映画 ユアネクスト
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「ユウちゃん本当に大丈夫?」
『だだ大丈夫...!個性使えない私はマジでポンコツすぎてゴミだから!いずっくんがすぐ動けた方が絶対いいから!』
流石に3人並んでバイクに乗ることはできず、私は今荷物とともに縛られているわけだが、正直めちゃくちゃ怖い。早く降りたい。
「無理そうだったら言ってね?というかやっぱり代わった方が(かっちゃんに見られたら絶対殺される...)」
『いい!大丈夫!このまま行っちゃってください執事さん!』
「そのつもりです」
『ですよね!』
「(ブレないなこの人...)それで、どこに向かってるんです?」
「先程、ザコ様から拝借いたしました」
ザコ様...丁寧なのか荒っぽいのか分からないなこの人...
「ここが個性の使えない場所ならどこかに物理的な出入口があるはず」
いずっくんが渡された端末を弄ると、岩が移動し、トンネルが現れた。
「どうやらビンゴのようですね」
「なぜ、僕らは襲われたんでしょう?」
「僕らではなく私だと思います」
「え?」
「私がお嬢様を狙っていることを知り、邪魔だと感じたのかもしれません」
「どうしてあなたは」
『ギャー!なにか飛んできた!』
ロケット弾が前方から連続して飛んでくる。
ロケット弾を避けながら爆煙で前が見えない中、トンネルを抜けると大きな岩がいくつもある入江だった。
撃てという声とともにロケット弾が飛んでくる。すると執事さんが走っているバイクから飛び降りた。
『ええええ!?』「ちょ、ちょっと!」
動けない!どうしよう!と青くなっていると、荷物ごといずっくんが救出してくれた。
「そこの男、なぜアンナの命を狙う?」
「お嬢様と約束をしましたので」
「お嬢様...?お前、シェルビーノの手の者か」
「お嬢様にこれ以上個性を使わせないでください。あなた達はお嬢様の個性がどういうものかまるでわかっていません」
『アンナ?お嬢様って?』
「えっとギンジが連れてた金髪のピンク色のスカートを着てた女の人なんだけど、多分ユウちゃんが見た時には船の上にいたかな」
『んー遠くて船の上はよく見えなかったからなあ。でもあの男の人はその人の執事ってことだね』
「うん...」
いずっくんに縄を解いてもらいながら、引き続き執事さんとヴィランの会話に聞き耳を立てる。
「そうはいかない。アンナはボスの理想を実現するために必要な装置だ」
「そうですか。ならば実力を行使させていただきます」
執事さんの身のこなしは流石としか言いようがないが、相手の個性なのか銃弾が通らない。
『いずっくん、あっちは個性使えてるよね?なんで?』
「多分、あの奥にいる男が個性を使えなくする空間を作り出してるんだけど、動かないところを見るに味方の個性を発動させるために自分の周囲にはそれがないんだと思う」
『じゃあテリトリーに入っちゃえばこっちも使えるってことだね』
「うん...!あの人に隙を作れないか聞いてくるから、危ないしユウちゃんは隠れてて」
『わかった』
様子を見守っていると突然バイクがひとりでに走り出し、敵の上に飛び上がると車体の外装が外れ、爆発した。辺りが黒煙に覆われ、目を凝らしていずっくんを探していると、いずっくんの予想通り個性が復活したらしくヴィランが吹っ飛ばされていった。
終わったと安心していたが、銃声が鳴り、慌てて執事さんの見ている上空を見上げる。するとオールマイトに似た男が空に不自然にあるバルコニーからこちらを見ていた。
「見たところ個性を複数持っているようだが、先代の言っていた次を託した者というのはもしかして君かな?」
いずっくんがすぐに蹴りを放つが止められてしまう。
「ヒーローのくせに不意打ちとは」
「お前は何をしようとしている!?何を企んでいる!?」
「言っただろう。なるんだよ、象徴に...この俺ダークマイトが」
「ダークマイト!?」
「オールマイトを超える者の名さ」
ダークマイトの強力なパンチがいずっくんに炸裂する。
『いずっくん!』
吹き飛ばされ、岩に激突したいずっくんを救けに行こうとするがワイヤーを伸ばして執事さんが救けてくれた。
駆け寄ると気絶してしまっているらしく、呼びかけても反応がない。
いずっくんを連れて早く逃げないと。バイクはまだ動くのかな?でも2人を逃がそうにも、いずっくんがやられてしまうような敵なんて私じゃ時間稼ぎにもならない。どうすればいい?どうすれば...
「パウロ...ああパウロ!本当に残念だ」
いずっくんがさっき倒した男が脳無に似た怪物に掴まれ、怯えながらダークマイトと話し始めた。
「生まれ変わってまた必ず俺の下へおいで」
脳無に似た怪物に掴まれた男は地面に現れた穴へ悲鳴を上げながら落ちていった。
仲間じゃないの?それにダークマイトって名前からして全然平和の象徴になる気なくない?もろ敵じゃない?個性も物を作り出す個性なのは間違いないが規模もデカすぎるし仕組みも分からない。こいつ、やっぱり色々おかしい。
「その格好、君もヒーローだね?」
ダークマイトに尻尾を当てようと、振りかぶりながら飛び上がる。
「ワンパターンでつまらないな。不意打ちは当たらないとさっきの少年を見て学ばなかったかい?」
『ワンパターンで悪かったな』
掌を前に出し、即座に巨大な狐火を生成する。
0距離ならしょーとくんには到底及ばないけど、それなりの火力は出せるはず...!
「なるほど。ちょっとは考えてたわけだ」
『チッ!』
防がれたらしく、全然効いていない。
「女の子なんだから、もっと言葉遣いには気をつけないと」
『余計なお世話だわ』
再び狐火を作ろうとしたところで、腕を掴まれ引き寄せられる。
ダークマイトが反対の手で拳を作っているが見え、間一髪砂浜の岩と入れ替わると驚いた顔をした後、ダークマイトが拍手を始めた。
「素晴らしい!これは驚いたよ。もしかして君も個性を複数持っているのかな?そう睨まなくても今ここで君たちをどうこうするつもりはない。少年にも伝えるがいい。この俺の、象徴の偉大さを知り、ともに歩むと決意するまで何度でも挑んでこいとな...」
そう言ってダークマイト達はバルコニーの後ろに現れた扉に消えていった。
『あーもう!ムカつく奴!触覚誰かにむしられればいいのに!』
「落ち着いてください。増援が来るかもしれません。早くここを離れましょう」
『そ、そうですね、すいません...いずっくん大丈夫かな』
「とりあえず荷台に括りつけましょう」
絵面...といずっくんに申し訳なく思いながらバイクに乗せてもらう。
「しっかり掴まってください。危ないですよ」
『えっと、私バイク乗ったことなくて...どこ持てばいいんです?』
「はあ...私に掴まってください」
『え!?』
どう掴まるんだ?と思ったが、そろそろ撃たれそうだと危機を感じて、恐る恐る腰に手を回すとバイクは走り出した。
『速い!ギャー!カーブ怖い!』
「うるさいです。くっつきすぎて暑苦しいです。置いていきますよ」
『静かにします我慢します』
「ん...」
『いずっくん!』
「気がつきましたか?」
「救けてくれたんですね。あり...ありがとう。僕は緑谷出久。ヒーロー名はデクです」
「ジュリオです。ジュリオ・ガンディーニ」
「ありがとうございます、ジュリオさん」
「善意で救けたわけではありません。戦力になりそうだと思ったからです」
放っておくつもりなんてなかった癖にと心の中で思う。本当は優しいのに優しくないフリをして優しさを隠してしまう。誰かと同じだなと笑ってしまいそうになるのを堪える。
「それでも、ありがとう」
「デク...変わった名ですね」
「気に入ってるんです」
「貴方は?」
『え?私?』
「それ以外誰がいるのです。超ガキ様」
『デスヨネ...私は三条ユウ。ヒーロー名はフォックスです』
「フォックス...実に単純明快ですね」
『そうですね...』
通路を抜けると遠くに街が見えた。
『え!?街!?』
「あれは...」
「え?」
『うわぁ...趣味悪』
街の頂上には金色の巨大なダークマイトの像がある。
いかにも怪しいと街に向かうと広場で大勢の人達が赤い花びらとともに倒れていた。
「み、みんな!」
『お茶子ちゃん!』
「気絶してる」
『しょーとくんや飯田くん達まで...』
「一体何が...」
「お嬢様の個性が適合せず、フィードバックを受けたのでしょう」
「お嬢様って確かアンナさん...」
「はい、アンナ・シェルビーノ様です」
『アンナさんの個性って?』
「それは」
ジュリオさんが答えるより早く悲鳴が響き、急いで声の方へ向かうと階段の上で尾白くんが倒れていた。
「尾白くん!」
「お嬢様!」
『!』
アンナさんであろう女の人と一緒にいるあの女はきっとダークマイトの部下だ。あの余裕そうな感じ、きっとあいつも何か強力な個性を持っているに違いない。
「あら、新しい被検体かしら?」
『被検体?』
「お嬢様の個性に適合する人間を増やし、私兵にする」
『私兵...』
「そう、象徴となるダークマイトの下僕になれる。私の個性でね」
予想通りかなりヤバそうな個性だ。でもこの距離じゃ狐火を動かせばバレてしまう。背中で隠して一つ作りながら、警戒して様子を見るしかない。
「お嬢様に洗脳をかけたのはあなたでしたか」
「洗脳じゃないわ。アンナは楽しい夢を見ているの。私の個性は普通1人にしかかけられないけど...このコの個性に適合したおかげで...複数の人間に夢を見せられるようになった...だからね、あなた達にも見せてあげる。おいでなさい、私の世界に...!」