最終決戦偏
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「おいユウ。起きろ」
『ん...かっちゃん...?ぁ...』
そうだ今日は...
「褒美、忘れてねえだろうな」
『へっ!?う、うん』
「そのために頑張ンだから頼むぞ」
『わ、わかった...』
かっちゃんは私の頭を撫でた後ベッドから起き上がった。
「お前は?褒美何がいい?」
『私は...』
何か考えなければ。かっちゃんは私を気遣って言ってくれてるんだから...
そう思うのにいくら考えても一つしか出てこない。
こんなこと頼んじゃダメだ。余計にかっちゃんを困らせてしまう。
明るく送り出せるようなお願いを早くなにか...
「決めらんねえなら後でもいい。じゃあ着替えねえといけねえし部屋戻るわ。お前も不備ねえように支度しろよ」
立ち上がって背を向けるかっちゃんの手を咄嗟に掴んでしまう。
『...死なないで.....私...かっちゃんが生きててくれるならあとは何も要らないっ...だから死なないで.....』
「わかった。約束する。だからお前も死なねえって約束しろ」
差し出された小指に自分の小指を絡める。
初めて指切りをしたあの日以来、約束通り彼はずっと私のヒーローでいてくれた。
だから二度目もきっと大丈夫。そう思ってもやはり不安は消えてくれない。
「大丈夫だ。オレらは1人で戦うんじゃねえ。仲間と一緒に戦うんだ。だから安心しろ。もしオレがピンチになっても誰か助けてくれるわ」
『うん...』
「お前の方には轟がいるから安心だな」
『え...』
「あいつ強えし自ら戦う相手を選んだくれぇだからやり遂げンだろ。多分お前が1番あいつと連携できるし、あいつはお前を死なせるようなマネはぜってえしねえだろうしな」
かっちゃんからそんな言葉が出るなんて夢にも思わなかった。いつも衝突してばっかりだけどちゃんとしょーとくんのこと認めて信頼してるんだ。
目を閉じて全面戦争でのいずっくんやジーニストさんの活躍を思い返す。そしてずっと見てきた私のヒーローの勇姿を。
『うん!かっちゃんの方も強くて頼れる人ばっかりだし大丈夫だね!もちろんかっちゃんも!』
「オマケみてえに言うんじゃねえ」
『イタッ!オマケじゃないよ!強いヒーローは最後には必ず勝つもん!』
デコピンされた額をさすりながら抗議すると、ニッと得意げにかっちゃんは笑った。
「たりめーだろ」
『いずっくんと力を合わせれば救けて勝つ。勝って救ける。最高のヒーローだしね!』
「チッ!...そうだな」
『私は最高のヒーローにはほど遠いけど、しょーとくんと頑張って一緒に救けるために戦う』
「ああ。頑張れよ。お前ならできる」
『うん!』
私の頭を撫でて出ていったかっちゃんを見送り、コスチュームに着替えて集合場所へと向かう。
「みんな頑張ろうな!」
《おう!》
みんなで円陣を組み、持ち場につく。
「轟、ユウのこと頼んだぞ」
「ああ。任せろ」
『私の事はいいから!!かっちゃん、またあとでね!』
「ああ!」
物間くんの作ったワープゲートで移動し、ヴィランをそれぞれ分断する。
私の場所は神野区、彼は天空。こんな離れた場所じゃ彼の勝利と生還を願うことしかできないがきっと彼らなら大丈夫だろう。
『頑張ろ!しょーとくん!』
「おう!」
あれからたったの数分後、お兄さんとしょーとくんが対峙して少し経った頃超巨大な能無が現れ、周りは火の海となった。
「ユウ!体大丈夫か!」
『なんとかっ』
熱くてクラクラするし皮膚がジリジリと焼けるように熱い。
「この熱さじゃ耐熱効果ある体じゃねえと耐え切れねえ。お前は後退して」
『大丈夫。最後まで一緒に戦うよ』
「言うねえフォックス !ま、私たちもショートくんを全力でサポートするし下がっていいぞ!」
エンデヴァーさんのサイドキック3人もしょーとくんのサポート役で配置されているし、私なんて必要ないのかもしれない。でも一緒に戦うと決めた。救けると決めた。戦闘力も経験もバーニンさん達には敵わない。でもしょーとくんと一緒に戦った経験や過ごした時間なら私が勝ってる。私のことを強いと言ってくれた。プロになったらチームを組みたいと言ってくれた。真っ直ぐ素直に伝えてくれる君のおかげでダメなとこばっかりじゃないんだって初めて自信を持てた。だからその期待には応えたい。
『引きませんよ。しょーとくん、正面突破できるよね?』
「ああ!」
『小細工が要らないなら。温存する必要はねえよな』
しょーとくんに変身し、荼毘を見据える。
「相変わらずのじゃじゃ馬だな。その狐女を影武者にでもするつもりか?そいつもう死柄木と戦えねえもんなぁ。親父の肩代わりに狐女のお守り。大変だなあ焦凍」
「勘違いするな。オレは言われたからここに立ってるわけじゃねぇ。オレ自身がおまえを止めたいと思ったから立ってるんだ。ユウと一緒に、ここにいる人達と一緒におまえを止める」
『貴方にはまだ帰れる場所がある。家族全員が待ってくれてる。だからもう』
「ハハッ!声も見た目も焦凍だからスゲえ変な感じすんなぁ狐女。結局この戦争は人対人だ。誰かの命令で物言わぬ兵隊が動いたわけじゃねぇ。各人の思いが一つ一つ暴発していった結果だ。環境を変えたい。壊したい。黙認されあちこちに...蓄積されてきた歪み。超人社会の限界。それがオレ...オレたちだ」
「...生きてたなら何で帰って来なかった...!」
「知りたいか?じゃあ教えてやる。腐っても兄ちゃんだしな。オレが荼毘になった経緯...おまえ以上の熱を絶やすこと無く生きてこられた理由を」
語られる荼毘の過去。ただお父さんにすごいって褒めて認めてもらいたかっただけなのにだんだんと思いがねじ曲がって道を踏み外してしまった。でも愛が憎悪に変わっても根本は変わってない。きっとこの人は今でもお父さんに褒めて認めて欲しい子どものままなのだ。決して家族を嫌ってるわけじゃない。だったらまだやり直せるはず。救けることができるはずだ。でも早く止めないと体が持たない。全部全部焼けてなくなってしまう。
「アレの大切なもの全て焼き尽くす。それがオレの生まれた証だ!!」
「させねえっつってんだろうが馬鹿兄貴!!」
『壊れる前に止めてみせる!』
「オッケーオッケー話してたらテンション戻ってきたわ!聞いてくれてありがとな!父親不在でおまえが相手ってのも冷静んなりゃあいい薪だ!」
「お前はオレが止める」
「...勘違いすんな。オレはおまえにもしっかり思うことがあるんだ」
エンデヴァーさんやしょーとくんと同じ技!
しかもしょーとくんより早い!
「来るぞ!」
『はい!』
大量の炎が辺りに降り注ぐ。サイドキックの人達と共にしょーとくんへの攻撃を防ぐ。
「ショートくんもういけるか!?」
「行きます!」
『しょーとくん!後ろ!』
「一つ聞きてえんだが焦凍...おまえ一体どんな面して怯える市民と一緒に雄英に籠っていられたんだ?エンデヴァーの息子、荼毘の兄弟。厄災の煮凝りみてぇなてめェが!!そういう厚かましさだよ焦凍!」
『しょーとくん!』
しょーとくんが勢いよく吹き飛ばされる。
荼毘の怒りを現すように炎が燃え上がり、肌がヒリつくような熱風が吹き抜けていく。
「最高の環境と最適な身体がありやがるくせに他に縋った!!全てを持って生まれたくせにそう在ろうとしなかった!!誰も言ってくれねぇならオレが言ってやろうか!?フラフラ中途半端の人形が!!!てめェは何者にもなれねぇよ!!!」
「...そうだ...言う通りだよ...遠回りして迷ってばかりの...半端者...それがオレだ。親父の事しか見えてねぇと思ってたよ...!しっかりオレのことも見ててくれてよかった。このワザは自分で発展させた。おまえを止める為の技。半端な弟から...言ってやる!親父はイカレてた!ウチはダメだった!それでも人を焼いたのはおまえの選択だ。これ以上関係ねぇ人たちの命を奪うな!全部オレたちにぶつけろ!そうすりゃ少しは頭ァ冷えるだろ!!」
しょーとくんの攻撃が荼毘に当たり、炎が消える。しかししょーとくんの冷気が切れてしまい、荼毘が再び炎を作り出した。
早くしょーとくんを守らないと!
マグマのような炎が辺りを侵食していく。炎に当たらなくても空気だけで焼けてしまいそうだ。
ッ!しょーとくんの体なのにこんなに熱いなんて...!
「フォックス下がれ!ショートくんの前で氷壁展開!」
『了解です!』
これで多分変身が解ける。だからありったけの力で!!
『グッ!まだまだァ!!』
壁は一瞬で溶けてしまったが、氷の放出を続け炎を相殺させる。熱いはずなのに冷たい。体の内側からどんどん冷えていくような感覚。手も足も感覚がもうない。しょーとくんが自然に行っているのであろう炎と氷の攻撃と体温調整の同時使い。慣れていない私では上手く出来ないし攻撃に全振りしないと間に合わない。
もっとしょーとくんになる練習しなくちゃいけなかったな...
「ユウ!もうよせ!」
しょーとくんの準備が整う頃までなんとか持ち堪えたが変身が解けてしまう。
『お兄さん、絶対救けてあげてね...』
「ああ!」
荼毘に向かっていくしょーとくんの背を見送り、地面に崩れ落ちる。
氷と炎が混ざり合い、しょーとくんの拳が荼毘へと当たる。
「交わるよ。無理にでも。だから、止まってくれ」
辺り一面が凍りつき、荼毘が倒れた。
「荼毘確保ォ!!!」
地面に横たわりながらぼんやりと知らせを聞く。感覚がなく、寒いのかどうかももう分からないが吐いた息が白く、体の震えが止まらない。
「ユウ!!」
ボロボロの姿で膝を着いたまましょーとくんが必死に叫んでいるのが見える。
「三条くん!」
飯田くんに抱きかかえられ、しょーとくんの元へ運ばれる。
「冷えきっていて氷のようだ。早く温めなければ!オレはなにか使えそうな物がないか探してくる!轟くん!三条くんを頼んだ!」
「ユウ!すぐあっためるからもう少し耐えてくれ!」
力なく伸ばされた手が私に触れ、ゆっくり抱き寄せられる。じわじわとしょーとくんに触れている箇所が温かくなり感覚が戻ってきた。
『やったね...しょーとくん...』
「悪い...オレのせいで...!」
『一緒にって言ったじゃん...耐えきれたのはバーニンさん達が威力を弱めてくれたおかげ...だけど』
「三条くん!救護班が持ってた毛布をもらってきた」
『ありがとう飯田くん』
毛布と轟くんの熱で徐々に体が温まり、震えも治まった。
「よかった...やっと体温まってきたな」
『疲れてるのにごめん。多分もう大丈夫だから』
「もう少しこのままでいてくれ。お前になんかあったら爆豪に怒られちまう」
『ふふっ、大丈夫だよ。かっちゃんがね、轟がいるからお前は安心だって言ってた。あいつなら強いしやり遂げるだろって』
「爆豪が?」
『うん!』
「そうか...!強えし新技あいつはちゃんと完成させてたから、もう勝ってたりしてな」
『そうだね!他のエリアは今どうなってるのかな...』
勝利への第一歩