天使との邂逅




「代…行…?ラクス様の…?」

何を言っているんだろう。この人達は…


『ラクス・クライン』

プラントでこの名を知らない人はいない。

元最高評議会議長シーゲル・クラインの愛娘にして、プラントでも人気No.1のアイドル。

その容姿やカリスマ的な言動から男女問わず彼女に憧れている物は多い。

かくいうあたしも彼女のような歌手になりたいと思っている。

だが彼女は先の戦争を停戦に導いた英雄にも関わらず、その後プラントには戻ってはこなかった。

噂ではプラントに戻れない婚約者の為に共に地球に亡命したのだと聞いたけれど、本当の所は分からない。

そんな彼女は最早ただのアイドルでもシーゲル・クラインの娘という小さな存在でもなくなり、今やプラントの平和の象徴として神格化されているにも等しいかった。


そんな、そんな人の……大役なんて、あたしに出来る筈ないじゃない!!!


(コイツら絶っ対!あたしを馬鹿にしてる!)

そう思ったミーアの行動は早かった。

「冷やかしなら、あたしもう行きます!」

踵を返し、その場を去ろうとしたミーア。

だが周りにいた他の男達は行かせまいと素早く進路を塞ぐ。

「っ!!」

「冷やかしではありません。本当に貴方の“力”が必要なのです」

まだ言うか!と睨みつけながら振り返った先にいた集団のリーダー格らしき男の顔は真剣だった。

その真剣さに思わずたじろいでしまったが、男の態度に嘘は見られない。


自分に人を見る目が有るかどうかは分からないけれど、この人達は信じても良いような気がしてきた。

「あたしの…“力”…」


『力』ってなんだろう。

自分の自慢や長所のことだろうか。

それなら取って置きのものがある。
いままで馬鹿にされ続けてきたあたしの絶対の自慢━━武器は豊満な体型と歌唱力…そして


━━ラクス・クラインに似ているこの声。


この声がいつも、あたしの一番の自慢だった。

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