ゆーあーmyヒーロー
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ユウと絶交した。
近くにユウがいないと咄嗟に探してしまっている自分がいてそんな自分にムカついた。
馬鹿だし、抜けてるとこばっかで危なっかしいし、あんなやついない方が...!実際いない方が楽なのだと思う。それでもあいつの笑顔とか生意気な反応とか、眉間に皺寄せながら勉強してるとことか、美味しそうにおやつを食べてるところとか、オレの名前を呼ぶとことか何度も思い出している自分がいるし、何か大きく欠けたような喪失感に襲われている。
絶交。嫌い。大っ嫌い。あの日言われた言葉が、声が何度も頭を巡る。
無抵抗なやつをひたすら殴った。一方的な暴力。あいつの何より嫌うものだ。
前に弱いやつをいじめていたところをあいつに見られて、そんなヴィランみたいな事しないでって泣きながら怒られた。
それ以来オレは弱いものいじめをやめた。だから嫌われても仕方ない。
それでもあのクソ野郎を殴ったことにはなんの後悔もしていない。
許せるわけねえだろあんなの!!
「お前、どうしてユウのポーチ持ってんだ?昼すぎに見つけてずっとお前の動きを見ていたが、ユウに渡すこともせず、ご大層にずっと持ったまんまだったな」
「返すタイミングを逃しちゃってなんて言っても君は信じてくれそうにないね。だけどどうしてそれをわざわざ僕に聞くんだい?君なら見つけたそばから、デカい声出してぶんどりそうだけど」
「お前に確認しなきゃいけないことがあったからな。くまのキーホルダーあいつの引き出しに入れたのもお前だろ」
「なんでそう思うの?」
「お前の個性は同じくらいの大きさの物をトレードできるが、物の形態をしっかり記憶していないとトレードが出来ない。お前はくまのキーホルダーを盗んだ後、オレとあいつがプリントを探している時に、引き出しから出してあったあいつのポーチを記憶した。そしてあいつが昼休みに教室を出てる間にポーチとキーホルダーをトレードした。違うか?」
「ハハッ恐れ入ったよ。流石は天才君だ。まさかそこまで気が付いていたとはね。でもどうして彼女にそんな事をしたのかは分かってるかい?」
「丁度いい大きさのポーチをあいつが持ってたからだろ。お前とほぼ関わりがなかったあいつが、お前に嫌われてなんかされるっていうのは考えずれえ」
「そう彼女は何も悪くない。標的を彼女にしたのは、勝己君、君が彼女のことを好きだからだよ。僕の狙いは君だ。でも君には何やっても敵わないし、同じことを君にした所で君は怒ってすぐ忘れるだけだろ?前から気に食わなかったんだよ。
偉そうで暴力的な癖に個性にも恵まれて成績も常に1位。
ゆりにお前が好きだからって振られた時は本当に腸が煮えくり返ったよ。なんで僕がお前みたいな奴に負けるんだよ!おかしいだろ!」
「おかしいのはてめえだろ。そんなくだらねえ理由で全く関係ないあいつにあんなことしたのかよ!あいつがどれだけ泣いて、怯えて、苦しんでたと思ってんだ!」
「クラスみんなに犯人扱いされて、放課後は走って教室出てったよね!君は彼女を庇い、放課後はクラス全員に怒鳴り散らかした後彼女を追いかけた。
彼女は怪我をして、怯えた様子で君の後ろにくっ付いて教室に来たよね。君はずっと彼女を見てたし、彼女に構う僕をすごい目付きで睨んでた。
ポーチはそんなに大事なものだとは知らずにトレードしたけど、結果オーライだったね。悲しむ彼女のため、君はあちこちポーチを探し回った。
ほんと彼女はいい仕事をしてくれたよ。予想以上だった」
「てめえ!!」
「そうやってすぐ暴力で解決しようとする。
まあでも、彼女に振り回される君はとても笑えたし殴られても後悔は無いかな。君の気も知らず、ちょっと優しくしただけで、すぐ懐いてきたお馬鹿さんもすごい笑えたし」
「ふざけんな!!」
何も知らずにあのクソ野郎と話すユウにイラつく。本当の事を伝えたかったが、彼女に絶好だと言われ、自分も言い返した手前彼女に話しかけるどころか近付く事さえできずにいる。
デクに何度も事情を聞かれたが無視を続けていた。
デクを通せば和解できるのではとも考えたが、あんな胸糞悪い話をするなんてごめんだ。
苛立ちと喪失感で満ちた毎日を送っていると、ある日、彼女の母親が亡くなったと親から告げられた。
ずっと泣いている母を見て、本当にあの人は死んでしまったんだなと、あの人の事を思い出して悲しくなる。車であの人と話した時がふと頭をよぎった。
あいつをよろしくって言われたのに...
あいつの両親の祖父も祖母ももういないし、本当にあいつは1人きりになってしまった。
今どうしてるんだろう。きっとずっと泣いている。慰めてくれるやつはいるんだろうか。それともずっと1人で泣いてるんだろうか。
考えれば考えるほど心配でいてもたってもいられなくなる。でも何をしてやればいいのか分からなくて、また拒絶される事が怖くて結局葬式にも行かず、何もできずにいた。
空いたままのあいつの席を眺めていると、クラスの連中から可哀想だとあいつを哀れむ声が聞こえてきた。
散々あいつのこと寄って集って責めてた癖になんて調子のいい奴らだ。先生も、悲しんでるような顔をしているが、内心きっと何とも思っちゃいない。
葬式には行ったが、あいつと対して話もせずに帰ったと親から聞いた。あのキーホルダー事件の時だって、あいつを気遣うようなことは一切しなかった。
どいつもこいつもクソみたいな奴ばかりだ。
イライラしながら、あいつへ渡すプリントと連絡帳を持って教室を出る。喧嘩をしてからデクに持っていかせていたが、いくら探してもデクが見つからず、仕方なく自分で持っていくことにした。
ポストに入れて来るだけなら会うこともないしな...
あいつの家に行くと見たことがない車が何台も停まっていて、知らない人が家から出てきた。
「どうしたんだい僕?何かごようかな?」
「これ、あいつに...」
笑っているが、何か信用ならない雰囲気を感じる男だ。
「ああ、渡しておくね。わざわざお疲れ様」
「あなたはあいつの親戚か何かですか?」
「ああ。かなり遠縁ではあるけどね。あの子もう周りに誰も残ってないから、親戚総出って感じ。ああ、そろそろ戻らないとじゃあね」
少し苛立った様子で家に戻って行った男への不信感は募るばかりだが、どうこう口出しできるような歳でも立場でもないので、オレはそのまま家に帰った。