映画 ヒーローズライジング
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『のどかな島だと思ったけどヒーローの出番多すぎない!?』
私達1年A組はヒーロー活動推奨プロジェクトの一環として、那步島なる島に来ている。
ヒーローの実務経験をするのが目的なのだが、事務所への電話はひっきりなしにかかってくるし暑いし、まだ昼だというのに疲労がすごい。
「商店街で迷子!手の空いてるヒーロー一緒に」
「断る」
「早!」
「そういう事言うなって爆豪。麗日、オレが一緒に」
「おめーの個性で迷子が探せるか!」
「う...」
『ずっと寝ながら雑誌読んでる人よりはよっぽど頼りになると思いますけど?まあかっちゃんは切島くんと違って悪人面だから行っても迷子が泣くと思うけど』
「ンだとクソチビ!」
『お茶子ちゃん、私も行こっか?』
「三人いれば十分やし、さっき戻ってきたばっかだからユウちゃんは休んでて」
そう言いながら出ていってしまったお茶子ちゃんの背を見送り、机に突っ伏す。
「お疲れユウ!」
『ありがとう切島くん...』
バタバタと忙しなく動いているうちに夕方になり、みんなで休憩していると島の人達が大量に差し入れを持ってきてくれた。
『美味しそうなものがいっぱい...!』
ヒーロー活動は疲れるけれど、感謝の言葉を言われるとやってよかったなと思う。
「あ〜おいしかったあ」
『ね!食べ過ぎちゃって苦しいけど』
「人の優しさが身に染みるな」
「ヒーローをやっててよかったと思える瞬間よね」
「うん」
いずっくん、障子くん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃんとソファに座って話していると奥で何もやっていないからと切島くんや上鳴くん達に宿直を任されたかっちゃんを見え、ざまあみろと心の中で笑う。
「ユウちゃん、私達もお風呂行こっか」
『うん!』
次の日もヒーロー活動はとても忙しく、昨日と同じくバタバタしているうちにすぐ夕方になってしまった。
そしてなくし物を探すだけだからと1人で現場に向かい、解決したはいいが、あちこち探し回って移動したせいで道に迷ってしまった。
全然見覚えない。何処ここ...事務所ってなんて名前の建物だっけ...
どうやって帰ろうか途方に暮れていると爆発音が聞こえ、もしかしてと音のした方へ走る。
『ん?』
予想に反して小さな子供が2人?迷子?いや迷子は私だけど...それと...
嫌な気配がしてじっと目を凝らすと2人の元へとゆっくり歩いていく男の姿が見えた。
あいつは絶対ヤバい。
空間操作を使って近くの岩と入れ替わり、急いで子ども達の前へと滑り込む。
『2人とも早く逃げて!』
対峙した途端に尻尾の毛がぶわっと逆立ち、危険だと体が訴えかけてくる。
走っていった小さな背中を見送り、再び男へと視線を戻す。
『あんたさ、あの子達の親とか知り合いってわけじゃないよね?あんな小さい子達に迫って、もしかしてそういう趣味のヤバい人?とりあえずヴィランってことでいい?』
「知り合いでも趣味でもない。ただその子の個性を貰いに来ただけだ。殺すつもりはない」
『貰うってオールフォーワンの親戚かなにか?殺さないなんて信じられないし、ロリコンショタコンじゃなくても、個性盗みゃ立派な窃盗だろ。ってことでヴィラン確定』
足止めのために煽ったはいいけど、絶対私じゃ倒せないしどうしたものか...
「お前の個性は瞬間移動か?なかなか使えそうだな」
一目散にあの子達を追いかけるってわけじゃないし、それ以外の個性にも一応興味はあるらしい。だとすれば方法は分からないが恐らく私が個性を奪われることはないし、気を引いて時間を稼げるかもしれない。狐火を生成し、男へと放つがビームのようなもので相殺された。
「ほう...瞬間移動だけではなかったか」
『個性奪えるってことは、あんたもどうせ個性1つじゃないんでしょ?』
残りは陣地作成と変身だけど、一対一で同じ場所にとどまらせるのは難しいし、変身も使えない。まあ、つんでるのは最初からだ。
『ここから先は通さないなんてかっこいいこと言えないけど、精一杯足掻かせてもらうよ』
横長な楕円形に陣地作成して狐火で壁を作る。
火力も強度もあるし、簡単には壊せないはずだ。私の退路もなくなるけど...
「なかなかに面白い娘だ」
『そりゃどーも!』
姿勢を低くし、上に向かって拳を振り上げる。次に蹴り。フェイントを入れて再び蹴り。パンチと見せかけて尻尾!
かっちゃんとの特訓のおかげで少し体術もできるようになった。相手が肉体系じゃないのが大きいが、全部当たったし、体感的にはいいのが入った気がする。
「その程度か」
『!』
いきなりの強風に吹き飛ばされ、ビームのような個性を立て続けにくらう。
急所には当たらなかったが足も腕もやられたし、もう狐火で攻撃するくらいしかできることがない。
こちとら光線凌げる機動力も防御力も持ち合わせてないっつーの!
「威勢はよかったがもう終わりか?」
『威勢よかったつもりはないんだけど。ビームどうにかできるくらい強けりゃお前を倒すくらい言ってるって』
「フッ、確かにな」
狐火を乱れ打ちしていると突然大雨が降ってきた。即席で作ったものは火力が弱く、すぐに雨にかき消されてしまう。
『天候を操る個性...』
「半分正解だ」
ゴロゴロと雷の音が聞こえ始め、マズイと思った瞬間、体が誰かに持ち上げられる。
「ユウちゃん無事!?」
『いずっくん!えっと、足と腕ビームでやられたから前線はちょっと厳しいかも』
「早く手当てしなきゃ!追ってこないみたいだしすぐに事務所に」
『ダメ!アイツ子ども2人を狙ってるの!個性奪うって言ってた。森の奥に逃げてると思うから私のことは後回しでその子達の方お願い!』
「子ども2人ってもしかして...分かった!ユウちゃんは壁にしてる狐火全部空に飛ばして安静にしてて!」
『空に?分かった!いずっくん、気をつけてね!』
いずっくんを見送り、言われた通り狐火を空へと飛ばす。
『痛...』
足首付近に当たったせいで踏ん張りがきかない。この状態で歩くのはかなり厳しいだろう。
赤くなっているヒロコスと靴を見て、とりあえず止血しといた方がいいかとポーチから包帯を取り出して巻いていると名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ユウ!怪我してんのか!」
『かっちゃん!なんでここに』
「お前の狐火が大量に見えたからなんかあったんだと思って」
『ああ!だからいずっくん、空に飛ばせって言ったのか』
「はァ?クソデクだァ?怪我したお前置いてどこいきやがったんだ」
『なんで怒ってるの...今子ども達の保護に行ってくれてる。すごい強いヴィランだったから、かっちゃんも早く応援に』
「チッ!こっちにもヴィランが出てやがったか。まずお前をクラスやつらがいるとこに運ぶ。まだ他のヴィランがいる可能性が高え。1人は危険だ。腕以外怪我した場所は?」
私の巻いた不格好な包帯を綺麗に巻き直しながら、じっとかっちゃんは私を見た。
『足首の辺り...』
「靴、脱がすぞ」
私の怪我を見て、かっちゃんは顔を顰めた。
「傷口はちいせえが深えな。血結構出ちまってるし...撃たれたのか?」
『指先から出るビームみたいなのでやられたんだけど、突然強風が吹いたり、雨降ったり、天候を操る個性も持ってて、全然私じゃ太刀打ちできなかった』
「怪我治ったら、また修行な」
包帯を巻き終えた後に私の頭を撫で、かっちゃんは私の前にしゃがんだ。
『うん』
背に乗るとかっちゃんは空へと飛び上がり、私を切島くんと上鳴くんの所に連れていった。
「こいつを安全なとこ連れてけ。腕と足怪我してっから安静にさせろ」
「わかった!」
「任せろ!」
『かっちゃん、気をつけて』
すぐに飛んでいってしまったかっちゃんに私の言葉が届いたかは分からない。でも確かなのは私が彼の足を引っ張ってしまったことと、まだまだずっと遠くに彼の背中があるということだ。
こんなんじゃダメだ。早く彼の隣に立てるようにならなきゃ今までとなにも変わらない。
「ユウちゃん大丈夫?」
「怪我そんなやべえのか!?」
『大丈夫大丈夫!ちょっと考え事してただけ。怪我は場所が悪かっただけで深いけど範囲は狭いし』
上鳴くんに背負われ、切島くんに護衛されながら事務所へと着いたが、事務所には誰もいなかった。
「全員出ちまってるな」
「あちこちで一斉にヴィランが出没してるみてえだから無理もねえ。オレらも爆豪がいなきゃまだ戦ってただろうしな」
『2人とも応援に向かってくれていいよ。運んでくれてありがとう』
「ここにヴィランが来ねえとも限らねえし、動けねえと色々不便だろ?」
「島の人達がここに避難してくる可能性もあるし何人か事務所に居た方がいいっしょ!」
『ごめん、ありがとう』
弱い自分が腹立たしい