Despair of truth



(この艦には、もうMSはないのか!)

(パイロットがいません)

(ショーン機もシグナルロストです!)

「…くっ!」

今は一人になりたくてカガリに断りを入れて来たレクリエーションルーム。

でも、いざ一人になると色んな事が頭を巡り、更には過去のことまでも思い出してしまう。

振り払おうと頭を振っても消えない雑念。

(ならば、もしそれが偽りだったとしたら…?


それが偽りだとしたら…

それは、その“存在”そのものも偽り……という事になるのかな…?)

答えることの出来ない議長の問いが何度も俺に尋ねてくる。


「━━もんなのぉ?」

少し甘えたような舌足らずな声が聞こえてきたのはそんな時だった。


「だってあの人、前は…」

「何言ってんのよ。いくら昔━━…」

段々近くなる話し声が途切れたのは部屋の前。
そして聞こえた声の主はミネルバのブリッジにいた管制の少女だった。

彼女は俺と目が合うと罰が悪そうに急いで横にいるレイの後ろに隠れ、恐る恐る顔を出してこちらを窺うように見ていた。

「へぇー、ちょうど貴方の話をしていた所でした、アスラン・ザラ」

気まずい雰囲気のなか、隠れた少女に代わって俺に話し掛けて来たのはミネルバに避難した時に出会った紅服の少女。

彼女は俺に対して物怖じせず、むしろ挑発するように俺の本当の名を呼ぶ。

「まさかというか…、やっぱりというか。伝説のエースにこんな所で御会い出来るなんて、光栄です」

「…そんなモノじゃない。俺は『アレックス』だよ」

「だから、もうMSにも乗らない?」

「ッ!!」

挑発に乗っては駄目だと分かってはいても感情が抑えられず彼女を睨んでしまう。

いちいちトゲのある彼女の言葉も、俺が心に蓋をしていたい事でもあったからだ。

(俺もカガリの事は言えない…かもな)


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