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第2章


吸血鬼の活動時間は6時から夜明け前まで。
それが祓魔師になったものに教えられる吸血鬼のセオリーのひとつだった。
そしてその例を参考に祓魔師達は午後5時の時点で配置につき始めていた。

××市
「多分ここだよなー?」
「そうですね…それではルーカスさん。ここで待機していましょうか」
「はーい!」
セレイアとルーカスは早くもみんなから別れて配置場所に着いていた。
周りも途中からバラけ、配置場所につき始めている頃だろう。
セレイアとルーカスは自分たちの配置の周辺を軽く巡回して吸血鬼の討伐、情報収集、及び人民の救出が主な仕事である。
全員の移動開始時間は一律で、定刻5時と言われている。
現在時刻は4時半。まだ敵が現れるには早い。
セレイアは時計を見つつそんなことを考える。隣のルーカスはと言えば特に時間にすら興味も無さげに周りをキョロキョロしている。
そこでセレイアの通信機にピコンと可愛らしい通知音と共にメッセージが届く。
内容は、全員が配置に着いたことを確認した。という旨のものだった。
みんなはまだ無事なのかと、当然ではあるが少しだけセレイアは安堵した。
しかしその直後、空気が張りつめるような、痛々しい程の力を一瞬感じる。
その気配に反応してセレイアは周りを素早く確認する。
しかし特段周りに人の気配もなく、吸血鬼なんていた痕跡すらない。
何かが来た、ということだけは分かる。この市街のどこかに特位が居る。
セレイアは少し早いがルーカスに微笑みルーカスを誘導する。
「ルーカスさん。少し早いですが巡回を始めましょうか」
そう言ってルーカスと共に周りの巡回を始めた。

セレイアが特位の気配を感じた時、殆ど全員がそれを感じていた。
ついに来た、と。
ただ数人は、特位以外にもいるということを感じ取り。その数に戦慄した。
恐らく6、7はいるだろう。
その中に目当ての吸血鬼がいればいいが。そうイルフォードは物陰にかくれながら思う。
大きな力、特位は街の中心方面に感じる。其方に向かう必要があるのかとほんの少し愕然とする。幾らなんでも同じ方向に三体の吸血鬼の存在を感じ取れば足が竦むのも当然だ。それも上位の、と言ってもイルフォードはそれよりも…
そこまで考えて星那が隣から小声で話しかけられる。
「イルフォードさん。敵は中心地の方面ですよね?行かないんですか?」
「…いや。行くよ。それじゃあここからは僕の能力で足音の存在感を消すから、物陰に隠れながら中心地に移動しよう」
そう小声で返すと星那ははいっと小さな声で返事をしてくれた。

数人は予定より早く行動を開始している中、碧は困り果てていた。
元々竜胆の団員にいいイメージも思い出もないのだ。それなのに、なんなら白華ならその事を分かっているはずなのに。
目の前に立っているのは竜胆のボス、頭城 正という少年だ。
碧は話すことも無く、正と2人で黙々と巡回を始めていた。
すごく会いたくなかった碧は話す気すら失せている。
正はと言えば(すげぇ無口なやつ)ぐらいの認識である。なんなら目も合わない。
お互い(戦闘の邪魔にならなきゃいいけど)なんて思っている。
(ペアなら白華さんと組んだ方が楽だったな…)
なんて正は思っているし
(なんでよりによって竜胆の人なんや…ボス…分かってるはずやのに……セレイアさんとは離れてしもたし……ボスの班も大変そうやけども…まだこれならボスの班の方が良かった気もするなぁ…)
碧もこの有様だ。
この2人、本当に共闘できるのだろうか…

他の班、と言えば
アーナと鉄紺も似たようなものだった。
鉄紺はアーナにピースと似たような既視感を覚えており、少々距離を測りかねている。
共通の話題もなく2人ともしんと静かである。
アーナはそんな空気も気にせず、どんな吸血鬼が来ても倒すぞと張り切っている。

そしてあと2班。
縁と煉霞の班はいつもと特に変わりはない。
強いて言うなら煉霞が終始脅えている。
吸血鬼がいつ出るかとびくびくしつつ縁にしっかり捕まっている。
「こわい……」
煉霞はそう言いつつ涙目である。
「大丈夫だよ。何かあったら急いで逃げよう。私が出来るだけサポートするから。」
縁が優しくなだめてみるが煉霞は縁の腕にぴっとりとくっついたまま離れない。
「縁さん゙……いえ…ただでさえ役立たずなのに手を煩わせてしまうのは申し訳ないです……囮にでも使ってください…縁さんを死なす訳には行きませんし……俺は足でまといにならないように善処しますから……」
「え……いや…そんな……あっそうだ。飴玉あるよ。食べる?」
「飴玉…!?…いいんですか…?」
「いいよ。」
そうにこにこと縁が笑うと煉霞は幾分か嬉しそうな顔をして渡した飴玉を頬張った。
「…ん…美味しいです…」
嬉しそうに煉霞は笑う。そんな和やかな時間がほんの少しだが流れる。
しかし、そんな和やかな空気もかき消すように皆から遠く離れた場所で笑う者が一人。
誰にも聞こえぬようにビルの上にちょこんと座ってくすくす笑っている。
紅依である。
「今回はこれまた…ふふっ…面白そうなのがいるなぁ…」
そういってその場でよっと立ち上がる。
「さ〜て。…みんなどうやって動いてるかな〜!今日は何人の人間を殺せるだろう」
ニコニコ笑顔でそんなことを言う紅永は悪魔としか形容できないような気がする。紅永はすっと手を丸にしてその中を覗いた。

✣✣✣
「……リアナ…大丈夫か?…体調が悪いと聞いたぞ…?」
「…大丈夫よディーパちゃん。ただほんとに夢見が悪かっただけなの。今はもう元気だから」
心配そうな顔をするのは、綺麗な黒髪を揺らす少女。ディーバである。その隣にはいつもより幾分か顔色の悪いリアナが歩いている。
「…しかし……その状態で戦えるとは…」
「人間相手なららくしょーよ。必ずディーバちゃんを守るからね。」
そういつもより元気なく笑うリアナ。ディーバは仲間であるリアナが心配でならないようで、まだ納得していないような顔で「うーん」と唸るばかりだった。

✣✣✣
「ふむふむ…2人は…いい感じだね。これなら祓魔師達と遭遇することは少ないかも。リアナも調子が悪いみたいだし無理はしないで欲しいけどね。……さて次…」
また紅永は手を丸にして覗き込んだ。
✣✣✣

「…よーし…みんな行こっかぁ…」
そういってフェールデは動物達を数匹連れて街を徘徊する。
小型のリスと索敵用の中型、犬。そして大型の馬なんかも連れている。愉快な守人達と言ったところだ。
犬は人間の匂いを嗅ぎつけるとフェールデにぐらいにしか聞こえないようにくぅーんと喉を鳴らして吠える。
フェールデはその声に反応してくるりと振り返ると「人間がいた?…そっかならそっちに行こうか」とにこりと笑って少し舌なめずりをした。

✣✣✣
「…お〜…早速動いてるね…祓魔師達も普通の人の避難をさせてたみたいだけど…策略か分からないけど結構人間残ってるし…殺せたら万々歳だね。頑張ってよね〜皆。…さて次…」
紅永はまた同じ動作をして手の円を覗く。
✣✣✣

「……」
返り血を少し浴びた緋緒はただ無言で佇み、ふぅと息を吐くとその死体をごろりとその辺に転がした。
緋緒は他の人とも行動しようと考えていたはずなのだが気付いたら単独行動をしていた。
ただのうのうと生きている人間を見て、殺意が湧いてしまったから。先程まではコバルデと居たのだが、コバルデはどこに行ってしまったのか。いや、私がはぐれてしまっただけかとため息を着く。
「おやおや。そんなに美味しそうなものを転がして、食べないんですか?緋緒さん。」
唐突に目の前にぬっと現れたコバルデに緋緒はたじろぐ。
「なっ…コバルデ…?…着いてきていたのか?」
そう聞くとニコニコとコバルデは笑って「えぇもちろん」と答える。
「…貴方が食べないなら私が食べてしまいますが?」
そう、コバルデは続けて言う。
「…あぁ。構わない。今は食べる気にはならないからな」
そう言うと「それなら」と言ってコバルデは転がった死体に近づき注射器で血を取る。
緋緒はそれを横目で見ながらなんとも言えないような、不快とはまた違うが好意的では無い視線を少しばかり向ける。それはコバルデに対したものではなかったが、それが人に対しての敵意であるのかまでは分からなかった。

✣✣✣
「…相変わらずだねぇ〜コバルデは。…緋緒は……まぁ今のところは心配ないかな。…さ〜て、次次〜!」
紅永はまた手の円を覗き込んだ。
✣✣✣

「…えっと……今、北に…緋緒さん達…南に…リアナ…東が…フェールデ…それなら…行くなら西か…?…いや…紅永がいるかも…というか…紅永どこに行った…あいつの気配残り香がデカすぎで分散しててわかんねぇ……邪魔されないといいんだが…とりあえず…西に向かうか…」
仁は少し頭を悩ませた後、西に足を向ける。
今回は戦うつもりもなく、できるだけ祓魔師にも一族の吸血鬼達にも会いたくはない。仁の目的はひとつで、煉霞にこの前拾った指輪を返す事である。
指輪はポケットに大事にしまってあるので落とす心配もない。煉霞の気配は何処と無く異質なのですぐ分かるだろうと思っていたのだが、主に紅永のせいで何も分からない。紅永の存在がデカすぎてもやがかかったように何も見えないのだ。紅永自体も理解して振り撒いているので少々腹も立つ。ただどうやら最上位達はそうではなく、緋緒さんなんかはそんなことは無いと言っていた。やはり最上位ぐらいでないとあいつの近くは動きにくいのか…そう思い少し歯噛みする。
とにかく今は煉霞を探すことが先決だ。そう考えて仁は少し足を早めた。

✣✣✣
「…仁は違う目的があるみたいだね……うーん…なんか持ってるみたいなんだけど…なんなんだろう…まぁいいか…仁は何するか予想できないし…面白そうだからほっておこ〜!次次〜!」
✣✣✣

「…〜♪…」
ノクスはそこそこ離れた街で鼻歌を歌いながら食う人間を飛んで探しているようだ。

✣✣✣
紅永はその様子を見てすぐ手を視線から外す。
「ノクスは…必要な時に呼べばいいか……あの事もあるし…今は不用意に触らないのが得策だろうし…さて…みんなざっとこんなもんかな。よし……殺すか」
そうにんまりと楽しそうに紅永が笑うと紅永はビルの上からふっと消えた。

✣✣✣
「なっ…いきなり場所が移動した?…さっきまでは中心にいたのに……なんで…瞬間移動でも使えるのか…??」
イルフォードは驚きで思わずそんな言葉が口を付く。
「どうしました…?…」
後ろにいる星那が少し焦った声でそう言う。
「…いや…特位が移動した。…追いかけよう」
そう動揺を隠すように星那に声をかけ特位、紅永が移動した位置に隠れつつ向かう。
(特位は未知数とは聞いていたけれど…こんなのはまるで…)
頭の中で、自分の不安を煽るように嫌な記憶がフラッシュバックする。
イルフォードは静かに眉間に皺を寄せてギリ…と歯噛みした。


同時刻、アーナと鉄紺は担当の場所を巡回していた。

「これは……」
「死体だな。ということはこの近くに吸血鬼がいるということか?」
鉄紺とアーナは担当の場所から少し外れたところで血がそこまで吸われていない死体がごろりと転がっている。
「吸血鬼…にしては血が放置されるなんて珍しい。…まぁ血もかわいてはいないし、さっきということに変わりはないだろうな」
鉄紺は冷静に分析する。
「それならここを片っ端から散策するか!行くぞ〜!」
アーナは元気よく腕を振り上げ歩き出す。
「ぇ…お、おい…アーナ、待ってくれ」
鉄紺はアーナのその行動力に少し驚きながらも立ち上がって追いかける。
「吸血鬼がいるとわかった以上、不用心にふらつくのは危ないぞ」
そういうがアーナは聞く様子もなく「大丈夫大丈夫!来たら僕がボッコボコにしてやるからな!」なんて言って意気揚々と歩いている。
何となくピースと似たような感覚を覚えて静かにはぁと息を吐いた。

その瞬間だった。

後ろからピリついた殺気が放たれ、確実に鉄紺を狙ってナイフが向かう。
ガキンッと鈍く派手な音がした。
鉄紺は咄嗟に出した薙刀でギリ、と少しナイフと競り合いをしたがナイフの持ち主は、ナイフ越しに薙刀を鉄紺側に押し込むと、反動でクルクルと回り、後ろに後退した。
「っち、…」
小さく舌打ちが聞こえる。
「随分な不意打ちだな。吸血鬼。そうでもしないと勝てないとでも思ったか」
吸血鬼から放たれる異様な殺気に、こちらも応戦するように殺気を放ち、吸血鬼を強く睨みつける。
特徴的な薔薇の眼帯をした吸血鬼は静かにこちらを見すえて言う。
「あんたら…祓魔師…か。さっさと1人始末しようかと思ったんだが…一筋縄では行かない奴らみたいだな。」
問いにも答えず吸血鬼、緋緒は一方的に声を発すれば、
緋緒が一瞬目を細めた、刹那、
「ぐ…」
そう、アーナの呻き声が聞こえた。
何者かによって刺されたらしい。
「…クク…ちょうど良かったです。今から戦うという時に新しい血液が手に入って。」
アーナを刺した張本人、先程そこで死んでいた女性だった。
驚きで鉄紺は目を見開く。
アーナは自分を刺した女性を肘で殴ろうとするもののそれはすいっと避けられ同時に距離を取られる。
女性の手にあるのは注射器だった。
「コバルデ。これでいいのか?」
反対側にいる緋緒はそう女性の姿をしたコバルデに声をかける。
「ええ、いいですとも。手伝ってくれて感謝致します。茨嬢。」
そうコバルデはにたりと笑う。
「よし。なら、さっさとこいつらを始末しよう。」
そう言って緋緒はナイフと共に懐から血液パックを取り出す。
その瞬間、怒りに満ちた地を這うような鉄紺の声が響いた。
「今…コバルデと言ったか?…」
「えぇ。言いましたよ?…おや、私のことを知っているのですか?」 
そう、コバルデはにたにたと笑う。なんとも気持ちの悪い笑みだ。
「貴様っ」
鉄紺はギリッと歯をかみ締めたと思うと猛スピードでコバルデに切りかかる。
しかしコバルデはそれをひょいと避けてしまう。
「おやおや、野蛮な家畜ですね」
そうクスクスと笑う。
「私達は家畜じゃない!久しいな。…コバルデ、私は覚えているぞ。お前の悪行も、お前のその歪んだ性根も!!」
声を荒らげて鉄紺は言う。
「おやおや、本当に…よく鳴く家畜ですね。私が何をしたというのか………いや…あなた…見覚えがありますねぇ…あぁ。私が逃した獲物でしたか。いや〜あの時は残念でしたねぇ。もう少しで行けると思ったんですが」
気持ちの悪い笑みを浮かべ続けながらコバルデは言う。
「でも実際貴方は生きている。それでいいじゃないですか、何か問題があって?」
そうくすくす笑って言う。
「黙れ!!お前達のような卑劣な者共からすれば、生きていればそれでいいのかもしれない。だが私は違う。お前は、殺すべき存在だ」
そう怒りの籠った言葉で鉄紺は言う。
そして強くコバルデを睨みつけると薙刀を構え直し切りかかった。

「…鉄紺……まぁいい、…鉄紺がそっちの相手をするなら、僕の相手は君だな。……ひ…ひ…?…バラにんげん!」
そう大きく啖呵を切るアーナ。
「……緋緒だ…茨目 緋緒。…」
そうなんだか可哀想なものを見るような目で緋緒は言う。
「わかった。い…い…ばら…ひ………バラ人間…違うバラ吸血鬼!」
結局あまり覚えられず自分であだ名を作ったようだ。
緋緒は思わずため息が出る。相手は祓魔師、油断して勝てるような相手では無いのは分かっているがこれは力が抜ける。それにまだ子供のようだ。自分と背丈が同じぐらいなのでそんな感覚に陥る。
「まぁいい…やり合うならさっさとやり合おう。…生憎と私には時間が無いのでな」
そう言って、緋緒はアーナを睨みつける。
「わかっている。僕も君ごときに手間取っている暇はないからな」
アーナも同時に戦闘態勢に入る。
ふたりが同時に地面を蹴った直後、ガキンッと鈍い音が響いた。

「…おお…やってんねぇ……」
とんとんっと屋根伝いに走りながら紅永は緋緒達の様子を先程と同様に手の円を覗いて見ている。
すぐ手を下ろすと少しニヤリと笑って言う。
「それならボクもそろそろ会いに行こうかなぁ。…可愛い可愛い祓魔師さんに。」


「……っはぁ…っ…やっと…追いつい……た……」
屋根伝いに走る少年を、イルフォードは目撃した。
それと同時に息が止まる。その少年の姿は、あまりに見覚えがありすぎた。
イルフォードの目に嫌という程焼き付いているその少年。
ほぼ条件反射でイルフォードはナイフを投げていた。
「わっととっ」
少年、紅永はそんな軽い声を出しながらひょいと回ってナイフを避ける。
そして止まると、くるっとこちらを振り返ってクスッと笑った。
「あっれれぇ。見つかっちゃった?……ふふ」
その顔を見たイルフォードはマスクの後ろで目を見開く。
「お前は…!」
思わずほんの少し声を荒らげた。
「…?ボクのこと知ってるの?……おっと、ボク今急いでるんだよね。君の相手してる暇ないんだった」
くすっと小馬鹿にしたように笑って目を細める。
言うが早いが素早く踵を返して紅永は屋根を走っていく。
イルフォードも追いかけようと進むが後ろから星那に「待ってください!」と腕を掴んで止められてしまった。
星那の行動でほんの少し落ち着いたイルフォードははっと息をついて僅かに歯噛みするが冷静さを取り戻す。
「ごめんね。少し焦ってたみたい。引き続きあの特位の情報を探ろう。」
そう言って紅永とは真逆の方向に歩く。
それでも気がかりは消えず、イルフォードは紅永の行った方を少し睨んで小さく舌打ちをした。

✣✣✣
「アリクレッド。ここまで見てきて吸血鬼の気配はあったか?」
「ん〜?いや〜なかったね。あったのはほんの一瞬だったしかなり遠かったじゃん。ね〜?」
アリクレッドは緊張感もなくへらっと笑う。
「…ぅん。やっぱりそうだよな。他の団員達にも連絡を取る必要が…」
白華が少し考える素振りをした直後。
少し遠くからゴォォッという轟音と共に建物が崩れるような音がする。
「!?」
ピースが驚いてマサカアクマ!なんて叫びながら走り出しそうになったから白華が鷲掴みにして止めた。
「にしたってあっちは……確かアーナと鉄紺の区域の方面じゃなかったか?」
「そうだね〜。行く?」
「あぁ。その前に連絡を取ってくれ。応答がなければ近場の団員に救援を頼む。」
「りょうか〜い」
アリクレッドはいつものようににこっと笑って通信機を取りだした。

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