マボロシの君へ
「君…もしかして親に虐待されてるの…」
言葉を選んで、当たり障りのない問いにしたかったが、
「ギャク…タイ…?」
また通じていないようだι。
ってか、これはもう俺の説明ベタの所為じゃないだろう。
「ちょっとゴメン!」
「うわっ」
傷跡はない。
薄暗くて細かいとこまでは分からないけど、見た限りでは白い綺麗な腕。
「しぃん?」
俺の行動の意味が分からないのか、ひたすら首を傾げるこの子…。
うぅ~~~ってぇ!
彼女とかこの子とか、なんかモヤモヤするなぁ。
しっくりこないって言うか…。
「! そうだ。俺が君の名前つけても良い……かな?」
「『なまえ』……シンが読んでくれる『なまえ』?」
「うん、そうだよ。俺と君だけの名前だ」
「欲しい!シンとの『なまえ』つけて!」
力一杯に『名前』が欲しい!と訴えてくる彼女に俺もついその気になって「任せとけ!」と啖呵を切ってしまった。
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