執事とお嬢様(仮)




「ねえ!キラでしょ!キラ・ヤマトよね!?」

後ろで蚊帳の外だったルナマリアたちは上司と婚約者たちの込み入った話に入って行けずにその場で待機していたのだが、懐かしい顔を見つけて居てもたってもいられず話が終わると同時にこの機を逃すまいと乱入した。

「ルナマリアと知り合いなのか?キラ」

「ぇ、ルナ…マリア。………もしかして…ルナマリア・ホーク?」

「そうよ!久しぶりねキラ。ほら、シンとレイ。覚えてるでしょ!」

そう言って自分の両脇にいるシンとレイの肩を軽く叩いて前に出すルナマリア。

「…うん、覚えてるよ。シン・アスカ、レイ・ザ・バレル…だよね」

懐かしい面々を見つけて自然と顔が綻ぶキラ。
だが、シンはそんなキラに眉を吊り上げ突っ掛かってきた。

「…っ、だよねじゃねえよ!?すっげえ心配したんだからな!!」

「え?心配って……?」


首を傾げ「?」マークを頭上に出していると、反対側にいたレイが代わりに説明をしてくれた。

「お前がスパイ要員だとして連れていかれて、その後、数ヶ月で戦争が終わってもお前からはなんの音沙汰もない。アカデミーに戻って来ないまま俺達は卒業。心配するなという方が無理な話だ」


「あ……あぁー…」

正論を言われてぐうの音も出ない。

…そうだった。確かあの時は、シーゲル様とお嬢様がフリーダムを奪取してスパイを手引きしたと疑いをかけられていた時だ。

シーゲル様と親交のあった穏健派は皆拘束され、クライン家の執事の一人であった自分も例外ではなく、シン達の前でいきなり拘束され連れていかれたのだ。

「そう…だよね。本当にごめんね、心配かけちゃって」

「本当よ!…でも、…無事で、本当に良かった…」

涙ぐむルナマリア。シンもレイ自分の元気な姿を見て安堵している。

そんな三人の顔を見渡してキラは心底申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
こんなに自分のことを気にかけてくれる友がいたのに、当時の自分はクライン様たちに置いていかれた事が哀しくて悔しくて、それ以外何も考えられなくなっていたのだ。

今は少し落ち着いたが、こうやって心配してくれる友達がいてくれる、そう思うだけで一人ぼっちだった空間に居場所が出来たようで胸の辺りがとても暖かくなった。

「キラ、お前 アカデミーに通っていたのか!」

「ぁ…はい、本当に少しの間ですが…」

アスランの戸惑いの声に「それでか…」とキラがザフトレッドを着ているのだと納得してくれたようだった。


「で?今はまたラクス様の執事に戻れたのね。ザフトレッドって事は、キラあの後アカデミーに戻って卒業したんだ」

「あ…いや、これは議長が」

「キラはアカデミーに通い直さなくても十分!な実力をお持ちですの。ですから議長が特例で紅服お渡ししたのですわ!」

「お嬢様…」

「そ、そうなんですか…」

ラクス・クラインの迫力にたじろぐルナマリア。
確かにアカデミー時代のキラは全ての成績においてトップだった。
あのままアカデミーにいたら間違いなくアカデミー始まって以来の全科目首席で卒業だったに違いない。

「ね、キラ。キラはこの後の予定は?ちょっと時間ある?久しぶりに皆で話しようよ」

「そうだぞ!あの後の事ちゃんと話して貰うからな!あと、シミュレーションで勝負だ!!」

「シンは、確かキラに全戦全敗だったな」

「なっ/// そっ、そう言うレイだって二、三回しか勝てたことなかったじゃないか!」

「フフッ、…みんな相変わらずだね」


そんな彼らを穏やかな顔で優しく見守るキラ。



「………むぅ~」

それを見て一番面白くないのはミーア。さっきまで婚約者であるアスランに久しぶりに会えてルンルンだった筈なのに…。

「そんな顔をするなミーア」

慰めの言葉をかけてくれたのは婚約者のアスラン。

って言うか~。婚約者っていうよりも妹みたいな扱いになってない?


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