天使との邂逅
今は聞きたくないとテレビをOFFにして目を背けるように枕に顔を埋めて寝返りをうつ。
クシャッ
「……なに?」
紙が潰れる音がした。
枕から顔を少しあげて身体の下を探ってみるが見つからない。
今度はぐしゃぐしゃになった毛布を振ってみた。
すると、くしゃくしゃの小さな紙クズが転がって出てきた。
それを掴んで首を傾げる。
「………何だっけ…」
『貴方の力が必要━━』
(あぁ、そういえば…)
そんな事もあったなぁ、と何処か他人事のように思う。
だって、本当に現実味がなかったから、思い出した今もいまいちピンとこない。
だって自分があのプラントの歌姫になれるなんて…。
あの時は請けるか迷っていたから代行の詳しい内容は聞いてなかったけど
多分…いえ、絶対必要なのはラクス様似のこの声だけ…。
ミーア・キャンベルは必要ない。
…いつだって
いつだって、そうだったんだもの。
『ラクス・クラインになって━━』
ドクンッ
「ッ!?」
心がざわつく。
思い通りにならない現実と違う形で叶うかもしれない夢。
目は自然と携帯に向かい、手は知らず知らず番号を押す。
「……っ」
最後の数字を押す手が止まる。
本当にいいの?
これでいいの?
心の声がミーアに語りかける。
これを押せば、もう引き返せない気がする。
もう戻れない気が…
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