ゆーあーmyヒーロー
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そしてその日はやって来た
あれから1週間が経ち怪我はだいぶ良くなったものの、ポーチが見つかることはなかった。
「やっぱり見つからない?」
『うん...大切な物なんだけどなあ...どこいっちゃったんだろう』
「そうなんだね。僕も引き続き探してみるよ」
『ありがとう、れいくん』
怪我をしてからというもの、れいくんとはかなり話すようになったし仲良くなったように思う。
それはとても嬉しいのだが、比例するようにかっちゃんの機嫌が悪い時が増えている気がする。
なにかあるのかな?
『かっちゃん何か悩み事でもあるの?』
「ねえわ別に」
『でも最近ちょっと機嫌悪い時多くない?』
「お前が馬鹿だからだよ」
『えっ私のせい?マジかー.....でもですね、突然賢くなれって言われても無理ですよ勝己さん。だから見捨てないでください』
「ハッだろうな。仕方ないから今日も宿題一緒にやってやるよ」
『え?いいの?やったー!』
私の馬鹿さ加減に勉強教えるのが嫌になったのかと思ったが違ったらしい。
というか機嫌良くなったし。なんでだ?謎すぎる。
前からだけど、かっちゃんのスイッチがどこにあるのか私には全然分からない...
放課後になったのでランドセルを背負い、かっちゃんの元へ向かう。
『かっちゃん!帰ろ』
「悪い、お前今日1人で帰れ」
『えっでも.....分かった』
不機嫌なんてものじゃない。静かだけど、すごい怒ってるのが伝わってくる。こんな彼を見るのは初めてだった。こちらを一切見ずに話す彼が何を思っているのか、怖くて聞けず言われるまま私は1人で帰った。
初めて彼を怖いと思った。よく怖くないねと周りの子から言われる事もあるが、私は不機嫌でも怒ってても、彼を怖いと思ったことは今まで1度もなかった。
何があったんだろう。
お昼の時は、宿題やってくれるって言ってたし機嫌も良かったはずなのに。彼が自分で言った事を取り消すなんてことは珍しい。私と別で帰ることだって滅多にない。おかしいことばかりだ。
だけど、とてもでないが何か言えるような雰囲気ではなかった。
1人悶々としながら通学路を歩く。
あっ教科書忘れちゃった。面倒だがないと宿題ができないし戻るしかない。ため息をつきながら学校へ戻る。
下校のアナウンスが流れみんなが帰る中、校舎へ入り教室へ向かう。教室が見えた辺りでドンッと何かがぶつかる音が聞こえ、驚いて立ち止まると声が聞こえた。アナウンスが被ってよく聞こえないが教室の方から聞こえる。
ふざけんな!!突然聞こえた大きな声に急いで教室へ走る。
あの声は...!直後にボンッ!と爆破の音が聞こえた。
辿り着くなり勢いよく教室のドアを開ける。そこで見た光景に絶句する。
傷だらけのれいくんの上にかっちゃんが跨り、胸ぐらを掴んでいる。
『なにやってるの!』
「ユウ...!なんでここに」
『そんなのどうだっていいでしょ!早くれい君からどいて』
びっくりした顔をしながら、かっちゃんは立ち上がった。かっちゃんがどいた途端にれいくんが走って私の後ろに隠れた。
「僕の態度が気に入らないって勝己君がいきなり殴りかかってきたんだ」
『かっちゃん、もう弱いものいじめはしないって約束たじゃん!それにそんな理由で喧嘩する気もない人を一方的に痛めつけるなんて最低だよ。どうかしてる』
「そんな理由?オレはそいつの態度が許せねえ!行動も存在も何もかもが許せねえ!最低なのは」
パーン!と乾いた音が教室に響きわたる。
『最低!見損なった。最近いずっくんにも酷いことばっかり言うし、そんなに弱いものいじめがしたいなら、すぐ近くに私がいるじゃん!保育園でした約束を気にしてるのかもしれないけど、そんなのもういい。かっちゃんとはもう絶交する。だから心置きなく私を殴るなり罵るなりすればいい!』
「お前何言って」
『うるさい!かっちゃんなんて嫌い!大っ嫌い!』
「...そうかよ。こっちだってお前のことなんて嫌いだ。いなくなってくれるなら清々する!」
バーン!っと勢いよく、反対側のドアを開け、かっちゃんは走っていった。
『ごめんね、れいくん』
「なんでユウさんが謝るんだい?来てくれて助かったよありがとう。先生が見回りに来るだろうし早く出よう」
『そうだね、帰ろうか』
学校を出たあと、絆創膏をれいくんの傷へと貼る。
「ありがとう。ユウさんは優しいね。いつも絆創膏持ってるの?」
『うん。よく怪我するから...』
私が怪我をすることももちろんあるが、持ち始めたきっかけは幼なじみの彼だ。最近は減ったが、やんちゃな彼はよく擦り傷をつくっていたので持つのが癖になっている。
『ごめん、絆創膏だけじゃ全然追いつかないね』
「そんな!絆創膏だけでも十分ありがたいよ」
『ごめんね』
「だからなんでユウさんが謝るの」
笑ってそう話す彼の怪我はとても痛そうで、再度乱暴な幼なじみに怒りが湧いてきた。
一方的に無抵抗な人を攻撃するなんて最低だ。
だってヴィランと同じだ。私のお父さんを殺したヴィランと同じ。信じてたのに。嬉しかったのに。
この日、彼への信頼は一瞬にして崩れ落ちてしまった。
彼が何を思っていたかなんて私は知る由もなかった。