全面戦争 編
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「痛っ!!」
「あーー!!起きたぁ!!」
「うるせぇ どこだここ!!」
「セントラル病院。最先端最高峰の治療を受けられる病院だよ」
「つーかマジ良かったマジで一番ヤベエって聞いててオレさァもぉさあ!!」
「私看護師さんに伝えてくる」
病院...なんでこんな怪我......
!!
「ユウはどうなった!?デクと轟は...先生、先輩は エンデヴァーは...事態はどうなった?」
「轟もみんなもだいたい意識は取り戻したんだけど...緑谷は一向に起きる気配がないって...あと三条は...」
言葉をつまらせ、暗い表情をするクラスの奴らに、もしかしてと不安が過ぎる。
「なんだよ...死んでねえよな...?なあ!?」
「死んではねえけど...いつ死んでもおかしくねえって...
今生きてることの方が不思議だって先生は言ってた...
だから心の準備だけはしとけって...」
「っ!」
「だー動くな死ぬって!動かすなって言われてんだよ!!」
「死んだら許さねえ!」
心の準備ってそんなもんできるわけねえだろ!
ユウとデクがいなきゃきっと事態は収束しなかった。
じゃあオレは何をした?何を...!
「なんでオレが起きててめーらが寝とんだぁ!!」
あれから2週間、デクは目を覚ましたがユウは目覚めないままだ。名医、強力な回復系個性を持った者、あらゆる奴らが力を尽くし、ユウは一命を取り留めた。心の底から安心した。貢献してくれた奴ら全員にお礼を言いたいくらいだった。だがふと、廊下で聞こえた声に現実を突きつけられる。
「これであの化け物がまた現れてもなんとかなる」
「気が早いぞ。まだ目覚めてすらいない。奴が再び動き出す前に、全快といかずとも戦えるまでにはなってもらわないと」
「それまで俺たちは休みなしっすか」
「ちゃんと睡眠時間や飯の時間は確保されてるだろ。文句言うならお前があの化け物と戦うか?」
「嫌に決まってるじゃないすか。冗談キツいっすよ」
「ならあの少女が早く回復するよう頑張るんだな。平和のためにも、自分達が生き抜くためにもな」
んだよ...そういうことかよクソッ!
死柄木を撤退させるまで追いつめ、たくさんのヒーロー達や周囲の住民を救ったユウを救おうと必死に頑張ってくれているのだと思っていた。でも違った。
周りを救ける為に死にそうになってまで戦ったのに、また戦えって言うのかよ...
必死に生きようとしてる奴に、目覚めたら大勢を救う為にまた犠牲になれって、死ねって言うのかよ!
「ふざけんな...」
きっとものすごく怖かったはずだ。狐化も範囲の広い陣地作成も多大な代償が必要だとあいつは身をもって知っていた。しかもオレの怪我を吸収した後だ。痛くて苦しくて、そんな状態で技を使えばどうなるかなんて分かってたに決まっている。
ユウはデクとは違う。
自分が勘定に入ってないわけじゃない。以前はその傾向にあったが、今は違う。躊躇なく自分の命を差し出せるようなやつじゃない。死ぬのが怖い普通の人間だ。無個性のただの女子高生だ。
なのになんで...なんでだよ...
「大丈夫か?」
「ミイラみてえになってるし声全然出てねえぞ。お前こそ大丈夫かよ」
「ああ。爆豪はまだ部屋出んなって言われてんだろ?そろそろ戻らねえとまずいんじゃねえか?」
「お前だって消灯時間すぎてんだろーが。ユウが死の淵さ迷ってるってときにのうのうと寝てられっかよ。
ユウをああさせちまったのはオレだ。いつもオレのせいであいつは...
何が守るだ。何がヒーローだ。なんでオレが無事でユウが死にそうになってんだよ......」
「爆豪のせいじゃねえ。三条の負傷はあの技を使わせちまったオレら全員の責任だ。それになんでオレがなんて言うなよ。お前に生きて欲しいって身を削って救けたあいつの行動を間違いだったみたいに言うなよ...!」
「.....悪い」
「似てねえってあいつには言ったけど、爆豪と三条って似てるんだな。互いが互いを思うばっかりに自分のせいで相手が傷付いた。傷付くって思ってる。
でもそうじゃねえ。爆豪も三条も互いが自分より大切で傷付いて欲しくねえからそう思っちまうだけだ。ここで爆豪があいつから離れようとしたり、今までの関係を壊すような事をすれば、それが何よりあいつを傷付けることになる」
「...エスパーかよ気持ちわりィ」
「あいつならそう考えそうだって思っただけだ。やっぱり似てるなお前ら」
「あいつと似てても全然嬉しくねえ」
「フッ 多分三条もそう言うだろうな」
「あれ?かっちゃんに轟くん...2人も来てたんだ」
「部屋には近付けねえし、この窓からしか三条の病室見えねえからな」
「夜でも人の出入りが激しいね。でもだいぶ回復傾向にあるって今日看護師さんが言ってたよ」
「そうか。これだけの人達が見ててくれりゃ安心だな」
「そうだね!」
「死なせるわけにはいかねえからだろ。現状死柄木に対抗できるのはユウだけだ。切り札を何としても生かしておきてえんだろ」
「おい爆豪!」「そんな言い方...!」
「そういう目でしか他の奴はユウを見てねえ。きっとユウは目覚めてからも辛えことばっかりになる。オレ一人じゃあいつを守れねえ。だからお前らにも頼む。ユウを守ってくれ」
「かっちゃん...うん!3人で守ろう!」
「ああ。三条がもう戦わなくてもすむように、オレらも強くならねえと」
あれから4月になり、デクはワンフォーオールの秘密をクラスの奴らに手紙で伝え姿を消した。
「約束しただろバカ...」
ヒーローの数は減り、世間は怒りも不満も不安も全てヒーローにぶつける。
嫌な空気だ。この状況が既に奴らの思うツボな気がして腹立たしい。
命を落としたヒーローも大怪我をしたヒーローも大勢いる。それなのに、これではあまりに報われない。
だからデクは一人でどうにかしようと躍起になってる。でも一人じゃダメだ。そんなの犠牲がユウからデクに変わるだけのただの再演だ。
ユウを守るっつっても、そんなのユウは望まねえし、悲しむに決まってんだろ。どうしてそれが分かんねえ...誰も欠けずに完全勝利しなきゃ意味がねえんだよ...
今にも降り出しそうな暗い空は今の日本を表しているようだった。
ユウに会いたい。ユウが傍にいてくれればこの暗く、重い気持ちも晴れるような気がした。また立ち上がって前に進める気がした。
そんな事を考えていたらオレの足は病院へと向かっていた。病院に行ってもユウの姿を見ることはおろか部屋に近付くことも出来ない。それでも僅かな希望を胸に病院へと足を進める。
「悪い!どいてくれ!」
病院の中は何かあったのか慌ただしく人が動いている。
「例の子が目覚めたって大騒ぎですね...」
「先生達がみんな行っちゃったせいで、他の患者さんの診断とか治療とか全部遅れてるんですよ!もう!」
看護師達の会話が聞こえ、ユウの病室へと走る。
きっとユウの事に違いない。
「ちょっと君!ここから先は」
怒られようがなんだろうがどうだっていい。ひと目でいいからあいつに会いたい。
止めてくる奴らを振りは払いながら病室の扉を開く。
「ユウ!!」
微かな希望