全面戦争 編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ただいまと嬉しそうに言う声、ずっと見ていなかったユウの笑顔にまた涙が出そうになる。
『わっ かっちゃんどうしたの?今日は甘えたさんだね』
「ちげえわ馬鹿...」
ユウを抱きしめ、顔を見られないように肩に顔を埋めるとユウはオレの頭を撫で始めた。
静かな時が流れ、撫でられる心地良さに浸っていると、ぐぅーとお腹の鳴る音が聞こえ、ピタリと手が止まる。
「ふ...あはははっ!」
『わっ笑わないでよ!恥ずかしいんだから』
顔を上げると真っ赤になったユウに睨まれた。
「お前らしくて好きだぜそういうとこ」
『むう...いじわる...』
頬を膨らませ、拗ねた顔をするユウをもっとからかいたくなるが、ここで機嫌を損ねてしまうのは良くないし、昨日から何も食べてないであろうユウは空腹も空腹のはずだ。
「悪い悪い、オレも腹減ったし早く帰って飯食おうぜ」
『...かっちゃんの作ったオムライスが食べたい...』
まだ少し拗ねたようにぽつりと呟き、じとっとした目でオレを見てくるユウが可愛いし、そのおねだりの内容は可愛いすぎて反則だと思う。こんなの喜んでいくらでも作るに決まってる。
「 しょーがねーから作ってやるよ。ケーキもな」
『ケーキもいいの!?』
目を輝かせるユウが可愛いすぎて笑いそうになるのを必死で堪える。
「お前、痩せすぎなんだよ。いくらでも作ってやるからとにかく食え!そして太れ!」
『たくさん食べれるのは嬉しいけど、太るのはちょっと...』
「ヒーローは体が第一だろーが!せめて元くらいには戻せ!そんなんじゃスタミナが持たねえ」
『はーい。ご飯楽しみだなあ〜 ぃッ...!』
立ち上がろうとしたユウがふらついて座り込む。
「大丈夫か!お前もしかして足も怪我してんのか?」
『忘れてたけどちょっと刺された...』
「忘れてたじゃねーよ馬鹿!早く背中乗れ」
『ごめん...あっ!かっちゃん背中怪我してるの!?血が』
「お前の血だろ!オレはなんも怪我してねえわ!」
『そっそっか!服汚しちゃってごめん!あ!そ、そうだ!昨日私が噛んじゃったとこは大丈夫なの!?』
「大したことねえわ!はよ乗れ!」
「腕、大丈夫か?しがみつくのキツくなったら言え」
『大丈夫...!飛ぶの速いねかっちゃん』
「速いのが好きならもっと飛ばすか?」
『怖いんで今くらいでいいです.....かっちゃん、救けてくれてありがとう』
「ほんとギリッギリだったけどな。お前の声が聞こえて、やっと見つけた時には、お前もう落ちてる途中だったしあと数秒でも遅かったら間に合わなかった。あのヴィラン達に落とされたんだろ?お前が粘ってくれたから間に合ったようなもんだ」
『...違うの。ヴィランの個性で頭の中に忘れたい記憶がたくさん流れ込んできて、その時はまだ自分の記憶だって実感はあんまりないものがほとんどだったんだけど、辛いことばかりで生きてる意味が分からなくなって、自分で飛び降りようとした...』
「...」
『でも声が聞こえたの』
「声...?」
『小さな男の子の声。オレがお前のヒーローになってやるって。それで思い留まる事ができたの。結局風に煽られて落ちちゃったけど...だから私が救かったのは全部かっちゃんのおかげだよ。いつもありがとう、私のヒーロー』
「ヒーローなんだから救けるのはあたりめえだろ...」
雨も上がり、両手が使えたおかげですぐに学校に着いた。
「説教長ェんだよクソッ!どっかのクソナードと違ってちゃんと戻ってきただろーが!」
『ごめん...完全にかっちゃんとばっちりだ...』
「全くだ!...お前もしかして体調悪いのか?さっきまで虹だって子どもみてえにはしゃいでたじゃねーか」
『なんか頭がクラクラする...』
「お前そーいうのは早く言え!」
保健室で治療をして貰い、足の傷が治ったユウは歩きながらうとうとしている。これは飯を食わすより、寝かせた方がいいか?と考えつつ、寮へ入ろうとするとそれを阻止するが如くユウに腕を引かれる。
『かっちゃんどうしよう!昨日のこともあるし、みんなと顔合わせづらいし、キャラ違いすぎて恥ずかしい!鏡見てないから分かんないけどたくさん泣いて酷い顔してるだろうし!』
「誰もなんも言わねーよ。良かったなって喜ばれるだけだ。顔だって別にそんなもんいいだろ」
『だってかっちゃん、すごい泣きましたって顔してるから私もっと酷い顔してるってことでしょ?あんなに泣いたの何年ぶりっていうか初めてかも...』
「スゲえ泣いてたもんな。お前が声出して泣いてるとこ初めて見たわ」
『その言葉そのままかっちゃんにお返しするけどね。かっちゃんもあんな風に大泣きすることあるんだ』
「全部てめぇのせいだ!」
『理不尽!?』
思い返せば大泣きした時は全部こいつ絡みだ。
火傷させちまった時、あいつが連れ去られた時、記憶を失くした時、戻った時。というか大泣きを除いても、こいつのせいで泣いたことはかなり多い。
こいつの前で泣いた事はほとんどないし、こいつは知りもしないだろうが、改めて考えるとオレはこいつにかなり泣かされている。
「...」
『にゃに!?いひゃいんだけど!』
「なんか腹たった」
『りふひん!』
引っ張っていたユウの頬が紅くなったところで手を離す。
『かっちゃん酷い...ほっぺがヒリヒリする...』
「ほら、行くぞ」
ユウの手を引いて寮へと入る。
背中に隠れるようにして引っ付いてくるユウに懐かしさを感じ、自然と頬が緩む。
「あ!戻ってきた!」「爆豪お前、どこ行ってたんだよ!緑谷がお前は三条を探しに行ったんじゃねーかって言ってたけどそうなのか?」
「ユウちゃんの部屋の鍵が閉まってって、いくら呼びかけても返事がないし、昨日のこともあったから心配になってベランダに行ったら窓の鍵が開いてて...!ってユウちゃん!?」
「なんとか捕獲してきた。触れても大丈夫になったし、記憶も元に戻ったらしいぜ」
『ご、ご迷惑をおかけしました...』
「マジか!戻ったのか!」「良かった!本当に良かった!」「早く捜索に出てるみんなに知らせなきゃ!」
良かった良かったと喜んでくれるみんなに、どう反応していいか分からず、かっちゃんの方を見ると目が合い、かっちゃんは微笑んだ後、私の背中を前へと押した。
さあもう一度始めようか