Jigsaw puzzle《完結》




『あのね、あのね。
アスランと帰りに見つけたから一緒に摘んで帰ったの!』

お母さんにあげるの!と頬を紅潮させて力説する幼い娘に、カリダは目を細めてお礼を言う。

『そうなのぉ、ありがとうキラ』

『えへへ////』

はにかんで笑う娘が愛おしく、手は自然とキラの頭を撫でていた。

優しく、慈しむように━━…

『でも…アスランくん、一人で大丈夫かしら…』


『??、お母さん、アスランがどうかしたの?』

母の独り言にも近い呟きの中に出てきた“アスラン”という単語をキラは聞き逃さなかった。

しきりに、「ねえ、どうしたの!」と尋ねてくる。


『レノアが、…アスランくんのお母さんがね、今日は仕事で帰りが遅くなるって、心配してたから…』

『アスラン、今お家に一人なの?』

可愛らしく小首を傾げる娘にカリダは「そうなるのかしらねぇ…」と曖昧に答えた。

ザラ邸には多くの使用人がいるから一人という言い方には語弊があるが“家族”という意味では間違ってはいない。

『じゃあ、僕のお部屋にお泊りすればアスランも寂しくないよ。ご飯も一緒に食べれば一人じゃないよ!』

実に子供らしい単純な考え方だが、確かに一理ある。

『でも、アスランくんにも聞いてみないと…』

『じゃあ!僕いまからアスランに聞いてくる~』

『あっ、キラ!………行っちゃった…』

あまり深く考えずに直ぐ行動する娘のお転婆ぶりに呆れの溜め息を零したけれど

でも、その顔には笑みが浮かんでいた。




「ァス…ラン…」

しかし、久しぶりに見た母の温かな笑みとは逆に、現実のキラは激しい罪悪感に襲われていた。


「…アスランも、一人…なの…?」

フラッシュバックする過去の記憶。

(アスラン、アスランのお父さんとお母さんが帰って来るまでは僕とずっと一緒だよ!)


(━━うん、そうだね。

ありがとう…キラ



帰って来たら…ね)


アスランと一緒にいられる事がただ嬉しくて彼のその時の表情は覚えていない。


「アスラン……っ!」


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