最終決戦偏
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疲れた...
まさかからかうつもりで言った添い寝を本当に実行する羽目になってしまうとは想定外も想定外だった。
オレの手を握り、安心しきった顔で眠るユウは意味がわからないくらい可愛いかったが、意外とまつ毛が長いとか寝息が可愛いとかちょっと空いてる口が色っぽく見えるとか色んなことが頭を巡りすぎてオレは全く寝ることができなかった。ため息をつき、エレベーターを降りると上鳴と瀬呂にバッタリ会ってしまい、あまりのタイミングの悪さに叫びたい衝動に駆られる。
「あ、朝帰りだと...」
「超奥手だったくせに付き合い始めたらイケイケかよ」
「ハア!?ちっげえわバカ!」
「焦った〜もうユウちゃん襲ったんかと思った」
「それな。流石にこの早さはってひくとこだったわ」
「卒業もしてねえのに襲うわけねーだろ!」
「ド誠実」
「素晴らしいな」
上鳴の部屋に連れ込まれ、質問攻めなこの状況にげんなりしてしまう。きっと昨日風呂場で同じような情況になり、逆上せてしまったんだろうなと心の中でユウに同情する。
「つーか添い寝頼むとかユウちゃんってそんな甘えん坊キャラだったんだ」
「超意外だな。でも好きな子にそんなんされたら堪んねえよな〜ぶっちゃけ付き合ってみてどうよ?なんか変化あった?」
「...意味わかんねえくらい可愛い」
「そんなちげえの!?まあ添い寝だもんなあ〜もうキスした?」
「してねえ。多分したらあいつ心拍数上がりすぎて死ぬ」
「なにそのピュアな生き物。そりゃ可愛いわー襲えねえわー」
「すげえ三条、爆豪のこと意識してるもんな。今までなんだったのマジで」
キスに関しては正直オレもまだできるほど余裕がないというか他に関してもあまり余裕がないが言うとイジられそうなので黙っておく。
「あいつ超恥ずかしがり屋だからしばらくあのまんまかもな。イジってあいつ困らせんなよお前ら」
「お前が怖いししねえよ...」
「女子に詰め寄られて顔真っ赤にしてワタワタしてんの見ててなんかもう可哀想だしな」
「でも爆豪もユウちゃんも幸せそうでよかったわ」
「ずっと緊張状態だったけど、お前らのおかげで和んだ」
「...見せもんじゃねェぞ」
こんな時に浮ついたことをなんて言われてもおかしくないこの状況で祝福してくれるのはありがたいことだよなと心の中で思う。
「...ありがとな」
「なんか言ったか爆豪?」
「なんも」
昨夜は久しぶりによく眠れた気がする。ドキドキはしてしまうけど、やっぱりかっちゃんが傍にいるととても安心できる。
「おはようユウちゃん」
『おはよういずっくん!』
「あの...かっちゃんとのことおめでとう」
『へ!?あ、ありがとう...』
「ユウちゃんはすぐ赤くなってて大変そうだけど2人とも幸せそうでよかった」
『あはは...あんな全員の前で言ったら別れられないじゃんね』
「え!?別れる予定あるの!?」
『いや、だってかっちゃんモテるし、私なんて底辺も底辺な人間だからさ...そのうち振られるかもじゃん?』
「それは絶対ないよ。小さい時からずっとかっちゃんはユウちゃんのことしか見てないもん。これからもずっとかっちゃんはユウちゃんのことが大好きで、ユウちゃんのこと幸せにしてくれるって僕が保証する」
優しく、でも力強く言ういずっくんに余計な心配はしなくていいんだとなんだかほっとした。もう1人の幼馴染である彼の言葉は何より説得力がある。
『ありがとういずっくん。今日の探索頑張ろうね!』
「うん!」
散々探したが成果はなく、ガッカリして寮へと帰る。
『これだけ探してるんだから、ちょっとくらい手がかりが見つかればいいのに』
「なかなか難しいね」
「おいユウ、外出ろ。個性の変化をちゃんと調べときてえ」
『そうだね。加減もよくわかんなくなっちゃったし調整しないと』
「僕も行っていいかな?」
「ああ!?ダメに決まって」
『かっちゃんは無視して行くよーいずっくん。私、いずっくんにお願いしたい事があるの!』
あの謝罪はなんだったのだろうか。変わったと思って見直したのに全然ダメだ...
「じゃ、じゃあ狐火から順にいこっか(かっちゃんが不貞腐れてる...)」
『うん!』
不機嫌な顔で少し遠くから睨んでくるかっちゃんを無視し、いずっくんと個性の見直しを始める。今まで通りのイメージで作った狐火は想像よりふた周りほど大きいものができた。
空間操作は変化なし。
『次は』
「陣地作成と吸収は使うな。死んでてもおかしくねえようなダメージ負ってんだ。大丈夫なつもりでもお前の体はまだ治りきってねえ。できるだけ負担がデケえもんは避けろ」
「うん。僕もそうした方がいいと思う」
『分かった。本番前に体壊してちゃ元も子もないしね。で、私が今一番困ってる身体強化なんだけど、いずっくん、個性の出力を制限して使ってるって言ってたから参考になりそうだなって思って。いずっくんみたいに出力最大にしても体が壊れるってことは多分ないけど、ちょっと跳ねるつもりがめちゃくちゃ高く飛んじゃったり、加減が上手くできなくてコツとかあれば教えて欲しいの!』
「なるほどね!僕は力のイメージを電子レンジや卵で考えてたよ」
『電子レンジと卵?あっためちゃダメなのは私も知ってるよ!』
「何ドヤってんだ常識だろ」
「はは... ユウちゃんは多分だけど、ここだけ強化って絞って考えてるから強化した部分が突出しすぎて制御しづらくなっちゃってるんじゃないかな?力を1箇所じゃなくて、全体に満遍なく行き渡らせる事を意識して動けば、全体的に強化されるし力加減もしやすくなると思うよ!」
『なるほど!バランスよくってことね!全体が強化されるし、できたらかなりグレードアップしそうな予感だけど意識しながら動くの大変そうだなあ...それ考えただけで既に頭がこんがらがる』
「無意識にできるくれえ数こなして体に染み込ませるしかねえだろ。決戦までにその段階までもってくのは厳しいだろうが、できるだけ近付けときてえな。おいデ...いずく。こいつに体の使い方教えろ。無個性スタートでセーブしながら身体強化なんてお前とほぼ同じだし、お前が実践してきた事をこいつにやらせりゃバカでも感覚くれえは掴めるだろ」
「わかった...!」
かっちゃんがいずくって言った!デって言ったけどいずくって!
感動して、かっちゃんが言ったことを聞いておらず、話を聞け!と思いっきり頭をはたかれた。
『痛い〜!』
「お前のためにやんだぞバカ!」
「か、かっちゃん!暴力はダメだよ!大丈夫?ユウちゃん」
『痛い...かっちゃんのせいで余計バカになっちゃう...』
「もう手遅れだろーが!」
いずっくんに指導してもらいながら、練習を繰り返しているうちに少しづつ感覚が掴めてきた。
夕飯の時間になり、ご飯を食べた後外に出て自主練を始める。
いい感じ...!
体が軽い。パワーにスピードにジャンプ力。どれも今までと比べ物にならない。
すごい!私の体ってこんなに動くんだ!
このまま続ければ本番前に習得できるかも...!
「今日はここまでだ」
不意にかっちゃんの声が聞こえ、手首を引っ張られた。
『なんで!まだいけるよ私!』
「その汗の量に顔色、無理してんのが丸わかりだ。お前の体は治りきってねえってさっきも言っただろ。体治す方が先だ」
『かっちゃん心配しすぎー全然体どこも痛くないし、不調もないよ?』
「嘘つけ!腕んとこ血ィてんぞ!」
『へ?』
木で引っ掛けたのか腕を見ると確かに血が出ている。でも全く痛みはないし傷口を見ても実感が湧かない。
『ちょっと当たり所が悪かったみたい。痛くないから気付かなかった』
「ったく...焦んのは分かっけど、体が第一だ」
『いっ...?』
デコピンをされたが、いつもと違って加減をしてくれたらしく全然痛くない。
「これに懲りたらちゃんと休め。傷口手当てしたら風呂入ってとっとと寝ろ」
『わかった』
「何不思議そうな顔してんだ」
『いや、懲りたらって加減してくれたから全然痛くなかったし、かっちゃんにしては優しいなと』
「それ本気で言ってんのか?」
『嘘嘘!かっちゃんはいつも優しいよ!』
あー!今めちゃくちゃ余計なこと言った!声のトーン怖すぎる!私のバカーー
「ユウ」
『ごめんなさいー!』
頬を摘まれ、絶対抓られると覚悟を決めるが特に何も起こらない。
「痛くねえのか?」
何もしてないのに?訳が分からず首を傾げると、かっちゃんが目を見開き、私の頬から手を離した。
「お前、何やった?新たな能力かそれ?」
『え?さっきの満遍なく強化する練習してただけだよ?しっぽ増えた感じもしないし』
「それ解けねえのか?ほんとになんにもしてねえのか?」
せっぱ詰まった表情で聞いてくるかっちゃんに不安になる。
『してないけど、何かまずいの...?』
「オレは加減なんてしてねえ。だから多分お前の痛覚が機能しなくなっちまってる。痛みは命を守るためにあんだ。それがなくなっちまったら自分がこれ以上動いたら死ぬって状態でも気付けず動けちまう。だから危険が付き物なヒーローなんて職業には必要不可欠なもんだ。痛みが感じられねえならお前はもう戦わねえ方がいい」
『そんな...ヒーローになるために、かっちゃんのサイドキックになるために今まで頑張ってきたのに、体も元気になったのに...やっと見つけた将来の夢を諦めなきゃいけないの?』
「っ...さっきまでは痛みを感じてたんだ。ちょっとした不調みてえなもんかもしれねえし、明日には普通に戻る可能性も十分ある。そんな深刻に考えすぎんな」
『...うん』
私の頭を撫でた後、行くぞと私の手を引いてかっちゃんは歩き始めた。
なにやってるんだろ私...