短編集
夏の空は輝いている。
星々が煌々と輝きを放って生きている。
君はあの夜空を見上げて僕にこう言った。
「一等星ってあれなのかな?」
その問いに思わず一瞬だけ息を止めた。直ぐに答えることが出来ずに、気泡のような呼吸がはくりと漏れた。
それはね。それは、君。
それは僕にも分からないよ。
あの赤い星が一等かもしれないし、あの橙の星が一等なのかもしれない。そんなの、人それぞれだ。それぞれの采配に委ねられることだ。
星は空より高い場所でずっと、それこそ何百年も前から輝いているけど、地上で生きる僕たちからすれば、それは同じ星じゃないと思うんだ。ただ華やかに輝きを放っている宇宙の塵であって、夏の空に咲いている星屑の1つだ。
ただの夏の星なのだ。
寝れば夜がきて、起きれば朝がくるように。
季節が巡り廻って、その場にいつまでも留まっていないように。
命が生まれて、いつかは死んでいくように。
遥か昔に地球が誕生し、遠い未来に滅んでしまうように。
星は形を変えて、命を削って、夜空に咲いている。
昨日の一等星が今日はもう無いのかもしれないし、今日の一等星は初めて一等なのだと誰かに言われたのかもしれない。そもそも、君と僕が今見ている星は微妙に違うものなのかもしれない。
そんなの、誰にも分からない。
だから僕はこう言うんだ。
「あれじゃないかな?」
星を指さずに口先だけで、言うんだ。
そうしたら君が「だよね!」と笑う。
笑う君の横顔が美しい。
名前があることでその存在を決定付けてしまう、そのことにまだ気付かない幼い君が美しい。だからどうか僕のように穢れた存在にならないで欲しいと願う。
星のように激しく輝いて、その狭間で生き延びてくれ。
それは、まるで、泡沫の如く。
淡い海で僕は想う。
苦しくなって、こぽりと息が漏れて。
それでも君はきっとこの夏の空を見上げるのだろう。見上げているのだろう。
それで良いのだと思う。
この泡沫のような時間は瞬く間に消え去ってしまう。
泡沫なのだから仕方のないことだ。
空の色が映り込んだその瞳を瞬かせている間に、星は移動し、姿を眩ませる。
そしていずれ誰も知らない場所で消えていく。死んでいく。
だから僕はこの泡沫を愛している。
好きな君と同じくらい、この泡沫を愛して止まない。
一夜の幻のような輝きは、一際激しく夏の空で、今日も輝いている。
星々が煌々と輝きを放って生きている。
君はあの夜空を見上げて僕にこう言った。
「一等星ってあれなのかな?」
その問いに思わず一瞬だけ息を止めた。直ぐに答えることが出来ずに、気泡のような呼吸がはくりと漏れた。
それはね。それは、君。
それは僕にも分からないよ。
あの赤い星が一等かもしれないし、あの橙の星が一等なのかもしれない。そんなの、人それぞれだ。それぞれの采配に委ねられることだ。
星は空より高い場所でずっと、それこそ何百年も前から輝いているけど、地上で生きる僕たちからすれば、それは同じ星じゃないと思うんだ。ただ華やかに輝きを放っている宇宙の塵であって、夏の空に咲いている星屑の1つだ。
ただの夏の星なのだ。
寝れば夜がきて、起きれば朝がくるように。
季節が巡り廻って、その場にいつまでも留まっていないように。
命が生まれて、いつかは死んでいくように。
遥か昔に地球が誕生し、遠い未来に滅んでしまうように。
星は形を変えて、命を削って、夜空に咲いている。
昨日の一等星が今日はもう無いのかもしれないし、今日の一等星は初めて一等なのだと誰かに言われたのかもしれない。そもそも、君と僕が今見ている星は微妙に違うものなのかもしれない。
そんなの、誰にも分からない。
だから僕はこう言うんだ。
「あれじゃないかな?」
星を指さずに口先だけで、言うんだ。
そうしたら君が「だよね!」と笑う。
笑う君の横顔が美しい。
名前があることでその存在を決定付けてしまう、そのことにまだ気付かない幼い君が美しい。だからどうか僕のように穢れた存在にならないで欲しいと願う。
星のように激しく輝いて、その狭間で生き延びてくれ。
それは、まるで、泡沫の如く。
淡い海で僕は想う。
苦しくなって、こぽりと息が漏れて。
それでも君はきっとこの夏の空を見上げるのだろう。見上げているのだろう。
それで良いのだと思う。
この泡沫のような時間は瞬く間に消え去ってしまう。
泡沫なのだから仕方のないことだ。
空の色が映り込んだその瞳を瞬かせている間に、星は移動し、姿を眩ませる。
そしていずれ誰も知らない場所で消えていく。死んでいく。
だから僕はこの泡沫を愛している。
好きな君と同じくらい、この泡沫を愛して止まない。
一夜の幻のような輝きは、一際激しく夏の空で、今日も輝いている。
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