映画 ヒーローズライジング
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目が覚め、周りに誰もいなくなっていることに焦っているとそっと襖が開き、いずっくんが中に入ってきた。
『いずっくん!よかった!』
「心配かけてごめん。ユウちゃん、体調は?無理させちゃったみたいでごめんね」
『ちょっと疲れて寝ちゃっただけだから体調は全然大丈夫。私は大したことしてないよ。二人が回復したのは活真くんのおかげ。誰もいないけどみんなでなにかやってる?私も早く手伝いに行かないと』
「今、明日の作戦会議が終わって解散になったところだよ。多分かっちゃんはお風呂に行ってる」
『あちゃ〜...寝ちゃってて申し訳ない...作戦はどうなったの?』
「えっと作戦を簡単に説明すると城跡を拠点に三人のヴィランを分断して、それぞれの地形を利用し、撃破。島の人達は洞窟へ避難。活真くんと真幌ちゃんは僕らで護衛。細かい配置とかは明日現地で確認しよう。ユウちゃんにはサポート役をお願いしたいんだけどいいかな?」
『うん!』
「ユウちゃんは足怪我してるから、あまり動かなくて済むように遠方からサポートや援護をしてもらう感じになると思う」
『怪我はもう大丈夫だから前線でも』
「かなり出血してたって轟くんから聞いたよ。無理はしちゃダメだ」
『傷口は塞いでもらったし、怪我の範囲は狭いから大丈夫だよ!』
「ユウちゃんが無理をする必要はないんだ。ステインの時はユウちゃんにいっぱい負担をかけちゃったけど、今回はクラスのみんながいるし、こうして作戦を練る時間もある。ユウちゃん、対抗戦の時のかっちゃんを思い出して」
強力な個性を持つB組を相手に無傷での完全勝利。あの時の感動は今でも忘れられない。
「ユウちゃんが犠牲になっての勝利は勝利じゃない。誰が欠けてもダメなんだ。不利な部分は補い合えばいいんだから、みんなで協力して勝つことを考えて。すぐに自分を犠牲にして解決しようとするのはユウちゃんの悪い癖だ」
『ごめん...』
「調子が悪いとことかあれば我慢せずにすぐ言うこと!分かった?」
『はい...』
あの優しいいずっくんが怒っている!言い方は優しいけど怒ってる!
いずっくんに怒られるというショッキングな状況にヘコんでいると、吊り上げていた眉を下げ、いずっくんが優しく微笑んだ。
「ユウちゃんはさ、怪我してたって味方のサポートができるすごいヒーローなんだよ!本当はユウちゃんは島の人達と一緒に避難しててって言いたいんだけど、ユウちゃんのサポートがあると心強いから、ごめんね?」
『わ、私は全然すごくないけど...明日、頑張るね...』
「うん!」
いずっくんが出ていった後も、言われた言葉にソワソワしていると入れ替わるようにかっちゃんが入ってきた。
『かっちゃん!無事目覚めてくれてよかった』
「よかったじゃねーよ!使うなっつったのに吸収使いやがって!なんか顔赤えし熱出てんじゃねーかバカ!」
『ないない!ないってば!』
怒りながら私の額に触れ、熱がないと分かったのか手を離してかっちゃんは盛大にため息をついた。
「熱はねえみてえだな。痛みは?」
『ない。......ちょっとだけ』
少し驚いた顔をした後、かっちゃんは私の前に座った。
「手当てはちゃんとしたか?」
『うん。島のお医者さんに傷口塞いでもらったし、処置もしてもらった』
「明日無茶すんなよ。あと.....」
言いづらいことなのか、なかなか続きを言わないかっちゃんに何を言われるんだろうと不安になってきた。
「たすかった。あのヴィランは強力な個性を持ってるが、個性を使い過ぎると体に負担がかかるらしい。オレとデクがやられるってタイミングでアイツが苦しみ出して撤退していった。お前があのヴィランと戦ってアイツに個性を使わせてくれてたおかげでオレもデクも救かった。だから......断じて吸収の方じゃねえからな!吸収使ったのは許さねえ!」
『う、うん、ごめん...』
「オレのサイドキックになるってんなら無傷の完全勝利を目指せ。代償や犠牲を経ての勝利なんてオレは認めねえ」
『うん...』
どこか苛立った様子のかっちゃんに、やっぱり自分はダメな奴だなと俯くとぽんと頭に手を置かれ、驚いて顔を上げる。
「でもお前の...どんな敵にでも立ち向かうとこはガキの頃からスゲえって思ってる。個性も使い過ぎた時の反動や代償がデカいとこ除きゃかなり優秀だ。だからお前が無傷の完全勝利ができるようになったら、これ以上ねえってくらいオレの理想のサイドキックだ」
かっちゃんが私のこと...
『私、かっちゃんの理想のサイドキックになれるよう頑張る』
「お前ならなれる。待ってるからな」
『...!うん!』
くしゃりと私の髪を撫で、かっちゃんは部屋を出ていった。
気をつかってくれたのだと思う。でもかっちゃんがなれるというとなれるような気がしてきてしまう。
明日は怪我せずにできることを精一杯やらなきゃ...!
翌日、予想通り襲撃に来たヴィラン達を相手に作戦は開始された。
「ユウちゃん!来たよ!」
『了解!』
ヴィランが来る前に大量に生成しておいた狐火を、お茶子ちゃんと瀬呂くんの攻撃の合間を縫って撃ち込む。
とにかく攻撃しまくってヴィランに個性を使わせなければいけないが望遠鏡を覗きながら、遠くに攻撃するなんてことはやったことがなく、文化祭でコントロールがかなり上がったとはいえ、距離感がズレてしまい、なかなか思うようにいかない。上手くいかず、イラついているとヴィランの攻撃がお茶子ちゃんと瀬呂くんに当たった。
これじゃダメだと、お茶子ちゃんと瀬呂くんの元へと向かう。
峰田くんのもぎもぎを使って大量の岩でヴィランを封じ込める本命は成功したように見えたが、すぐに破壊されてしまった。
早く3人を助けなきゃいけないのに!
足場が悪くて負傷した足では思うように走れない。足じゃ間に合わないなら個性を使うしかない。裸眼でもギリギリ認識できるこの距離なら空間操作が使えるかもしれない。望遠鏡を覗き、倒れている峰田くんに照準を合わせる。
目を閉じ、峰田くんの姿をしっかりイメージして再び目を開ける。
『空間操作!』
パッと視界が開け、ヴィランの姿が正面に見える。どうやら成功したらしい。
『お茶子ちゃん!瀬呂くん!私の後ろに!』
問題はここからだけど...
「お前は昨日の...まだやられ足りなかったか?」
どうすればいいか必死に思考を巡らせる。
私が囮になればお茶子ちゃんと瀬呂くん逃がせるかな...ダメだ!私も助かる方法を考えなきゃ!
!この感じもしかして...
『なんで私がやられんのが前提なんだよ』
ヴィランの背後に狐火が当たる。
やっぱり、まだ最初に作った狐火は消えていない。遠くにいたさっきまでは距離感も残数も全く分からなかったが今はハッキリと分かる。
これならまだやれる...!
「そんなもので私が倒せるとでも?」
『倒せちゃうかもよ?』
大量に狐火を生成し、手前に狐火を層のように配置する。超遠距離からの攻撃を経験したおかげか、今までより死角にある狐火の位置が正確に感じ取れる。
今作った狐火で攻撃すると見せかけて、最初に作ってあった分で背後から攻撃する...!
『いけ!』
最初に作っておいた狐火の残りを色んな方面から時間差でヴィランに飛ばしていく。
「小癪な真似を!」
一気に飛ばした方が火力は出るが、個性を多く使わせるだけが目的なら色んな方向から何度も攻撃する方が恐らく効果的。
集中して。手前の狐火を盾役として維持させながら、遠くにある狐火を手繰り寄せる感覚で敵に当てる...!
「お前の相手は面倒だ。一気に片をつけてやる」
『ぐっ!』
激しい竜巻に狐火はかき消され、衝撃波で体が地面に叩きつけられる。
「ハアハア...これで終わりだ」
まずい...視界が揺らぐ。早く立たなきゃやられちゃうのに体が動かない...
敵の指先が向けられた途端、誰かに体を持ち上げられ、浮遊感に襲われる。
「よくやった。あとは任せろ」
聞き慣れた安心する声と力強い言葉に気が抜けてしまったのか、瞼は開けそうにないし、意識が遠のいていく。
あとは任せたよ.....