最終決戦偏
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「何も考えずに大狐になっとけば勝てたかもしれねえのに馬鹿だな。これで狐女も壊れた。あとはお前だけだ緑谷出久」
「ッ!」
地面に突っ伏したまま動かないユウちゃんの腕は潰れ、周りには血溜まりができている。
怒りを抑えようとするもどんどん溢れ出てきて感情が制御できない。
「耐えろデク!」
「あああああ!」
死柄木に殴りかかろうとした瞬間、死柄木が消えた。
「いてえな...確かに壊したはずなのに化け物かよ」
真下には地面にめり込んだ死柄木とそれを見据える小さな背中が見えた。
あの状態でどうやって?それになんだ?この変な感じ...
『そちに化け物とは言われとうないのう。まあ
、そちがこの娘に憎悪と殺意をもたらしたおかげで妾の力が回復し、乗っ取れたわけだが...ふむ...娘の意思が残っているらしく、そちを倒さねば大狐にはなれぬようだ。まだ器としては未熟じゃが仕方がない。へんげしなくともそちを殺すくらいはできるじゃろう』
「どこのどいつか知らないけど、殺すってそれ本気で言ってんの?」
『本気に決まっておろう』
早い!
死柄木の攻撃を掻い潜り蹴りを入れるユウちゃんの動きはまるで別人だ。しかし足を絡め取られ、掌と足を死柄木の攻撃が貫通する。
「これでもう動けないし遠距離攻撃の火も出せない。残念だったね」
『さてそれはどうかのう』
突然大量の狐火が現れ、死柄木へと襲いかかる。
「クッ!いつの間に火を出しやがった」
『誰が手からしか火が出せぬと言った?怪我など痛覚を遮断すれば割とどうにかなる』
出血はしているし怪我が治っているわけではないってことか?それって体は既に...
「もう戦うのはやめてくれ!それ以上ユウちゃんの体を傷付けないでくれ!」
『もう一人の幼馴染か。この体はもう妾のものじゃ。返すつもりはないし好きに使わせてもらう』
初めて顔を見たが目の色がユウちゃんと違う。味方ではなく敵。体を乗っ取る個性か?いつの間にやられたんだ?まだユウちゃんの意識はあるのか?
「お前は誰だ。ユウちゃんはどうした」
「この状況で楽しそうにおしゃべりとはね!もう抹消はいないんだ。触れたらどうなるか分かってんの?」
「しまっ」
死柄木の手がユウちゃんに触れた。
「ユウちゃん!」
「!?」
『どうした?はよ壊してみせい』
「個性が効かないだと...」
『フン。先の戦いで吸収がキャパオーバーし、使えなくなった代わりにお前に対する耐性を得たらしい。人の防衛本能とはよくできたものじゃな。待たせて悪かったな幼馴染。妾は九尾。体を奪っただけであって、この娘は中には居るはずじゃが、もう意識は戻らんじゃろうし時が経って体が馴染めば娘の自我は消える』
「ユウちゃんに体を返せ」
『娘に戻る意思がないのにか?戻ったとこで自ら死ぬのだから無意味だ。妾を悪者のように思っているようだが、主らが爆破の小僧を死なせたのが悪いんじゃぞ?そのまま無様に死ぬはずだった娘のあいつを殺すという意思を継いでやってるのだから感謝してほしいものじゃ』
「っ!かっちゃんはまだ死んでない!」
『現実を見ろ。既に心臓が止まっている。すぐに悟った分娘の方が賢いな。もう話すことはない。妾はとっととあいつを倒して、あの一族を根絶やしにせなばならん。邪魔をするのなら主らを殺すのが先じゃがな』
「余裕ぶってんじゃねーぞ!」
『面倒じゃ。最短でいくぞ』
死柄木の攻撃を避けずにひたすら攻撃をする九尾の体は血だらけで白衣は真っ赤に染まり、まるで赤い着物を纏っているかのようだ。
「そんな...戦い方...」
体の部位が大きく損傷したり、なくなりそうになった瞬間に体が修復される様はあまりに惨く、目を覆いたくなるような光景だ。
「やめろ!やめてくれ!」
『邪魔をするな』
間に入り、死柄木の攻撃を防いでいると九尾に蹴り飛ばされた。
「グッ!」
なんて威力だ...
『!体が』
カクっと九尾が突然その場に崩れ落ちた。
『クッ...やはり器が未完成では体が力に耐えられぬか』
「攻撃ばかりで勝てるわけないじゃん。ゲームオーバーだ化け物狐」
「ユウちゃんを頼みます!!」
周りヒーロー達に叫び、死柄木とともに棺の外へと落ちる。
これ以上棺で戦いを続ければ空から落下して下の被害はとんでもないことになる。
棺に残された九尾が不安要素だが、さっきの様子からして動けるようになったら周りに手を出すより先に死柄木を倒しにこちらに来るだろう。
九尾の話が本当ならユウちゃんが消えてしまったわけではない。でもこのままユウちゃんが戻らなかったら死柄木やオール・フォー・ワンに並ぶ脅威になる。死柄木を倒したら九尾は言っていた通り一族とやらを殺しに行くだろう。そうしたらヴィランとして戦わなければいけなくなってしまう。相手がユウちゃんではなく九尾だと分かっていても、姿も体もユウちゃんそのものである相手と僕は戦えるだろうか。可愛いくて優しい大切な幼馴染。僕の初恋の人。
いくら救いたくても僕では救うことができない。彼女のヒーローにはなれない。
彼女を救うことができるのはこの世でたった1人のヒーローだけだから。
「かっちゃん...ユウちゃんを救けて...」
口にした願いは誰にも届くことなく空へと消えていった。
お願い...早く目を覚まして