Despair of truth




「嬉しい…、という訳ではありませんが、あの混乱の中から皆で懸命に頑張り、ここまでの“力”を持つことが出来たというのは…やはり」

「“力”…か」

独り言のように呟いて、カガリは明るい色の瞳を瞼の下に隠す。

しかし、隠されたオレンジの瞳も数秒としない内に再びその色を現し、隣にいる男の顔を鋭く睨む。

「争いがなくならぬから力が必要だとおっしゃったな、議長は…」

「えぇ」

「だが!では、この度の事はどうお考えになる!あのたった三機の新型MSのために、貴国が被ったあの被害のことは!!」

シェルターまで案内してくれた兵士。
新型を抑えようとMSに乗ったパイロットたち。

そして、名も知らぬプラントの人々。

あの時のことを思い出すと胸に熱いものが込み上げ、カガリから冷静さを奪う。

「代表ッ」

アスランが諌めようとするが、カガリは止まらない。

止めようとも思わなかった。


「…だから力など持つべきではない、と?」

冷静で単調な議長の声色でさえ今のカガリのささくれた心情を逆なでするものでしかない。

「そもそも何故必要なのだ!そんな物がいまさらっ!」


オーブ代表の苛烈なまでの主張は、格納庫の全てに響き渡り、殆どの者は思わず手を止めてその光景に見入っていた。

「我々は誓った筈だ。
もう悲劇は繰り返さない!互いに手を取り合い平和への道を選ぶと!」

それなのに“護る”為じゃない“戦う”為だけに使おうとするこの力は一体どういう事だ。


「それは…しかし姫━━」
「さすが綺麗事はアスハの御家芸だな!!」

「ッ!?」


反論するデュランダルの言葉を遮って若く鋭い、そして何処か棘のある声が二人の会話を中断させた。


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