ゆーあーmyヒーロー
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あれから私はかっちゃんとは1度も話していないし、近付いてもいない。でも、ふいに彼を探してしまう時があってそんな自分がとても嫌だった。
どれだけ私が彼に依存していたかを思い知らされる。
いずっくんにかっちゃんと仲直りしようって何度も言われたけれど、私は彼を許す気なんてなかったし、もちろん彼も謝る気なんて微塵もないだろう。
それから2週間後、更なる大事件が起こり事態は急変する。
お母さんが急死した。職場で倒れて、急いで病院へ運んだが間に合わなかった。そうお母さんの職場の人から聞いた。信じたくなかったが、泣きながら話すその人が嘘をついていないことくらい分かっていた。
もう体の水分が全部無くなるんじゃないかというくらい泣いた。泣き続けた。私が泣いている間に知らない人がたくさん来て、何か話し合っていた。
ほどなくしてお葬式が行われ、かっちゃんといずっくんのお母さん、いずっくんがお葬式に来てくれた。
みんな泣きながら、辛かったね、なんでも頼ってねと声をかけてくれる。
葬式が終わり何をしていいかも分からず、葬儀場のソファに座っているとかっちゃんのお母さんに呼び止められる。
「勝己を連れて来られなくてごめんね。何度言っても絶対行かないって暴れまわってさ。本当にごめんね」
『喧嘩して顔合わせずらいので、かえって良かったです』
そう答える私を悲しそうな顔で、3人とも見ていた。
本当は喧嘩なんて優しいものじゃないけど、流石にお母さんの前で絶交しましたなんて言えなかった。
葬式が終わった次の日、知らない人達が話し合いしている間、居場所もなく部屋の隅で座っていると夕方頃インターホンが鳴った。訪ねてきたのはいずっくんで家の中では話しずらかったので、外の公園で話す事になった。
「忙しい時にごめんね」
『ううん。私はあの人達の話に入れないし、向こうは私が邪魔みたいだから。来てくれてありがとう。でもいずっくん頬っぺ怪我してるけど大丈夫?すごい痛そう...家から薬持ってこようか?』
「こんなの全然平気だよ!ありがとうユウちゃん」
『かっちゃんにやられたの?』
「違うよ!かっちゃんは関係ない!...こともないけど...その事で今日どうしてもユウちゃんに伝えなきゃいけないことがあって」
『何?』
「かっちゃんの話をユウちゃんに聞いて、酷いなって僕も思ったんだけど、なんだかかっちゃんらしくないっていうか、違和感があって僕なりに調べたんだ。そしたら...」
『そしたら?』
「あのれいくんが、ユウちゃんのポーチを盗んだ犯人で、ゆりさんのキーホルダーを盗んだのもユウちゃんの引き出しにキーホルダーを入れたのも彼だって分かったんだ」
『嘘...』
「ユウちゃんが僕のこと信じてくれるかは分からないけど嘘じゃない。直接本人に聞いたんだ。この怪我はその時ちょっと喧嘩しちゃってできた」
少し気まずそうに頬をかくいずっくんにドキリとしてしまう。だっていずっくんが嘘をつくはずがない。
しかもいずっくんが喧嘩なんて...
『でもそんな事して何に...』
「かっちゃんへの逆恨みだった。れいくんはゆりさんのことが好きで告白したけど振られた。ゆりさんはかっちゃんのことが好きだったから。
それで最初はゆりさんへの仕返しのつもりでキーホルダーを盗んだらしい。でも自分を振ったゆりさんもだけど、かっちゃんのことも気に食わなかったみたいで。なんでこんな奴に負けたんだってかっちゃんの事を恨んでたみたい」
好きだったのになんでゆりちゃんにそんな事を...
れいくんがかっちゃんの事苦手に思っているのは態度から薄々分かっていた。性格的にも合わなさそうだし、かっちゃんがああだから仕方ないと思っていた。だけどこれは完全にとばっちりだ。でも...
『でもかっちゃんは何もされてない』
「うん。そこが僕が彼と喧嘩した理由だし、かっちゃんがあんなことをした理由だと思う」
『え...?』
「かっちゃんに直接何かしようとしたところで、敵わないし、気にも止められないから、かっちゃんが大事にしてるユウちゃんに嫌がらせをしたって。
それでっ...それで予想以上に、かっちゃんに効果があったし、更には思いっ切り嫌われて最高だったって言われて思わず殴っちゃった。
ユウちゃんは嫌がらせをされてすごく悲しかったし、苦しかっただろうって僕には分かるし、かっちゃんがどれだけユウちゃんのこと大事にしてるか僕には分かるから許せなかった。
かっちゃんはユウちゃんを傷付けたれいくんを許せなかったんだと思う。僕はクラスが違うから何があったか詳しくは知らないけど、かっちゃんはずっとユウちゃんを見てただろうし、
ユウちゃんの事を心配してたはずだから。
だからねユウちゃん、かっちゃんと仲直りしよ?」
いずっくんが話し終わる頃には私はボロボロ泣いていて、そんな私をいずっくんは優しい表情で見ていた。
『いずっぐん、どうしよう私...わ、たし、かっちゃんに酷いことしちゃった...頬、叩いちゃったし...ぜっごうだっていったしっ...だいっきらいっていった...かっちゃん...すごく傷付いた顔してたっ...許してもらえるわけない...』
「大丈夫だよ。かっちゃんならきっと許してくれる」
『でも...わたしのこと嫌いだって...いなくて清々するって...』
「かっちゃんはそんな風にユウちゃんのこと思ってないよ」
『なんで...分かるの?』
「だってユウちゃんといる時のかっちゃん楽しそうだし、ユウちゃんいないと落ち着かないみたいなんだよね。ユウちゃんが近くに居ないと、ふいに辺りを見たりしてて、探してるんだなーって分かるもん。喧嘩したあとも同じことしてた。だから大丈夫だよユウちゃん」
『明日...学校いって...かっちゃんに謝る...許して...くれるまで...何回もあやまる...かっちゃんとまた一緒にすごしたい...』
「うん。明日謝ろう。許してくれなかったら僕も一緒に謝るから」
いずっくんの優しい笑顔に励まされ、私は家に帰った。言われてみればれいくんの行動は違和感があるものだった。何度言っても、かっちゃんに殴られたことは誰にも言うなと言われた。本人も誰にも言ってないようだった。少し疑問に思っていたが、あれは言えばかっちゃんに真実がバラされるからだったんだ...
突然私に話しかけてくるようになったのは次の手を考えてのこと...
ずっと一緒にいたはずなのに、私はいずっくんみたいにかっちゃんを信じてあげられなかった。
いずっくんよりもずっと彼と長い間過ごしてきたのに...私は彼のこと何にも分かってなかった。
私を守ってくれていた彼に酷いことをした。
後悔とかっちゃんとの思い出がぐるぐるぐると頭を回る。
私は泣き疲れてご飯も食べずに眠った。