冬休みインターン編
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「ユウ、お前は持つなら皿1枚と箸だけにしろ!」
『えーー今度は1枚?この前ちゃんと落とさなかったのに!』
「皿割って怒られてえんかてめェ」
『1枚にしマース』
「ていうか、かっちゃんもユウちゃんも知ってたんだ」
『う、うん...』
「オレらのいるところで、てめーらが話してたんだよ」
「聞いてたの!?」
『ごめん!悪気はっていうか私が道に迷ってたまたま...』
「つーかよ〜〜〜客招くならセンシティブなとこ見せんなや!!」
「ああ!いけない、ごめんなさいつい...」
「あ!あの!僕たち轟くんから事情は伺ってます...!」
「オレァ聞こえただけだがな!晩飯とか言われたら感じ良いのかと思うわフツー四川麻婆が台無しだっつの!」
『ちょっとかっちゃん!』
「ごめんなさい、聞こえてしまいました。...轟くんはきっと許せるように準備をしてるんじゃないかな」
「え」
「本当に大嫌いなら“許せない”でいいと思う。でも君はとても優しい人だから待ってる...ように見える。そういう時間なんじゃないかな」
『...っ!』
「おいユウ!どこ行くんだよ!」
『ちょっとお兄さんのとこ行ってくる!』
見えた背中を頼りにお兄さんを追いかける。
『あ、あの!』
「君は...オレに何か用?」
『えっと...あの...話に聞いただけで詳しい事情は分からないし、軽々しく仲良くして欲しいだなんて言いません。
でも...あなたのお父さんは毎日大勢の人を救けて、立派にナンバーワンヒーローを努めてます。
そんなお父さんを少しでも心配したり、誇らしいと思える気持ちがあるなら...お父さんだと思えるのなら、もう少し話しあって思ってること全部言った方がいいと思います。
話さなければ何も伝わらないし、互いに理解することも歩み寄ることもできません』
「うるさい!普通の家庭で幸せに過ごしてきた君に何が分かるってんだよ!」
『...夏さんの苦しみや怒りは私には分かりません。その苦しみも怒りも夏さんだけのものだから。だけど、今のままじゃきっといつか後悔する。
話し合うって死んじゃったら出来ないんです。
どちらかが欠けてしまえば、いくら後悔しても願ってももうできないんです。
エンデヴァーさんにも夏さんにも代わりなんていません。いくら平和であっても明日生きられる保証なんてどこにもありません。
話し合いができるうちに、少しでもいいから話すべきだと思います。せっかく話して触れられる場所に家族がいるのだから...
ごめんなさい偉そうなこと言っちゃいましたね...気にしないでください』
「待っ」
聞こえないフリをしてその場から逃げ出す。
私なんかが何言ってもしょうがないのに...
ここの人達がそれぞれどんな思いを抱えているかなんて分からない。でも本当に大嫌いだってそういう風には見えなかったから...
『会えなくなってからじゃ遅いんだよ...』
「三条はどうして夏兄のとこに?」
「耐えらんねえんだよ、お前ら家族の在り方が 。ほんと嫌なとこばっかり見せてくれやがって」
「ちょっとかっちゃん!そんな言い方!」
「あいつにはもう家族がいねえ。父親はヴィランに殺され、母親は突然亡くなっちまった。兄弟はいねえし、祖父母はユウが生まれる前に既に亡くなってる。天涯孤独ってやつだ。
いくら家族が恋しかろうが、絶対にもう会えねえ。話したくても、慰めて欲しくても、救けて欲しくてもそれは二度と叶わねえんだよ。
そんな奴の前で...
家族はいて当然のもんじゃねえ。死んだら後悔したって何したってもう遅えんだ」
『ごめん、戻った〜って...あれ?何この空気...なんでこんなシーンとなってるの...?』
「遅えわバカ」
「ユウちゃんおかえり」
「なんの事情も知らずに、ごめんなさい三条ちゃん」
「嫌なとこ見せて悪かった...」
『え、何?何この状況?』
「お前に家族がいねえなんて知らなかった。嫌な思いさせちまって悪い...」
『あー...そういう事ね。家族ごと事情も色々あるししょうがないよ!ちょっと気まずい空気にはなったけど私は全然気にしてないし!それにこっちこそごめん...詳しく事情も知らないのに、お兄さんに偉そうなこと言っちゃった』
「ううん。きっと三条ちゃんの言ったことは間違えてない。夏はね...」
『お兄さんが...何も知らずにごめんなさい...』
「いいのいいの!気にしないで!」
「そろそろ学校に送る時間だ」
仲の良かったお兄さんのことエンデヴァーさんが殺したと思ってるなら許せないし、ああいう態度になるのも仕方ない。むしろちゃんと同じ席についてくれただけでもすごいことだと思う。
はあ...ほんと偉そうなことばっかり言ってしまった...
「ちゃんと暖かくしとけ。風邪ひくぞ」
『ありがとう...』
「...きっとお前が言ったことは無駄じゃなかったと思うぜ」
自分でやった時とは違う綺麗に巻かれたマフラーに顔を埋める。
『...前から思ってたけど、かっちゃんってマフラーの巻き方は上品だよね』
「ンだその言い方ァ!喧嘩売ってんだろ!」
『イタッ!いやなんか可愛いなと思っただけで!』
「何が可愛いだクソが!」
『いった〜い!暴力反対!』
「爆豪、暴力はよくねえと思うぞ」
『流石轟くん!』
「みんな!冬美さん達を外で待たせちゃ悪いから早く行かないと...!」
『ごめんごめん!』
「学校のお話聞くつもりだったのにごめんなさいね」
『いえいえ!美味しいご飯ありがとうございました!』
「ごちそうさまでした!」
「四川麻婆のレシピ教えろや」
『かっちゃん!竜田揚げ!竜田揚げも!』
「オレに言うな!」
『だって私作れないもん』
「オレのラインに送ってもらうよ」
「ふふっ 本当に二人は仲がいいのね。頑張ってね焦凍」
「?おう」
「緑谷くん、焦凍とお友達になってくれてありがとう」
「そんな...こちらこそ...です!」
体育祭の2人を思い出して自然と頬が緩む。
きっといずっくんは気付いてないけど、いずっくんは轟くんのヒーローなんだよ!
「何ニヤニヤしてんだよ。きもちわりぃ」
『気持ち悪いは酷くない?あーあ、私のヒーローはなんでこんなに優しくないんだろ』
「優しくなくて悪かったな!」
『あれ?聞こえてた?』
「何しらばっくれてんだ!完全に聞こえるように言ってただろーが!」
『痛!...くない?あれ?』
完全に殴るモーションに入ってたのになんで?
バッとかっちゃんの顔を見ると、途端にそっぽを向かれた。もしかして...
「もしかして、優しくないって言われたから気にしてる?」
ビクッと肩を揺らし、そっぽを向いたまま何も言わないのでどうやら図星らしい。
あの一言を気にして、すんでで止めたの?
『も〜〜!かっちゃん可愛いすぎ!』
「!?な、なな何抱きついてんだてめえ!!」
『だってあんな一言を気にする、かっちゃんが可愛いくて』
「か、可愛いとかバカにすんな!つーか早く離れろ!」
『むぅ...そこまで嫌がられるとちょっと傷付く...』
「べ、別に嫌ってわけじゃ...」
『ほんとに?』
あまりの嫌がりように、ちょっと罪悪感とショックを受けていた私は嘘じゃないか心配になり、かっちゃんの顔を覗き込む。
「〜〜〜ッ!ちけーわ馬鹿!!」
『痛い...』
もう気にするのはやめたらしく今度は殴られた。騒いだからなのかかっちゃんの顔が赤い。
「そういうことぜっっってえ他の男にやるなよ!」
『やらないよ〜恥ずかしくて、かっちゃん以外になんて絶対できない』
「クソが!」
『やらないって言ったのに何故!?』
かっちゃんの考えてることは時々よく分からない。殴られるのはしょっちゅうだし、口も態度もとにかく悪い。でもいつも救けてくれるし、本当はすごく優しい人。
なんでもできて強くてかっこよくて時折可愛いヒーロー
やっぱり私のヒーローが1番!