音とともに煙が上がる。のばされたユウの手を掴もうと、手をのばすと腕と足が何かに縛られ、そのまま地面に倒れ込んでしまった。
「やってくれたなガキが!周りの目もあるし個性はあまり使いたくなかったが仕方ない。君にはそのまま転がってて貰わないとまた邪魔をされるし、この子には仕置きが必要だ」
男が手をかざすと、どこからともなく鎖が現れ、ユウの体を縛り上げる。
苦しそうな表情をするユウを車に放り投げ、扉を閉めると動けないオレを見下ろして踏みつけてきた。
「ユウをかえせよ!」
「その反抗的な目。どこまでも気に入らないな。まあいい。もう二度と君に会うことはないし、この怪我は大目に見ておいてやろう。いい個性だったけど、あと10年足りなかったね」
いくら暴れても手も足も鎖が外れず、車に乗り立ち去る男をただただ睨みつけることしかできなかった。
クソッ!クソッ!ーーッ!...何もできなかった。
救けを求めるあいつを救けられなかった...手が届かなかった。ちくしょう...せっかくまた...
涙がボタボタと地面を濡らしていく。我慢しようとしても止まらず涙はどんどん溢れてくる。
しばらくすると鎖は消えたが涙は止まらず、あいつの家の前でオレはずっと泣いていた。少しして学校から連絡が来たらしく、親がオレを探しに来た。
怒られると思ったが、親は何も言わずにオレを抱きしめ頭を撫でるだけだった。
親と一緒に、ユウの居場所を探そうとしたけど、学校側は何も知らず、あの男含め集まっていた親戚の名前も何も分からなかったため、探しようがなかった。
中学になった今でも、あの出来事の夢をよく見る。
救けを求めるあいつの顔を今でも鮮明に覚えている。
あの時オレが強ければどうにかできてたかもしれない。
その前のことだって強ければ...
だから強くならなければいけない。あんな悔しい思いをするのはもう御免だ。
絶対に負けねえナンバーワンヒーローにオレはなってやる!
そんな思いを胸に雄英の試験に向かう。
試験の帰り、懐かしい見覚えのあるストラップをリュックに付けた女を見つけた。腑抜けた顔をしたブタの体に5thと書いてあるストラップ。
あいつのランドセルに付いていたやつと同じものだった。自分が買ったものだからよく覚えている。
何が良いのかオレには全く分からなかったが、あいつが好きだったから誕生日にプレゼントした。
すっごい喜んでずっとランドセルに付けてたなあいつ...
そんな思い出に浸りながら歩いていたら、いつの間にかそいつの真後ろにいた。
これだけ年数経ってんのに、まだ付けてるような奴いるんだななんて見ていると、いきなりそいつが前に倒れた。何やってんだこいつ!咄嗟にそいつのリュックを掴み、引き戻す。
「何やってんだ!とろくせえ!」
その救けた少女が誰かなんてこの時のオレはまだ知りもしなかった