執事とお嬢様(仮)
そのあと話があるって言ったら執事さんが別の場所でっていったから要望に応えて、執事さんの家から議長が手配してくれたホテルに移った。
もちろんVIP御用達のスイートルーム。
議長もアスランも執事さんも…、何だか当たり前みたいに入って行くから、最近ようやく豪邸だとか、高級ホテルに慣れてきたあたしは、一人だけ場違いッポイ雰囲気ぃー……。
しかも、そのホテルに着くなり執事さんは凄い顔して怒りだすし…。
一人でおろおろしてたら、議長が気を遣ってあたしを別の部屋に移してくれた。
「はぁ~……怖かった」
顔が綺麗な人は笑っても凄いけど、怒ったらもっと凄いことが分かった。
アスランも怒ったら怖いんだろうなぁ。初めて会った時のぶすっとした顔もちょっと怖くて不安だったし。
「…ちょっと喉乾いちゃった」
執事さんと会ってから緊張しっぱしで喉がカラカラ。
だって、ずっとあたしのこと睨んでたし、相当怒ってるよ!
冷蔵庫を開ければ、中には名のあるメーカーの飲み物がずらり。
お金は議長が出してくれるって分かってるけど……。
まだ慣れないあたしの手は、自然とミネラルウォーターに。
「あんなに睨まれたら楽観的なあたしでも落ち込むよ~……」
アスラン……、執事さんを…説得して、くれた…かなぁ…?
駄目だ…。緊張し過ぎて…眠い、かも……。
目の前にあるふかふかのベッドに寝転がるともう駄目だった。
*・*・*・*
「だから、プラント市民の暴動を抑える為にも世界の為にも、不本意だが今は彼女の力が必要なんだ」
切々と今のプラントと世界の均衡の危うさをキラに訴えるアスラン。
「だからと言って、あの様な事が許されると?あれはラクスお嬢様への冒涜です!」
だが、キラは耳を貸さず。
ひたすら否定の言葉を繰り返すばかり…。
「キラくん…」
そんな中、いままで俺とキラのやり取りを見守っていたデュランダル議長が、全く進展しない俺達の話を見かねて、助け船を出してくれた。
「確かに君の言い分も分かる。心酔していたかつての主を、こんな形で使われる等…とても腹立たしいく思っている事だろうね」
「…分かっていてやっているのですか?シーゲル様の思想を引き継いでいると聞いていましたが……とんだ狸ですね」
「キラ!そんな言い方は!?」
「いや、構わないよ、アスラン。事実その通りだ」
「……」
最高評議会議長である己を嘲笑したキラを咎めず、ただ己の非だけを素直に認めたことにキラは少し驚いた。
為政者とは総じて罪を認めず、己は正しいと信じきっているものが殆んどだ。
そんな中、穏健派で有能なシーゲル・クラインの下に仕えることが出来た自分は幸せ者だろう。
そこに関してだけ自分も彼に敬意を払おう。
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