Despair of truth
背を向けながらも怒りを露わに嘲る言葉を発したのは、少しはねた黒髪の少年だった。
「シン!」
議長と共に案内してくれた少年が彼を咎めながらそう呼ぶ。
恐らくそれが彼の名。
彼━━シンはゆっくり振り返ると、こちら…というよりカガリ一人を睨みつけてきた。
その爛々と輝く赤い瞳の奥に映る、深い憎しみの色を隠しもせずに…
「ッ?!」
カガリはシンの瞳を見て一瞬、時が止まったかのような錯覚に陥る。
まるで世界中の憎しみの視線を一身に浴びせられている錯覚に…
━━そんな時
『敵艦捕捉、距離八千。コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて待機せよ!』
その場を裂くように戦闘を告げる勧告が発令された。
「機体の最終チェックしとけ! 始まるぞ!」
メカニック達のリーダー、エイブスの一喝で、止まっていた整備士、全員がまるで蜘蛛の子を散らすように仕事に戻って行く。
「うわっ、やべぇ!」
シンの横でおろおろしていた友達のヴィーノやヨウランもシンのことを気にしつつもエイブスの言葉には逆らえず、急いで作業に戻って行く。
「シンッ!」
上から下りてきたレイはシンの胸倉を掴もうとしたがシンはそれを振り切り、逃げるように一人で行ってしまう。
「本当に申し訳ありません、議長」
この処分は後ほど必ず!そう言い残してレイは見本のような綺麗な敬礼をして、この場を去って行く。
傍にいたルナマリアやセレナも議長達に敬礼すると、レイに続いて格納庫を後にする。
「…ん?」
移動している彼等を目で追っていたアスランは、こちらを振り返ったセレナと目が合った。
切なそうに揺れる紫の瞳が俺を見つめてくる。
『アスラン…』
「ッ!!?」
見るものを引きつけて離さない神秘的な色。
その瞳を━━俺は知っている気がした。
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