Innocence《完結》
キラ…
懐かしい響きに胸の奥が締め付けられる。
昔はただ愛しさだけを感じさせてくれた甘い言葉も、今はとても苦しく、重く感じる。
それは俺が彼女に罪を感じているから
あの姿を見ていられなくて、護るという名目で逃げだした俺に。
キラがいるのにラクスと婚約し、カガリに心惹かれてオーブに亡命したことに。
俺がプラントに戻らない本当の訳は…
キラに逢うのが怖いからかもしれない。
彼女を見ると現実を突き付けられて
とても…苦しい。
だから逃げたんだ。
戦争に━…
少しでも多くの地球軍を殺せば、キラが目を覚ましてくれて…
そして、その綺麗な瞳が柔らかく弧を描き、俺に許しの言葉を紡いでくれる。
━━だが、所詮はただの自己満足でしかなかった。
そのことに気づかされた時、余計キラに逢えなかった。
こんな…血濡れた手で綺麗な彼女には触れられない。
そんな事をしたら彼女まで汚れてしまう。
それもキラに逢いたくない俺の都合のいい言い訳にしか過ぎない。
キラ…
戻りたい━━あの頃に
幸せだった
月にいたあの頃に…
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