最終決戦偏
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雄英を出て私達はトロイアという名前の建物へと案内された。部屋での荷解きもすぐに終わり、1人だと気が滅入ってしまうので決戦の日のために打ち合わせでもしようかと部屋を出る。
『あれ?飯田くんに切島くんにかっちゃん。珍しい組み合わせだね』
「まあな」
「うむ、確かに珍しいな」
「なんでお前が来ンだよ!」
「オレに用か?」
『うん。どう立ち回ればいいか聞いとこうと思って。足引っ張って轟くんに迷惑かけるわけにはいかないからさ』
「...」
「おお...気合い入ってんなユウ」
「いい心がけだ!オレも見習わらなければ...!邪魔したな轟くん!」
「いや、ありがとな」
「じゃあオレも!おい爆豪、そんな警戒しなくても轟は横取りなんてしねえよ」
「そんなんじゃねーわ!チッ!根詰めすぎんなよ」
『うん』
「ああ」
3人が出て行き、轟くんと2人きりになる。
「ユウ、オールマイトも言ってたが無理すんなよ?キツければ今からだって」
『大丈夫。轟くんはさ、お兄さんを倒すためじゃなくて救けるために戦うんだよね』
「上手くいくかわかんねえけど、そうしてえって思ってる」
『救けるって倒すより何倍も大変だと思うの。だから私が少しでも轟くんの力になれるのなら一緒に戦わせて欲しい。家族の問題だからって轟くんが全部背負う必要はないよ。私じゃお兄さんを救けることはできないからそこは轟くん任せになっちゃうけど、一緒に戦うから!だから、倒すんじゃなくて救けるためのプランを教えて!それか一緒に考えよ!』
「ありがとなユウ。やっぱお前といると元気出る。でもなんでわかったんだ?」
『ヒーロー達で考えられた作戦はあくまで倒すための作戦だけど轟くんは優しいから倒すんじゃなくて救けて家族をあるべき形に戻すための方法をきっと考えてるんだろうなと思って』
「お前はオレのこと家族より知ってるかもな。でもちっとも浮かばねえんだ。だから一緒に考えてくれるかユウ」
『うん!でも馬鹿だから期待はしないで!』
「ははっ、そうだな」
それから時は過ぎ、いよいよ明日は決戦の日だ。明日のためにとみんな早々に就寝となったが、全く寝られそうにない。不安と心配でいっぱいで良くないことばかり考えてしまう。
今夜が最後になってしまうかもしれない。
そう思ったらどうしようもなく会いたくなって、電気も点けず裸足で部屋を出た。
「ユウ?」
『かっちゃん...』
部屋を出てすぐの場所に彼はいた。暗がりの中、近づいてきた彼の顔が鮮明に見えた途端、頬を温かいものが伝っていく。
そんな私を見てごく自然のように涙を拭い、部屋行ってもいいかと耳打ちしてくる彼に頷き、部屋へと戻った。
『かっちゃん、どうして...』
「お前が泣いてる気がした。寝れねえんだろ?一緒に寝てやるからベッド入れ」
『っ...』
向かい合って布団に入り、彼は私の手を握った。狭いベッドの上は暗くてもしっかり彼の顔が見える。
「お前の気持ちは分かってる。けど、お前の望みでも今回は応えてやることはできねエ。オレだってできんならお前には前線に立って欲しくねえけどよ、ちょっとでもプラスになんならオレらは前線に立つべきだと思う」
『うん...』
いつもそうだ。何も言わなくても全部お見通し。
私はちっともかっちゃんの事を分かってあげられないのに...
勝てると信じてもらえてない事を分かってて彼は私を責めるどころか慰めるために私の所へ来てくれたのだ。
「お前が不安になるのは仕方ねえ。他の誰よりお前はアイツの強さを知ってっからな。お前見てりゃ如何に危険で人数いたって簡単に勝てる相手じゃねえって事はよくわかる。でもここで負けちまったら結婚もデートもできねえし勝率はちょっとでも上げとくに限ンだろ」
『へ!?』
「せっかく付き合ってんだからしてえだろ...まだ恋人らしいこと全然できてねえし...」
視線を逸らし、歯切れ悪く言う彼にとても温かい気持ちになる。
『うん...!私ね、またかっちゃんとお買い物したい』
「今度はフリじゃねえカップル割で映画だな。遠出もしてみてェ」
『テーマパークとか行ってみたり美味しいもの食べたりしたい!』
「お前からの本命チョコが欲しい」
『えっ!?が、頑張るね...!またかっちゃんのオムライスとシフォンケーキ食べたい』
「ハッ、こんだけやりてえこといっぱいあんなだからお互い死んでられねえな」
『そうだね』
なんだか頑張れそうな気がしてきた。小さい頃からだが彼は私を慰めるのが本当に上手い。
「戦いが終わったらお前の願いなんでも聞いてやるよ。ゴホウビあった方が頑張れんだろ?」
『ご褒美...』
ふとこの前のお風呂での会話が頭を過ぎる。
『か、かっちゃんっ』
「なんだよ?」
『あの、えっと...ご褒美になるか分かんないんだけど...戦いが終わったら...き、キスしてあげる...』
もう恥ずかしすぎて全身熱いし後半はめちゃくちゃ声が小さくなってしまった。キョトンとした顔のまま何も言わないかっちゃんに変なことを言ってしまったと恥ずかしさが更に増す。
『ご、ごめん!今のはっ』
「それってお前からってことか?」
俯いたままこくこくと首を2回振ると、はあ...と息を吐く声が聞こえた。
呆れられた...布団から逃げたい気持ちに駆られていると、ギュッと握られた手が更に強く握られた。
「俄然やる気出てきたわ。お前が自分からそんな事言うなんてこの先二度とねえかもしんねえし、勝つしかねえな。もちろん口だろ?」
頷き、伺うように顔を見るとニカッと無邪気に笑うかっちゃんがいてドキッと心臓が跳ねる。小さい頃から変わらない私の大好きな笑顔。滅多に見られないこの笑顔が見られるなんて頑張って言った甲斐があった。
「っし!言質は取った。明日がクッソ楽しみになったわ」
わしゃわしゃと頭を撫でられ、抱き寄せられる。
「勝つために睡眠はしっかりとんねえとな」
頭を撫でる手が心地いい。気が抜けたのか協議以降あまり寝れていなかったせいなのかすぐに私は眠ってしまった。
どうか明日も明後日も...