Jigsaw puzzle《完結》
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あれから彼女たちには俺が知っている事を話した。
キラの家で見たカリダおばさんの豹変した姿。
そして、その母から受ける暴力に甘んじている娘。
でも、どうやら暴力に訴えるカリダおばさんにも、何かのっぴきならない理由があること。
「……」
「……」
話している間、彼女たちは一言も喋らなかった。
ただ、静かに俺の話す事に耳を傾けている。
一言一句聞き逃さないように…
「━━━で、大体は、こんなところだと思う…」
自分が見たこと、そしてそれに基づく独自の推測を織り交ぜて話したが、殆どは合っているだろう。
あらかた話し終えて二人を見ると、ミリアリアは今にも泣きそうな悲痛な表情で俯き、フレイは悔しそうに唇を噛んでいた。
(…きっと、さっきの俺と同じ気持ちなんだろうなぁ)
キラの異変に気づいていながら何もしなかった自分。
何故、何もしなかったのかと今さら後悔する己に対する情けなさで心がいっぱいになる…
━━それから数分経って、フレイとミリアリアは帰っていった。
フレイに至っては俺に置き土産を残して……
『アンタには、これぐらい当然なんだからね!』
━━と、捨て台詞を言って立ち去る後ろ姿は、女王さまと侍女のようにアスランの目には映っていた。
「……いっ!?」
今だ痛みのとれない左頬を何度もさする。
「これも、お前の恋人としての試練ってやつなのかな…」
また二人になった室内。
キラが寝ているベッドの端に腰を下ろすと重みでギシリと軋む。
「キラ…」
顔にかかった髪を横に払い、そのまま優しく撫でる。
「……キラ?」
何度呼び掛けても彼女からの返答はない。
「……キラァ…」
ベッドシーツを握り締めて俯く。
…ポタッ
何か冷たいものが頬を伝い落ちた。
…ポタッ
それはアスランの流した涙。
流れる涙は止まることなく、シーツに染みを広げ続ける。
「……ッ…」
止まらない涙を拭う為、手をキラから離そうとした。
━━その時
ぎゅっ
「ッ?!」
離れる手を冷たい手が引き止めて再び頬へ戻す。
そして聞こえた、愛しい声。
「…ァス…ラ…ン?」
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