それは待ちに待った眠り姫の目覚め。

「…キ…ラ？」

「ァスラン……。悲しいの？」

俺が泣いているのを見てそう思ったのか、キラは俺の顔に腕を伸ばしてくる。

だが、その手は指先までしか届かず涙は拭えなかった。

だから…


「違うよ、キラ」

その手を取って俺の方から顔を近づける。

「悲しいんじゃない…」

君が目を覚ましてくれたから、もう悲しくなんてない。

だって、これは━━

「嬉しいから泣いているんだ」




＊＊＊＊＊＊

目を覚まして最初に見たのは藍色。

アスランの髪の色。

でもアスランは俯いて、僕が起きていることに気がついてないみたいだった。

肩を小さく震わせて


泣いているの？


今の状態では何も解らない。

動かそうとした手は重くて、まるでスローモーションのように遅かった。

「……ァ…」

声を出そうにも、掠れて上手く出ない。

ポタッ…


「…？」

何かシーツの上に落ちた。冷たい…水のようなもの

ポタッ…

これは、アスランの“涙”…？


「……ぁ」

自分の頬を撫でてくれていた手が遠ざかろうとしている。

キラは咄嗟にその手を掴んだ。


「ッ？！」

アスランの動きが止まって僕は彼の名を今出せる精一杯の声で叫んだ……つもりだった。

「…ァス…ラ…ン？」

さっきは出せなかった声が今は多少掠れてはいるが、しっかり紡げた。

アスランの顔を見れば、彼にもそれが届いたことが分かる。

でも、その顔の表情から彼の感情を読み取ることは難しかった。


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