Jigsaw puzzle《完結》



そのことに気付けたのは、高校に入って少し余裕が出来てきた頃だったか。

だけど、その時は既に生徒会役員になる事を引き受けた後で、キラとはすれ違いの日々が暫く続いて、話どころか構ってあげる事すら出来なかった。

だから、キラが俺を訪ねて来たら必ず俺の部屋か、キラのために用意している部屋に通すようにとメイド達に申しつけていた。


「あ!アスラン、ブランコ乗ろうよ」

ほら!と指差す先には、幼い頃よく二人で乗ったブランコ。

「 …キィラ~、俺たち一応、高校生なんだよ」

俺の答えに満足しなかったキラは、プク~と頬を膨らませて「高校生でも乗りたい時があるんですぅー」などと言い訳して、さっさと一人でブランコに行ってしまった。

立ち漕ぎで大きくブランコを揺する。
あまりにも勢いがいいのでスカートがひらひらと舞って。


そんなキラが幼い頃の記憶と重なる。
俺を導いてくれたあの小さな手。真っ直ぐ俺を見てくれていたあの眼差し。


そういえば、とアスランはふと思い出す。
まだキラと出会う前。まだ自分が一人だった時、父上がジグソーパズルを買ってきてくれたことがあった。

5000ピースもある大きなもので、一度夢中になると終わるまで止まらない性格のアスランだったが、あと3分の1となったところで急に手が止まった。


当時は何がなんだか分からなかった。
やり始めて五日後だったか。いきなり頭が真っ白になって、迷いなく動いていた指が比例するように止まったのだ。
考えても考えても答えは出ず。焦った俺は、全く形の違うピースを無理矢理はめ込んでいった。

当然はまる筈もなかったジグソーパズルはメチャクチャで……それからどうしたっけ?

たしかもうやる気がなくなって、でも壊すのも何だか嫌で…、とりあえずカバーをかけて放置して━━……。


( あ~ι そうだ、読みかけの本や資料の下敷きなってホコリかぶってたような気が……)

ピース揃ってたっけと考えていたら胸の辺りに衝撃がきた。

「わっ?!…キラ?」

「もー!アスランまた一人で考えてる」

「違うよ。子供の頃にやりかけだったパズルのことを思い出してたんだ」

パズル?とキラは首をかしげた。
俺の性格を知っているキラには途中で投げ出すことが珍しいかったのだろう。

「キラと会う前だし、5000ピースもあったからね」

「ごせんッ!?…プレゼントするおじ様もおじ様だけど、途中でもやるアスランもすごいね…」

「まぁ……そこは親子だからな」

「ん~、そのパズルってまだあるの?」

「あぁ、やりっ放しのまま本の下敷きになってた筈だと思うけど」

「ねえ!じゃあ、そのパズル完成させようよ」

「え?でもピースが全部揃ってたかどうか…」

「アスラン几帳面だからちゃんと取ってるよ」

いつになくパズル完成を推してくるキラに俺も何だかやる気が出てきた。

「わかった。でも一日二ピースずつだからな!」

「ぇえ!そんなのいつ出来上がるか分からないじゃない!」

夏休みの宿題を最後の日に一気にやるキラにとって、コツコツやるアスランのやり方はじれったくてしょうがないようだ。

「焦る必要はないだろう。ゆっくりやろう?キラ」

「…アスラン、一人てやっちゃわない?」

「大丈夫、二人でちゃんと完成させよう」


いままでかけ間違えた俺たちのピースをゆっくり、一つずつ。




そして、一枚の絵を二人で描いていこう。




END
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