映画 ユアネクスト
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ん...』
目を覚ますと私はかっちゃんに抱きしめられていた。
「起きたか」
『あれ...私...』
かっちゃんの指が目元を拭っていく。
そこで初めて自分が泣いていたことに気がついた。
どうして泣いてるんだろう
「ごめんな」
かっちゃんから紡がれた言葉にさっきまでの記憶がフラッシュバックする。夢で最後に見たかっちゃんと今目の前にいるかっちゃんは全く同じ表情をしていた。
『連れ戻してくれたのに、どうしてかっちゃんが謝るの』
「お前はずっと夢の世界にいたかっただろ。こっちの世界にはお前の両親はいねえし、平和な日常もない。幸せには程遠い」
『でもいつかは私のこと夢よりも幸せにしてくれるんでしょ?......あ...それも夢か。い、今のは気にしないで!』
あれは全部私の夢で、つまり全部私の妄想で...
めちゃくちゃ恥ずかしいことを言ってしまった。どうしよう消えたい...
「する。絶対お前のこと幸せにする。だからオレから離れんな」
『うん』
真面目な顔で真っ直ぐ私を見て言う彼は、いつか絶対この夢よりも幸せにすると約束してくれた幼い彼と同じ目をしていて、夢でも現実でもかっちゃんは変わらないなと自然と口元が緩む。
「何笑ってんだ」
『夢でも現実でも小さくても大きくてもかっちゃんは変わんないなと思って』
「...そーかよ。行くぞ。あのパチモン野郎を倒さねえと」
照れているのかそっぽを向いて歩いていくかっちゃんを追いかけて外に出ると、何故かみんなの視線が集まり、そーっとかっちゃんの後ろに隠れる。
「三条が起きた!」
「よかった〜」
状況が読めず、かっちゃんを見ると私だけが夢から覚めずにずっと眠っていたのだと教えてくれた。かっちゃんがいたから戻ってこれたのだと改めて実感する。かっちゃんは私と夢を共有していたわけじゃない。それでも夢の中でも救けてくれたのは確かにかっちゃんだ。
「そっか...心配かけてごめんね」
「で!どうやって起こしたの!」
「やっぱりキス!?」
「キスだよな!」
「これはもう絶対キスだよー!」
「リア充爆発しろ」
『へっ!?』
「そ、そんなことするわけねーだろ!」
「隠すなよ〜」
「正直に!」
「白状しろ〜!」
「ほんとにしてねーわ!何勝手に決めつけてンだ!」
真っ赤になっているかっちゃんが実際したのかしてないのか眠っていた私には分からないが、もたれかかって眠っている私をずっと抱きしめてくれていたんだなというのは、未だに温もりが残っている体と自分からほのかにしている甘い匂いで分かる。
もちろんそんなことは誰にも言えないけれど。
『ありがとう。かっちゃん』
「チッ」
〈救助活動に精が出てるね!〉
「あいつは!」
突如映し出されたダークマイトの映像に全員がザワつく。
〈一つ問おう。新時代を作るには何が必要だと思うかね?そう、破壊だ。過去の栄光、しがらみ、旧態依然たる姿勢...それらを全て駆逐し、新たなる秩序を構築するのだ。もちろんその中にはオールマイトの母校である雄英高校も入っている〉
「なんだって!?」
『何がもちろんだ。触覚むしられろ』
〈まさにスクラップアンドビルド!負の遺産を一掃し新たな伝説が始まる...この俺の伝説がな、フッフッフ〉
「んなことさせっか。委員長ズ!要救助者達を連れて脱出経理を探せ!」
すぐに声を上げ、指示を出すかっちゃんを思わず見る。
「分かった」
「分かりましたわ」
「芦戸、砂藤、溶解液とバカ力は脱出に使える。委員長につけ。切島、上鳴、障子、妨害がきたら排除だ。轟、常闇、デクはオレについてこい!パチモン野郎をブッ潰す!」
いつもと違い、ちゃんとみんなの名前を呼びながら的確に指示を出していくかっちゃんはとてもかっこよくて胸が熱くなる。
「ユウはまだ本調子じゃねえだろうし、八百万と一緒にいろ。そうすりゃ何かあったらすぐ対処してもらえんだろ」
『...うん』
「いってくる」
私の頭を撫で、飛んで行ったかっちゃんを見つめる。
私は勝利を信じて笑顔で送り出してあげられるような可愛い女の子にはなれない。だから目指した。いつでも君の隣にいられるように。まだ私は君に追いつけないけど、ただ待っているだけなんて嫌だ。
『ジュリオさん!私も連れてってください』
「体は大丈夫なのですか?」
『はい!寝たからなのか個性かかる前より良くなりました!』
「キスのおかげではないですか?」
『へ!?いや多分してない...と思いマス』
「早く乗ってください。置いていきますよ」
遊ばれた...
ショックを受けながら、なんのリアクションもせず、何事も無かったようにバイクに跨るジュリオさんの後ろに乗る。
バイクが走りだし、かっちゃん達に追いつくと、かっちゃんが鬼の形相で睨みつけてきた。
「なーーにやってんだクソチビィ!」
『ひぃっ!』
「まだ小さいとはいえ、体も大丈夫みたいですし、戦力にはなるでしょう」
「そういうことじゃねーんだよ、なに付き合ってもねー男に抱きついてんだユウ!」
『しょうがないじゃん!バイクなんだもん!』
「嫉妬深い男は嫌われますよ」
「ああ゙?余計なお世話だわ!つーか下がれやイケモブ!」
「お断りします」
「んだと!」
「お嬢様の個性を一番熟知しているのは私です。それに...私を笑わせるのなら、近くにいないと見られませんよ」
『私もジュリオさんの笑ってるとこ見てみたい!』
「お好きになさってください」
『分かってはいたけど塩...』
闘技場のような場所に着くと壁や地面からスーツを着た怪物が出てきた。
「またこいつらか!」
『数多すぎ!』
全員で応戦するがどんどん湧いて出てきてキリがない。
「ここはオレが引きつける。この暗さならオレとダークシャドウで十分だ。行け!」
「中二か!」
『かっちゃんは小二じゃん』
「んだとゴラァ!」
『常闇くん、ダークシャドウ、本当に大丈夫なの?』
「ああ。任せろ」「マカセロ!」
「常闇くん、気をつけて!」
「行け緑谷!」
「うん!」
常闇くん達と別れ、更に進んでいくと庭園が現れた。大きな柱やアーチがあり、立派な門の先には大きな建物が見える。
そして門の前にデカい男とその肩に乗る小さな老人の姿が見えた。
「緑谷、ここはオレ達に任せて先に行け」
「また中二か!!」
「うん!ジュリオさん行きましょう」
『私もここで。乗せてくださってありがとうございました!いずっくん!またあとで!』
「またあとでねユウちゃん」
「ご無事で」
『うん!』
ジュリオさんのバイクを黒鞭で持ち上げ、二人は塀の向こうへ姿を消した。
轟くんの氷が二人の男を捕らえる。しかし老人の高笑いが柱の上から聞こえてきた。
「確かに氷で拘束したはず」
「なるほど...瞬間移動ってわけか...」
『あのジジイの笑い声腹立つな』
「同感だ。ユウは狐火だけ使え。空間操作は切り札にとっておきてエ。当てれなきゃ意味がねえし、火力上げる必要はねえ。とりあえず戦いながら情報収集だ」
『分かった!』
火力も攻撃範囲もかっちゃんとしょーとくんには到底かなわない。まだ火力を上げる必要もない。私が狐火を使ってすべきことはとにかく数を作ることだろう。あちこち隠して配置できそうな地形だし上手くいけば瞬間移動を出し抜けるかもしれない。
攻撃をしつつ、潜伏用のも作らなくちゃ!
ピキッと氷の割れる音が聞こえ、しょーとくんが石に吹き飛ばされた。
『しょーとくん! 』
「野郎...!」
『このッ!』
かっちゃんの攻撃に続けて狐火を放つ。
当たった!
『デカい方の死角から撃った攻撃は当たる。ジジイが邪魔してこなきゃだけど。個性はデカい方が瞬間移動でジジイが念動力で間違いなさそうだね』
「法則性も読めた。瞬間移動ができるのは自分自身と自分が触れているものだけ」
「移動範囲は肉眼で目視できるとこだけ」
3人で背中合わせになり情報を共有する。
「だったら...」
「その範囲全てを」
「爆破する」「焼き尽くす!」
『私も微力ながら』
かっちゃんが爆破を連射し、轟くんが炎を広範囲に放つ。二人の攻撃範囲に隠しておいた狐火と更に生成した狐火を焚べると凄まじい勢いで炎が燃え盛り、大きくなった。
「やっぱそうするよなァ...!」
瞬間移動で上空に現れた二人を待ち構えていたかっちゃんが爆破する。
落下した二人は轟くんの氷に呑み込まれ、氷漬けになった。
「手間かけさせやがって」
『やったね!ていうか私全然役立ってない...空間操作結局使わなかったし...』
「火力支援してくれたろ」
「法則性が分かったのはお前がむやみやたら色んなとっから狐火撃ってたからだ」
『なにそれ褒めてんの?ディスってんの?』
二人撃破!