Despair of truth
「艦長、タンホイザーで前方の岩塊を!」
「吹き飛ばしても、それでまた岩肌を抉(えぐ)って同じ量の岩塊を撒き散らすだけよ!」
「ぁ…あぁ…」
あっさりと却下されて項垂れる副艦アーサー。
「右舷の砲は幾つ生きているんです!」
「えッ?」
そんな状況で声を発したのは後方にいたオーブ代表の護衛、アスラン……いやアレックスだった。
突然のことに動揺してタリアはその横にいる議長を仰ぎ見る。
彼はそれを見て無言で頷く。
その目は、教えてやってくれと言っていた。
「六基よ。でも、そんなのでのこのこ出て行っても、また良い的にされるだけだわ」
「同時に右舷の砲を一斉に撃つんです。小惑星に向けて…」
「ぇえええっ!?」
その場のいる者全ての内心を代弁するアーサーの叫び。
タリアも彼が何を言っているのか分からず、前に向けた視線を再び後ろに戻す。
タリアの困惑した瞳の内を理解したのか彼は無茶とも言える内容を語った。
「爆圧で一気に艦体を押し出すんですよ!回りの岩も一緒に」
「なッ!?」
それに否を唱えたのもやはりアーサーだった。
「馬鹿を言うな!そんなことしたらミネルバだって━━」
ただではすまない!
…だが、最後の言葉は出ることはなかった。
彼の叫びに遮られて━…
「今は状況回避が先です!このままここにいたって、ただ的になるだけだ」
「ぐっ…」
正論なだけに何も言い返せない。
それでもアーサーにも副艦としてのプライドがある。
確かに以前は同じザフトの軍人だったかも知れない。
だが、今の彼は一民間人。しかも他国(オーブ)の国民。
そんな彼に、いくら危機的状況とはいえ口を出されたくはない。
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