最終決戦偏
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待ち合わせの場所まであと少し。
女の子達に手伝ってもらって髪も服装もバッチリなはず。あとは貰ったアドバイスを実践すれば...
無理!ボディタッチに女の子らしい仕草って何!?そんなんやるの恥ずかしくて死んじゃうし、何話せばいいの!?何すればいいの!?私もう無理だこれ!
頭が大パニックな中、待ち合わせ場所である駅に到着し、既に来ていたかっちゃんを見て立ち止まる。
ど、どうしよう...!
見慣れない服装だからか、いつもより大人っぽく見えるというかかっこよく見えてしまい、緊張して声をかけられなくなっている自分にまたパニックになっていると、かっちゃんとバチッと視線がかち合った。
「...」『...』
何も言わずに歩いてきたかっちゃんに何も言えずにいると、かっちゃんは何も喋らないまま私の前で立ち止まった。
「...」『...』
なにこれどういう時間!?なんでかっちゃん何も喋らないの!?怒ってるしか考えられないけど、遅刻してないはずだし、特にラインも来てなかったし...え?もしかして私、待ち合わせ時間間違えた!?
「.....ってる」
『な、なに...?ごめん、聞き取れなかった』
「だからッ...」
苛立った様子で視線をさ迷わせるかっちゃんに絶対何かやらかしたと背筋が冷たくなる。
『ごめん!私』「似合ってる」
『ご、ごごごめん!』
まさかの被ってしまい2度目も聞こえないという事態に焦りまくっていると再びかっちゃんは口を開いた。
「その格好似合ってる.....」
『へ!?あ、ありがとう.....かっちゃんはかっこいいね』
ん?この返しなんかおかしくない!?服褒められたのに、褒め言葉じゃなくて思ってたことが口に...!
恥ずかしすぎて今すぐ帰りたいし、顔が見れない。
「...か...」
『蚊!?どこ!?どこにい...る...?』
刺されてなるものかと辺りを見渡すが見つからず、かっちゃんを見ると何故か真っ赤で苛立った顔をしていて困惑してしまう。
なんで怒ってるの!?え?普通刺されたくなくない!?
「蚊じゃねえわクソが!か、、ゎ...」
『川...?』
電車が到着するとアナウンスが入り、ホームに電車がやって来た。
「だぁああ!もういいわ!行くぞ!」
『う、うん』
なんだったんだろう...
手を引く彼の手は熱く、少し汗ばんでいて熱があるのではと心配になる。
『かっちゃん、顔真っ赤だし、手熱いし、もしかして熱あるの?別に今日じゃなくても大丈夫だし無理しな』
「熱なんてねえわ!死ぬほど元気だっつーの!」
『死ぬほどってそれ元気じゃなくない...?』
「うっせえ!」
『かっちゃん、電車の中だから静かに...!』
かっちゃんの大声に集まった視線が痛い。かっちゃんが荒ぶってること自体は別に珍しくないが、やっぱり今日のかっちゃんは変な感じがする。
「はあ...次乗り換えだからな」
『わかった...!』
電車を乗り換え、二人並んで椅子に座ったが、どこに行くつもりなのだろう。持ってる大きいバッグは何か関係あるのかな?
『かっちゃん』「ユウ」
被ってしまい、どうぞどうぞと促すとかっちゃんは窓の外を見た。
「決戦の前に行きてえって行ってたデートの場所、まだ何処も復興してなくてよ...誘っといて悪ィけどお前が喜びそうなとこ浮かばなくて、多分退屈になっちまうと思う。ごめん」
『かっちゃんと出掛けられただけでも嬉しいよ。この前お墓参りも一緒に行ってもらっちゃったけど』
「当然だろ。付き合い始めたんだから報告はちゃんとしとかねえと」
『相手の両親になんて普通結婚の時くらいしかしなくない?』
「オレがずっと傍にいますって言っといた方が安心できんだろ」
『そ、それは確かにそうだと思うけど』
別れた時気まずいと真っ先に考えてしまう私は酷い奴だと思う。でも、ただでさえ釣り合っていなかったのに、あれだけの活躍をして後輩にもモテモテな彼にずっと好きでいてもらうなんて不可能に近い。それが分かっているからずっととか先の話をされるとどうしても逃げ腰になってしまう。
「降りるぞ」
手を引かれるがままついて行くと着いた場所は海だった。
『かっちゃんって海好きなの?まだ泳ぐには寒くない?』
「泳がねーわ!ここなら人少ねエと思って来ただけだ。遊ぶならともかく見るだけなんてお前には退屈だろーけど、一応デートっぽいとこと思ってよ...」
『ふふっ、それで海なんてかっちゃんロマンチストだねえ。私、海好きだよ。波の音とか匂いとか水とかなんか落ち着く』
「砂浜、足くじかねえように気をつけろよ」
『うん!』
手を繋いでゆっくり歩くかっちゃんを見ると、下の方をずっと見ていて何かあるのかな?と気になって下を見ると小さなカニが歩いていた。
『かっちゃん!カニいるカニ!』
「そんなちいせえカニでよくそれだけはしゃげるな」
『えーだって可愛くない?ていうかかっちゃんも興味津々にカニ見てたじゃん』
「は?ちげーよ。オレはこっちだ」
かっちゃんがしゃがみ、手に取ったのは小さな貝だった。
『食べれるのそれ?』
「なんでお前は食うの前提なんだよ。貝殻じゃねえなと思って見てただけだ」
『かっちゃん、貝殻が欲しいの?女子力高いね』
「貝殻で女子力の意味がわかんねえっつーの。貝殻なら持ち帰っても誰も困んねえし、枯れたり腐ったりしねえから記念として持ち帰れると思ったンだよ。またゲーセンとか店でお前の欲しいもんやれれば良かったが、まだぬいぐるみとかキーホルダーとか生活必需品じゃねえもんは工場動いてねえからな。でもせっかくの初デートだし記念品くらい欲しいだろ...」
デートスポットでよくある見頃を迎える花畑でなく季節はずれの海を選んだのはそういうことかと感心する。そう考えたのは小さい頃私が記念だからと何かと出かける度にお揃いの物を欲しがっていたからだろう。
女の子達はどこに連れてく気なんだとかなり不安そうだったが、かっちゃんは今回私のために本当に色々考えてくれたのだと思う。ちゃんとデートっぽいことをしようとプランを立ててくれているかっちゃんが可愛いくて笑うとなんだよと不満そうに睨まれた。
『うん!欲しい!じゃあ私がかっちゃんの探すから、かっちゃんが探したの私にちょうだい!』
「おう。お前のセンスはちょっと信用ならねえけどそれも記念だ」
『ネーミングセンスは絶対かっちゃんよりありますー』
こうなったらすごいのを見つけるしかないと砂浜を凝視する。
「おい、そろそろ見つけたか?」
なかなか良さそうな物が見つからず、どうしようと焦る中、少し遠くに黄色っぽい貝殻を見つけた。
貝殻を拾い、割れたりしていないか確認していると、早く戻れとかっちゃんの焦った声が聞こえ、なんだろうとかっちゃんの元へ向かう。
『どうしたの?かっちゃん』
「あーあ...やっぱ濡れちまってんじゃねーか」
かっちゃんの視線の先には濡れて砂で汚れたスカートがあり、ショックを受ける。
『せっかくみんなで考えてくれたやつをヤオモモちゃんが作ってくれたのに...』
「波が来るようなとこ行くからだろったく...とりあえず汚れちまってるし水道で洗うぞ」
しょんぼりしながら連れて行かれた水道でスカートの裾を洗っていると、ほらよとかっちゃんが綺麗な巻貝をくれた。
『しましましてて可愛い...!えっとかっちゃんにはコレを...』
これには勝てないなと思いながら握っていた貝殻を洗って渡す。
「黄色い貝殻なんてあったんだな。サンキュ」
貝殻を眺め、ポケットに入れるかっちゃんはなんだか嬉しそうに見えた。
『貝殻大切にするね』
そう言った後、お腹が鳴ってしまい恥ずかしくて顔を覆うとクスクスと笑い声が聞こえた。
「どうせお前、食える物いねえか探してたんだろ」
『失礼な!ちゃんと貝殻探してたもん!』
「オレも腹減ったし、飯にしようぜ」
『どこかやってるお店あるかなあ』
「場所選ばず食えると思ってドーナツ作ってきた。その辺なら座って食ってても問題ねえだろ」
『やったー!かっちゃん飯だー!』
かっちゃんが出してくれた大量のドーナツを手に取り、かぶりつく。
『美味しい!ん?どうかした?』
何故か安心したように表情を緩めたかっちゃんに珍しく何か失敗でもしたのかなと勝手に想像する。
「片手しか動かせねえと、調理ってほとんど何もできなくてよ...できそうな物考えたけど上手くいかねえことだらけで、ババアに手借りた。できそうな工程は意地でオレ1人でやっちまったから、上手くできてるか不安だった」
『あ...』
かっちゃんに言われて右手のことを思い出す。
かっちゃんが不自由なさそうに見えていたからすっかり忘れてしまっていた。でも両手が使えないなんて不便でないはずがない。完璧主義でなんでもできてしまう彼が、どれだけ歯がゆく、悔しい思いをしてこれを作ったか想像するには容易い。こんな事がなければそんな思いをすることもなかったのに。
今日だって、その前だって隣にいる私が気を利かせなきゃいけなかったのに、彼女のはずなのに本当に私はどうしようもないダメで使えない人間だ。
「は!?何泣いて!?実は不味かったのか?」
慌てた様子で心配してくれるかっちゃんにまた涙が出てきてしまう。
『私がかっちゃんの分まで全部やらなきゃいけなかったのにっかっちゃんの手のこと忘れててっ私っ一緒にいたのに、、彼女なのにっ約立たずで迷惑ばっかりかけてっ、かっちゃんがこの先も好きでいてくれるってどうしても思えなくて、振られた時のことばっかり考えてっ私、彼女向いてないっ...』
「それでためこんでたことは全部か?」
勢いで要らないことまで言ってしまったが、それが私という人間だから仕方ないと首を縦に振る。
かっちゃんのことは大好きだ。でも付き合っていて嬉しいや幸せと感じる事より、不安や焦り、罪悪感を感じる事の方が多い。何もかも上手くできない。かっちゃんの期待に応えられない。かっちゃんを好きな人はいっぱいいるのに、こんな何もできない私が彼女なんて変だ。
「お前はどうせ気使ってるとかって思うんだろうが、全部オレがやりたくてやったことだし、お前に頼らずやるって決めたのもオレだ。手借りたきゃ言うし、気使って周りウロチョロされるよりお前みたいに普通に接してくれた方が気楽でいい。あと、オレもお前に言わなきゃいけねえことがある」
別れ話か怒られるかどっちだろうと涙を拭ってかっちゃんを見つめる。
「ここで別れるって言ってやった方がきっとお前は楽になれるんだろうな。でもお前が泣こうが、誠心誠意頼もうがオレはもうお前を手放してやれない。だから先に謝っとく」
思いもしなかった言葉に驚いていると、かっちゃんは一度目を閉じた。
「ずっとずっと欲しかったモノを言われて手放せるほどオレは大人じゃねェし、例え大人になっても、なんでも叶えられる願いなら聞いてやりたいと思えるお前相手でもそれだけは聞けねえ。
ガキの頃からずっとお前だけが好きでお前だけ見てたっつっても、この気持ちは絶対変わらねえっつっても、証明できねえしお前を安心させるには不十分だろう。でも同じように、お前の気持ちが変わらねえって証明もできねえからオレだって不安なんだよ。ずっと誰かに取られちまうんじゃねえかって不安で、付き合えればその不安はなくなると思ってたのに今もお前が他のヤツを好きになっちまうんじゃねえかって不安で堪らねえ。
だからオレがお前にすることは結局オレのためなんだ。お前に好きでいてもらえるように頑張るのは当然だろ。手は卒業までにはぜってえ治すし、オムライス毎日でも食わしてやるから安心しろ」
『オムライス毎日は飽きちゃうからお味噌汁がいい...』
「フッ、オレも毎日オムライスは食える気しねえ」
笑って涙を拭ってくれるかっちゃんに、やっぱり敵わないなと思いながら抱き着く。
『私もかっちゃんに好きでいてもらえるように頑張る...』
「お前の場合変に空回りそうで心配だ。ま、こういうことならいつでも歓迎だけどな。美味いならもっと食え。オレの頑張りを無駄にすんな」
いっぱい食べなければと両手にドーナツを持って食べ始めると、かっちゃんが吹き出し、肩を揺らしながら膝に顔を埋めた。
『なに!?どうしたの?』
「ククっ、オレ、お前のそういうとこ好きだぜ」
『なんか嬉しくない...』
よく分からないが馬鹿にされている気がしてならない。
全て食べ終わり、ご馳走様でしたと手を合わせるとまたかっちゃんは笑い始めた。
「まさか全部食っちまうとはな。オレの何倍食ってんだお前」
『っ〜~』
めちゃくちゃ食い意地張ってんなって思って見てたんだ...
男の人より食べるなんて多分というか絶対女子がデートでしてはいけないことだろう。
好きでいてもらえるよう頑張るって言った直後になにやってんの私...
全身熱いし、燃えるように熱くなっている顔から暫く手はどかせそうにない。
「いっぱい食ってくれてありがとな。片手でもお前喜ばすもんは作れるんだなって安心した」
『つ、次のデートでは、いっぱい食べないように気をつけるから』
「はァ?そこはいっぱい食えや。なんで今回自分で作ることに拘ったかってお前が美味そうに食ってる顔見んのが好きだからに決まってんだろ。そんくらい言われなくても察しろ」
『え、ええー...』
察しろと言われても全然分からない...
「やっぱダメだ。お前が頑張ってもろくなことになんねエ」
『うう...』
「オレに好きでいてほしいなら、そのままでいろ。変に変えようとか思うな。オレは今までのお前見て好きになったんだから、変える必要なんてねえっつーの。あと今後も手のことで気とか遣うなよ。世話が焼けるお前に世話されるなんてストレスで死にたくなりそうだ」
『そ、そこまで言う...?』
でもプライドが高くて完璧主義なかっちゃんのことだ。ポンコツな私が色々しようとするのは確かにストレスかもしれない。
「言う。お前は今までのお前のままでいい。帰るのに時間かかるし、そろそろ帰るぞ」
『うん』
かっちゃんの言葉に付き合ったからと色々変えようとしなくていいんだと少し安心する。
「海来んの那步島以来だな」
『そうだね。那步島はビーチ担当じゃなかったし、船から見たくらいだったけど』
「帰りに女のガキに言われたこと覚えてるか?」
『...うん』
「少しは考え変わったか?」
『どうかな...私が思ってるより自分はマシな人間なのかもしれないとは思えるようになったけど、やっぱり私はダメな人間だと思うよ。自分に自信があるとこなんて1つもないし、自分のことは嫌い。でも無価値とは思わない。かっちゃんが好きになってくれたから』
「オレはお前が自分のことどう思ってようが、お前のことスゴいやつだって思ってる。バカだし危なっかしいし、ダメなとこもいっぱいあるけどな。でもソレも含めてお前が好きだ。お前が完璧になんでもできる人間だったら多分お前のこと好きになってない。ダメなとこはあっても別にいいンだよ。だからちょっとは自信持て」
『ふふっ、今日のかっちゃんはよく喋るね。ありがとう。...あ!写真撮ってもいいかな...?』
「ああ。ちゃんと寄れよ?」
慣れないインカメに手がぷるぷるする。そんな私を見てかっちゃんは笑いながら、スマホの反対側を持った。
『撮れた...!けどほぼ景色写ってない...』
「まあ、そうなるよな。それも記念だ。いつかは上手く撮れるようになンだろ。写真、ちゃんとオレに送っとけよ」
『うん!』
帰りの電車でよほど眠かったらしく、かっちゃんは途中で寝てしまった。
待ち合わせの時間も早かったし、実家でドーナツ作って準備してなんて一体何時にかっちゃんは起きたのだろう。少し口を開けて、寝息を立てているかっちゃんの顔はいつもより幼く見える。電車が揺れ、フラっとかっちゃんの頭が私の肩に乗った。
頬に当たる髪がくすぐったい。温かいかっちゃんの体温にこちらも眠くなってしまったが、頑張って寝そうになるのを堪え、なんとか最寄り駅まで到着した。
『よく眠れた?』
「ほんと悪い...二人きりの貴重な時間だってのに何してんだろうな...」
ズーンと効果音が付きそうなほどへこんでいるかっちゃんを励ましながら学校へと向かう。
『かっちゃん。私、かっちゃんのこと好きだって今日改めて実感できたし、とっても楽しかった。ありがとう』
「最後寝ちまったし、お前泣かせちまったから次は挽回させろ。ぜってえ今日よりもっと楽しませてやる」
『楽しみにしてるね』
「ユウ」
名前を呼び、立ち止まったかっちゃんの方を向くと目の前に赤い瞳が見え、唇に柔らかいものが触れた。
突然のことにびっくりして固まってしまったが頬に手が添えられ、慌てて目を瞑る。押し付けられた唇にキスってこんな感触なんだとドキドキとうるさい心臓の音を聞きながら思う。唇が離れ、伺うようにゆっくり目を開けると、かっちゃんは笑って私を見ていた。
「オレ、お前と付き合えてほんと幸せだわ」
『むう...なんかバカにしてない?』
「してねえっつーの」
クスクス笑っているかっちゃんを睨みつけて頬を膨らますと、かっちゃんは私の頬をつついた後、頭を撫で始めた。
「高校入って色んなことがあったが、お前と再会できてなかったら、こんなに幸せだって思うことも、成長できたと思うこともなかった。ありがとな」
『お礼を言うのは私の方だよ。また楽しいとか幸せって思える日が来るなんて中学の時は思ってもなかった。ずっと思い出に縋って生きてきたけど、かっちゃんのおかげでちゃんと今を生きられるようになった。ありがとうかっちゃん。ありがとうmyヒーロー』
「これからもっと楽しくて幸せだって思える人生にしてやるよ」
自信満々に言ってのける彼に微笑み、差し出された小指に自分の小指を絡める。
『約束だよ』
これからだって悲しむことも苦しむこともたくさんあるだろう。でも、かっちゃんと一緒なら全部乗り越えられる。それ以上に楽しい、幸せだって思える。
この先、大人になった私達がどうなっているかは大人にならなきゃ分からない。でも一つだけ確かなことがある。
この先もずっと、何があっても君は私の最高のヒーローだ。
ゆーあーmyヒーロー