ゆーあーmyヒーロー
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次の日学校に行くとゆりちゃんが泣いていてクラスは大きくざわついていた。
理由を聞くにゆりちゃんがとても大切にしていたくまのぬいぐるみのキーホルダーがなくなってしまったらしい。
ゆりちゃんがそのキーホルダーを大切にしていたことはクラス全員が周知していることで、みんなで探し回ったが結局その日キーホルダーは見つからなかった。
ゆりちゃんがキーホルダーを付けていた鞄は常に教室に置かれているもので、どこかに落とすなんて事はありえない。
誰かが盗んだとしか考えられないと次の日すぐに犯人探しが始まった。
嫌だなあこういう空気...みんながみんな疑いの目を向けクラスの空気がギクシャクしている。
クラスを見渡すと言い合いをしている人達、コソコソと何か話している人、朝から空いたままのゆりちゃんの席が見えた。
その後方では、かっちゃんが退屈そうにあくびをして頬ずえをついている。
いつも通り周りのことなんてどうでもいいといった態度の彼に思わずくすりと笑ってしまう。
流石かっちゃんだなあ。かっちゃんを見て少し和んだが、クラスの空気に耐えられず気分転換をしようと教室を出た。
「ユウちゃん!」
『あ!いずっくん!』
思わぬ幼なじみとの遭遇に心がぱっと明るくなる。
「ユウちゃんがこんな所にいるなんて珍しいね。この先図書館しかないのに...何かあったの?」
『いずっくんなんか酷い』
「え!?ごめん!」
もう1人の幼なじみと違って、一切悪気はないのであろう彼の発言に少しほっこりしながら私は事情を話した。
「そっか、それは大変だね...その話僕も噂でちょっと聞いてたんだけど、聞いていた以上だったよ」
『他のクラスにも話が広がってるんだ...早く元に戻って欲しいんだけど、見つかるまで無理だよね...本当に犯人なんているのかなあ...』
「分からないけど、僕にできることがあれば何でも言って!
話を聞くことくらいしか僕には出来ないと思うけど、少しでもユウちゃんの力になりたい!」
『ありがとういずっくん!なんかヒーローみたいだね』
「えへへ」
照れくさそうに笑う彼が可愛いくてなんだか元気が出た。
気分転換になったし帰ろうと来た道を戻っていくと教室が何やら騒がしい。何かあったのかな?急いでドアを開けると教室が静まり返り一気に視線が私に集まった。
視線に耐えられず、すぐに席へ戻ろうとすると、誰かにガっと腕を捕まれ止められる。
「お前が犯人だったんだな!」
『え?何、何の話?』
突然怒鳴られ何が何だか分からず混乱しているとバッと目の前にくまのキーホルダーを見せられる。
「お前の引き出しから出てきた。人の物を取るなんて最低だな」
『そんな!私とってないよ!』
「言い訳すんじゃねえ!」
「引き出しから出てきたのに、違うわけないじゃない!嘘吐き!」
どんどん私を責め立てる声が増えていく。でもそんなはずない。盗んでなんていないし、さっきまで引き出しにそんな物は入っていなかった。だけどこんな状況で何を言っても誰も信じてくれるはずない。
『本当に私は盗んでない...』
責め立てる声がやまない。俯き泣きそうになるのを必死に我慢する。
どうして...だって私は盗んでない...盗んでないのに...
ガラガラっと教室の扉が開く音がする。
先生が来たのかな...嫌だな...先生もきっと私を...下を向いたままワンピースの裾をギュッと握る。
「何やってんだお前ら」
聞こえてきたのは幼い頃からよく聞き慣れた声。
その声を聞いて私は更に追い詰められる。
かっちゃんに嫌われる...かっちゃんにだけは嫌われたくない...かっちゃんにまで責められたら私...
「アイツがゆりちゃんのキーホルダー盗んだんだ」
クラスの男の子がそう言うと、周りの人達も同調するように話し始めた。
「うるせえ!」
彼が叫ぶとぴしゃりと教室が静かになった。足音が私の方へと近付いて来る。
どうしよう逃げたい...何も聞きたくない...!
しかし縫い付けられたように足が動かない。彼の足が見え、私の目の前で止まる。俯いたままぐっと目を閉じると、頭にぽんと手を置かれた感覚がした。驚いてびくっと体を揺らし目を開くと彼が近付いて来る気配がした。
「ユウ、お前が盗んだのか?」
耳元で小さく囁かれた言葉に私はすぐに首を横に振った。すると私の頭をくしゃりと撫で、彼は私から離れた。
「コイツはとってねえ」
「は?引き出しから出てきたんだぞ?コイツ以外ありえねえだろ!」
「お前、そいつと仲良いからって庇ってんじゃねえぞ!」
「とってねえもんはとってねえんだよ!
お前らが騒ぎ出したのって昨日だよな?一昨日、そいつは傘忘れて放課後から家に帰るまでずっとオレに引っ付いてた。
そいつと教室出る前に見た時、キーホルダーはまだ鞄に付いてた。それに昨日そいつの引き出しにそんな物入ってなかった」
「そっそんなのお前の記憶違いだろ」
「誰にもの言ってやがる。オレがお前らみたいなヘマするわけねえだろ。いつも席の前でプラプラしてたキーホルダーが無くなってりゃ馬鹿でも気付くし、昨日プリントがどっかいったって、引き出しの中全部開けてオレとあいつがプリント探してたの見たやついるよなあ?」
「それは...」
クラスの空気が一気に変わった。
成績も常に1位、誰もが天才だと認めている彼が記憶違いを起こすなんてありえないとみんな分かっているんだろう。
昨日のプリントもいつも通り私に怒鳴り散らかしながら一緒に探してくれていたので、目立っていないはずがないし、現にまた怒られてるや怒ってると誰かに言われているのを聞いた。顔を上げるとみんな困惑した表情を浮かべていた。
「確かにやってた」 「やっぱり違うのかな」
「もしかして犯人別にいる?」「でもどう考えても」
コソコソあちこちで話声が聞こえる。
チャイムが鳴り先生が教室に入ってきたので、話すのをやめみんな席に戻っていった。みんなが移動する中、立ち尽くしている私に「席に戻れよ」とすれ違いざまに言うとかっちゃんは席へ戻っていった。
その後の授業は全く頭に入ってこなかったが何とか乗り越え、放課後になった瞬間私は教室を飛び出した。