キオクのカタスミ
「………ぁ…」
空が白い…。
まだ雪が降ってるのかなぁ…?
でも不思議だな。全然寒くない、逆に暖かく感じる。
固いコンクリートの地面も何だかフワフワして、まるでベッドの中にいるみたいだ。
もしかして此処は天国?
「僕…死んだの、かな?」
「死んだ奴が喋るわけないだろ」
返るはずのない問いに間髪容れずに返ってきた答え。
ゆっくりと視線を移動させたその先には湯気の立つカップを持った黒髪の少年がいた。
「き…み…」
誰?と聞く前に少年は自分と目線を合わせるように屈んで頬に手を当ててきた。
「ん~~、さっきよりはマシになったな」
「…まし?」
少年が何を言わんとしているのか分からず、首を傾げるとズイッと手に持っていたカップが差し出された。
「あと少しでメシが出来るから それまでこれでも飲んで待っててくれ」
それだけを言うと彼はさっさと部屋を出て行ってしまった。
残された僕はいまいち状況が飲み込めず、とりあえず起き上がろうとしたけど体が上手く動かない。
仕方なく頭を動かして視線を移動させて自分が今いる場所を確認するだけにとどめた。
白い天井と白い壁。
さっき見た白い空はこれだったのかとあまり働かない頭でぼんやりと思う。
自分が寝ている場所も冷たいコンクリートではなく暖かい布団の中。
とすると此処はあの少年の家だろうか…。
隣の部屋からは時折音が聞こえる。
そういえば、さっき少年がご飯が出来るまでと言って飲み物の入ったカップを置いて行ってくれたのを思い出す。
横を見れば椅子の上に置いてあった。
彼には申し訳ないが体を起こす事もままならないこの状態では飲み物を床に零して余計な手間をかけてしまうかもしれない。
気を悪くするかもしれないけど、掃除させるよりは良いかな?と思いカップには手をつけないことにした。
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