Despair of truth
「本当に申し訳ない姫」
「ぁ、いや━━」
あの憎悪の篭った瞳に圧倒されて呆然としていたカガリは、早く無難な返答を返さなければと口を開いたが、それも議長の次の言葉に閉じてしまう。
「彼は“オーブ”からの移住者なので。よもやあんな事を言うとは…」
「……えっ?」
オーブからの移住者…?
それを聞いて直ぐに忌まわしいオーブ解放作戦の記憶が頭に浮かんだ。
あの争いの所為でオーブに住む多くのコーディネイター達がプラントに移り住むことを余儀なくされた。
あの少年もその犠牲者の一人……。
寝耳に水な彼の過去に、カガリはシンが去っていった場所を複雑な思いで見つめた。
「………」
━━この時、カガリもアスランも互いに同じ場所を見つめて、違う者の事を考えているのに気付かなかった。
二人とも、今の自分の気持ちに囚われすぎて…
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「シン、先ほどのような発言は控えろ。議長の立場を悪くする」
ロッカールームに来たレイからやはりというか、開口一番に先ほどの暴言の叱責を受けた。
「っ!……悪かったよ」
素直になれず、注意してくれたレイにまで邪険に返してしまう。
そんな自分に時々嫌気がさす。
でも、それが生まれついての性格だから今更変えようもない。
「今後は気をつけろ」
「…あぁ」
レイはそれだけを言って素早くパイロットスーツに着替えると何事もなかったようにシンの横を素通りして部屋を出ていった。
「……はぁ」
レイが他人にあまり干渉しない質で良かった。
あれこれ詮索されるのは好きじゃないし……
そういう意味では自分の周りのルナマリアやセレナ達は良い方だろう。
興味本位であれこれ聞いて来ることはあっても、触れてほしくない部分はちゃんと引いてくれる。
家族のことも、オーブでのことも……
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