全面戦争 編
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「これはまだ極秘だが、数日後、日本中のヒーローを集結させ、ヴィラン連合...超常解放戦線の一斉掃討が行われる。そこでお前に死柄木、ワープ持ちが潜伏していると思われる病院で援護を頼みたい」
『え...』
「お前の空間操作の個性が奴の捕獲に役立つとの見解だ。オレとしては生徒をそんな危険な場所に行かせたくないんだが、周りが聞かなくてな...申し訳ないがほぼ決定事項だ」
『私なんかが役に立てるとは思いません。きっと足を引っ張ってしまう...
私のせいで誰かが傷付くのも危険な目に遭うのも嫌です』
「お前はまだ子供だし、ヒーローとしても未熟だ。フォローや守る事は必須になる。だがそんな事全員百も承知だ。それに、危険だと判断した場合はお前にはすぐに、後方の避難誘導のグループの方へ行ってもらう事になっている。頼まれてくれるか?」
『...はい...』
「ありがとう。掃討までの数日お前にはオレの個性を扱えるよう訓練に励んでもらう。1度しか使えなくても使えて損は無い力のはずだ」
『で、でももしかしたら真似出来ない個性かもしれないですし、失敗してしまうかもしれないので宛にされても困ります...
私はかっちゃんやいずっくんみたいな運動能力も冷静に判断や対処できる力もありません...』
「そこは心配しなくていい。お前の役割は敵が逃亡した時に空間操作で邪魔をする事だ。エンデヴァーとオレ以外のヒーローはお前が姿だけでなく個性も真似できる事は知らない。
お前に抹消を扱えるようになってもらいたいってのはオレ個人の考えだ。お前の身が危険に晒された時、役立つかもしれないからな。お前への保険ってとこだ。作戦には一切無関係ない」
『良かった...私も先生の個性はとても強力だし、使えるようになりたいです。訓練よろしくお願いします』
先生がああ言うって事はかなり危険で重要な任務という事だ。少しでも成功率を上げる為に私みたいな半人前も起用するという事は失敗は許されず、絶対何としても捕らえる必要があるという事。
私の空間操作は1度使えば5分は同じ物と入れ替われない。陣地作成をすればそれは解消されるが、病院丸ごとなんて範囲絶対に無理だ。できて病室2個分が限界な現状、逃げようと動き回る敵にはまず使えないだろう。
そもそも明確に全体の形を捉えられなければ入れ替われない。見慣れた仲間ならともかく、動き回る敵と入れ替わるのはなかなか難しい。
かっちゃんくらい動体視力が優れていれば、容易いかもしれないが私にはそんな力はない。
みんなみたいな度胸も勇気もない私がそんな場所で何が出来るの...
「お前、この前はなんにもって言ってたが、やっぱりなんかあっただろ。最近よく先生に呼び出されてるし、それもなんか関係あるんじゃねえか?」
『...鋭いね。今先生の個性が使えるようになる為に訓練して貰ってるの。それがなかなか上手くいかなくて...
先生に訓練のこと周りには内緒にしろって言われてるから、内緒にしててね?』
「そういうことかよ。まあ抹消はかなり使える個性だしな。でも周りには内緒って授業ででも使うのか?」
『それは分かんないけど...』
「まあ個性の事とかでなにかあったとか、悩み事じゃねえならいい。頑張れよ」
『うん。ありがとう』
なんとか誤魔化せたかな...言ったことも嘘ではないし多分大丈夫だよね...?
近い内に一斉掃討があってそれの前線に私が出るなんて、かっちゃんには絶対知られちゃいけない。
それを知ったらきっとかっちゃんは...
かっちゃんを危険な目に遭わせたくない。
.....それなのに気付いて欲しいなんて心の隅で思ってしまっている自分がいる。
本当に私は弱虫で約立たずで救いようのない人間だ。
『私なんて大嫌いだ...』
「行くぞ三条」
『はい』
「爆豪やクラスの奴らにお前の配置は教えていない。合流する時は無線でバーニンを頼れ。オレや他の誰かが逃げろと言ったら、他のヒーローや道具を空間操作の対象に使って最速で後方の他の奴らと合流しろ。もしもの時の為にオレの個性はできる限り取っておけ」
『分かりました』
先生やエンデヴァーさん、こんなに大勢のヒーローに囲まれているのに、私の不安と恐怖はどんどん大きくなっていく。
「行くぞ」
エンデヴァーさんの声とともに一斉にヒーロー達が病院へ入る。
「塚内警部!エンデヴァー!こちらです!」
「貴様か。脳無の製造者...オールフォーワンの片腕。観念しろ悪魔の手先よ!」
エンデヴァーさんの見据えた先にいるのは眼鏡をかけた小柄な老人。叫び声を上げ逃げようとするも転倒し、先生に個性を使われると驚くことにその姿は更に年老いていき、その姿はまるでゾンビのようだ。
あの人が...
「今この病院の人間全員を退避させてる。脳無との戦闘に備えてな。だが無血制圧できるならそれに越したことはないだろ?特定の人間の指示でしか動かないよう脳をプログラミングしている事。指示がなければ脳無はただの遺体である事。これまでに捕らえた個体を調べて分かったそうだ。弄んでは捨ててきた数多の人が言ってんだ。次はこっちが奪う番」
「いやじゃ...!!!堪忍しておくれ!!!」
先生に捕縛され、ほとんど骨と皮だけのようなこんな状態では逃げ出す事は到底不可能だろう。
だけど本当にこれで終わり?予期せぬ侵入だったにしてもこんなにあっさり...
!!この尻尾の毛が逆立つ感覚は...!
『警戒を!なにか来ます!!』
言い終わったと同時くらいに壁が崩れ脳無が現れる。
急いで後退し、再び老人をみると蝋人形のように溶けていた。
「トゥワイスの個性...!?」
『偽物...』
「来たぞ!脳無だ!」
「クソ!数が多い!」
「落ち着け!単体単体ではあまり強くない」
「これくらいはいけるなフォックス!」
『はい!』
確かに私でも倒せるくらい個々の力は強くない。
時間稼ぎか腹立たしい...!それなら一気に!
『エンデヴァーさん、脳無が出てきた方角にきっと奴らはいますよね?』
「恐らくな!」
『なら一点突破しましょう!私が補助するので炎をお願いします!』
「分かった!」
『狐火!火炎!』
熱を上げた狐火を道を埋め尽くすように大量に配置する。
『お願いします!』
「行くぞ!」
通路を埋め尽くすように炎が駆け抜けていく。大量にいた脳無は消え焦げた炭だけが残った。
「すごい...!一瞬で...!」
「この機を逃すな!行くぞ!」
「よくやったフォックス。以前とは比べ物にならないくらいの成長だ」
『狐火の火力が上がったのも、応用が効くようになったのもショートくんのお陰です』
「そうか...行くぞ!やつらが現れた道、ここを通れば近道だ!」
『ここにも大量の脳無が...!』
「何してるクラスト!!」
「エンデヴァー!!再生能力が厄介なんだ!」
「大丈夫です。俺が消します」
「三条はオレとクラストの後ろに行け!」
『はい!』
マイク先生とクラストさんの後ろから狐火で援護をするが手応えがまるでない。
個性が消えてる筈なのにさっきの脳無より格段に強い...!
「逃げた!素の身体能力でこの疾さか!」
あの脳無すごい嫌な感じがする...強いだけじゃなくてなにか
「っ!!」『!?』
何が飛んできたか全然分からなかったが、すごい速さと威力だ。クラストさんが守ってくれなかったら死んでたかもしれない...
「三条!できるだけ戦闘は避け、急いで外に出てバーニン達と合流しろ!」
『でもまだ捕獲が...』
「警告や戦闘、十分すぎる成果だ。よくやった!」
「フォックス!死柄木とオールフォーワンの片腕は俺達で絶対捕える!現状をバーニンに伝えろ!頼んだぞ」
「行け!!」
『っ...!ご武運を』
エンデヴァーさんと先生が開いてくれた道を走り、次々現れる脳無と入れ替わりを繰り返し、外へと抜け出す。
私がいても足でまといになるだけだ。早く応援をお願いに行かなきゃ...!
「あの麓にヒーローたちがいる!我々は後方で住民の避難誘導だ!」
「どうして三条だけ別配置なんですか?」
「フォックスの空間操作の力を借りたいって意見が会議で出たらしくてな。そっちにいる!」
「もしかして、前線ですか...?」
「...私も詳しい場所は聞いてないが、流石に前線じゃないだろ!それに例え前線でもあいつ結構強いし!だから心配すんな!」
「...」
アホズラは、自分とカラスは前線に出るのだと言っていたが、ユウの事は何も言っていなかった。だから前線ではないはずだ。
...だが、後方で空間操作が欲しいと思う場面ってなんだ?
「ほらバクゴー!ボーッとしてんな!」
「わーっとっるわ!」
刻一刻と時は進む