最終決戦偏
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「いつまで寝てんだよ」
『ん...』
「ぽけーっとしてんなバカ!」
『ごめん!えっ...』
夢だったらしく、機材が並んでいるだけで周りには誰もいない。
病院か...私まだ生きてるんだ。
夢で聞こえた子どもの声を思い出す。
救け返されちゃったな...
ぼーっと病室の天井を見つめていると廊下が何やら騒がしくなり、だんだんと意識が覚醒してきた。
かっちゃんと光己さんの声...?
気になって廊下に行くと光己さんの部屋に戻って安静にしろという声を無視し、誰かの病室に入っていった。
そこまで歩く元気がなく、申し訳ないと思いながらも気になってしまい個性を使って聴力を強化させる。
そうか...いずっくん無個性に戻ったんだね。
泣いているかっちゃんの声と慌てた様子のいずっくんの声が聞こえてくる。そして二人を讃えるオールマイトの声。
『...最高のヒーロー』
クラっとして慌てて個性を解き、ベッドへと戻る。
そのまま気絶するように寝てしまい、起きたのは丸一日経った後だった。
体を起こし、昨日のことを考えながら、点滴を眺めているとバタバタと足音が聞こえてきた。何事だと視線を向けた途端に体に衝撃が走り、ギュッとキツく抱きしめられる。
「ユウッ、よかった...」
『かっちゃんも無事でよかった』
「ずっと目覚めねェからスゲえ心配したんだぞ」
『昨日?ちょっと起きたけどね』
「はァ!?起きた!?なんで言わねえんだバカ!」
『すぐまた寝ちゃったし、それに......ごめん、かっちゃん。かっちゃんといずっくんの会話聞いちゃった』
「...そうか」
『かっちゃん。みんな優しいから言わないけど、私は優しくないから言うね。かっちゃんがいずっくんにしてきたことは最低だよ。何やってんだって小さい頃からずっと私は思ってたし、それはちゃんと伝えたはず。でもかっちゃんは何回言っても聞いてくれなかった。かっちゃんが理由なくいじめてたわけじゃないっていうのは2人が喧嘩してた時に聞いたけど、そんなの全然理由にならない。いずっくんは優しいから、今までの事掘り返すような事は言わないし全部許してくれると思う。でも私は簡単に許していいことじゃないって思ってる』
「ああ...」
『その後悔を忘れないで。そうしたら、かっちゃんはもっと最高のヒーローに近付ける。かっちゃんは気付いてるか分かんないけどさ、いずっくんと競うようになってからすっごく変わったよ。前より何倍も強くてかっこよくなった。後悔ってさ、したくないし、何度思い出しても罪悪感に押し潰されるけどマイナスばっかじゃないと思うの。私はかっちゃんに絶交だって言ったことも、かっちゃんを忘れてしまったことも、ずっと後悔してる。でもそれがあったから、かっちゃんのすごさや優しさが分かったし、かっちゃんが傍にいてくれることがどれだけ幸せなことかよく分かった。だからかっちゃんも最高のヒーローに近付くためにその後悔を忘れないで』
「ああ。忘れねえよ」
『かっちゃん』
少し開かれた彼の唇に自分の唇を重ねる。
『私、ちゃんと後悔できるようになった今のかっちゃんのことは全部好き。大好き。約束守ってくれてありがとう』
「〜〜っ!こういう時ばっかほんとズリいな。お前はどんだけオレを好きにさせりゃ気が済むんだ」
『へ!?そんな、私は別にっ!』
私の頬に手を添え、近付いてきたかっちゃんにギュッと目を閉じる。
「勝己!また脱走し、て...」
聞こえた声に思わず入口を見ると、びっくりした顔で固まる光己さんとお父さんがいて、視線の先にいるかっちゃんを見上げると、ブワッとかっちゃんの顔が真っ赤に染まった。
「なに入ってきてンだクソババア!」
「あら〜邪魔しちゃったみたいね。私達のことは気にせず続けていいわよ」
「誰が続けるか!」
入口から私はカーテンで見えないし良かったけどかっちゃんはバッチリ見えちゃってたよなぁ...
「ユウちゃん!やっと目覚めたのね!よかった!安静に動くなって言われてんのに、このバカ毎日ユウちゃんのとこに」
「うるせえババア!」
「あんたの方がうるさい!」
「ってえなクソ!」
「二人とも、ここ病院だから静かに...ね?」
すぐに言い合いを始める光己さんとかっちゃん。それを頑張ってなだめようとするお父さん。小さい頃から変わらない賑やかな爆豪家。
ああ、平和で私の大好きな日常だ。
「ユウ!?なんで泣いて!?」
『よかった...もうかっちゃんがいなくなっちゃうかもって怯えなくてもいいんだよね...やっと日常に戻れるんだよねっ』
「ああ。全部元通りとはいかねえが、連合との戦いは終わった。オレらはちゃんと生き抜いた。これからは普通に学生やってた日常に戻ってく。食いたきゃオムライスもシフォンケーキも作ってやるし、勉強も教えてやる。オレはナンバーワンヒーローになるために、お前はサイドキックになるために授業受けてインターンに行く毎日が戻ってくる。だから安心しろ」
『うんッ』
私の頭に手を乗せ、かっちゃんは眉間にしわを寄せた。
「クッソ...早くお前の涙拭ったり頭撫でれるように手治す」
『かっちゃん動いちゃダメなくらい重傷なんでしょ?手以外も全部治さなきゃ』
「わーっとる。お前はどっか悪くなっちまってたりしねえか?大丈夫か?」
『多分...?まだお医者さんに会ってないし分かんないけど』
「まだ呼んでなかったの!?なにやってんのよ勝己!私呼んでくる!安静にって言われてるんだからいつまでもイチャついてないで部屋戻りなさいよ」
「イチャ!?イチャついてねえわ!」
かっちゃんの反論を聞くこともなく出てった光己さんにそんなイチャついて見えるのかなと恥ずかしくなっていると、ぽんと軽く頭に何か当たる感覚がした。驚いて上を見ると優しく微笑んでいるお父さんと目が合った。
「ユウちゃん、よく頑張ったね」
優しく頭を撫でられ、また泣きそうになってしまう。
『ありがとうございます...』
「勝己もよく頑張った」
「チッ」
幼い頃お父さんに撫でてもらった記憶が朧気に蘇る。もう慣れたつもりでいたが、やっぱり私は両親がいなくて寂しいらしい。
こうして輪の中にいると懐かしい温かい気持ちになって家族みたいだなんて自惚れたことを考えてしまう。
「お医者さん連れて来たわよって、何またユウちゃん泣かせてるのよ勝己!」
「なんでオレだ!」
『ご、ごめんなさい...私が勝手に』
「ユウ。血なんて繋がってなくても結婚すりゃ家族なんだぜ」
『へ!?』
「なに勝己、ヘタレだった癖に言うようになったわね。私はずっとユウちゃんのこと娘みたいに思ってきたけど、本当に娘になってくれたらとっても嬉しいわ」
「今はまだ学生だし、そんなに先のこと言われても困っちゃうだろうけど今だって僕達の事は家族と思ってくれていいからね」
ああ...こんなに幸せでいいのだろうか。私が欲しかったもの。絶対無理だと諦めていたもの。欲張って全部手にしてしまっていいのかな
「退院したら墓参り行くぞ。お前のこと責任もって幸せにするって宣言しとかねえと」
『ははっ、結婚報告じゃないんだからそんな仰々しいことしなくていいよ』
「今度は今みてえに少しは笑えんだろ」
『ふふっ、そうだね』
「あの...診察を...」
『すいません!』
かっちゃん達と別れて診察室へと向かう。
「貴方たちの戦ってる姿、見てました。日本を救ってくれたヒーローがどんな方達なのか気になってましたが、皆さん本当に普通の学生さんなんですね。そんな子達に戦わせて、怪我も完全には治せなくてほんと不甲斐ないです」
『そんな!先生達の力がなければ私なんて多分とっくに死んでますよ!ありがとうございます。かっちゃんが無事でほんとによかった』
「入院中の様子見て、荒っぽいめちゃくちゃな子だなって思ってましたが、彼女さんにはとても優しいんですね」
『いや!えっと、その、かっちゃんは...すいません。ちゃんと先生の言うこと聞くように言っときますね』
「ふふっ、ちゃんと安静にって言っておいてください」
うう...彼女とか彼氏って言われるの慣れないなあ...恥ずかしい...
こんにちは、新しい日常