Despair of truth
「だが!強すぎる力は、また争いを呼ぶ!」
━━ハッ
カガリの怒声のような叫びで目が覚める。
どうやら自分でも気づかない位に考えに耽っていたらしい。
辺りの様子を確認して、何事も無いことに一先ず安堵の息をついた。
「いいえ、姫。争いが無くならぬから、…力が必要なのです」
「………っ」
議長のその言葉に、カガリは押し黙った。
彼の発言にも一理あると感じたからだろう。
どうやら俺が意識を飛ばしている間も、このやり取りを繰り返していたみたいだ。
カガリは悔しそうに握り締めた拳を震わせている。
仕方がない。
弁論で議長に叶う筈がない。
戦後、最高評議会議長に就任した若きカリスマ。
彼は巧みな話術で人を惹き付ける力を持っている。
実際、俺も議長の発する言葉には説得力があると思う。
そして何より、この人は現実をしっかりと見据えている。
別にカガリが現実を見ていないという訳ではない。
彼女も戦後、オーブの代表として目の前に山積みとなった問題を少しずつだが、確実に解決している。
だが議長のそれはカガリとは何処か違う。
この先のプラントだけでなく、まるで世界の行く末までも見ているかのような…。
そんな気が━━
「それに姫。強い力が悪い訳ではありません。悪いのは寧ろ━━」
その言葉の続きは、けたたましい警報の音と共に遮られた。
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