Jigsaw puzzle《完結》
両手で顔を覆い、自分の不甲斐なさに涙する息子にパトリックは、だがな…と更に続ける。
「確かにお前は気づくのが少し遅かったかもしれないが、まだ手遅れではない」
違うか?
そう優しい父親の顔で諭すパトリックにアスランは震えた声で「はい…」と返すのがやっとだった。
父の気遣いがとても嬉しく感じた。
自分が落ち込んでいれば、こうやって励まし、道を指し示してくれる。
そしてたとえ親子であろうと、必要以上に干渉せずにお互いの立場を尊重して接する。
そんな父母の態度を昔は自分に興味がない、どうでもいい存在だと勘違いしてしまっていたが、それも昔の事。
今ではその考えを誇りにすら思っている。
「ハルマさんに連絡をいれておいた。だからそろそろ家に帰宅する時間だろう。私は今の状況を彼に説明する、お前は時間まで彼女の傍に付いていてあげなさい」
「解りました。ぁ、あの…父上」
「ん、なんだ?」
「この度の事。ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
眉を八の字にして申し訳なさそうに謝る息子に彼はそんな事か、と妻と同じ藍色の髪に手を伸ばして、クシャリと掻き乱す。
「気にするな。子供が親を頼るのは当たり前の事だ…それに」
「……それに?」
キョトンとこちらを見上げる最愛の息子に父の口許は自然と吊り上がる。
「未来の花嫁を手放されるほうが、よっぽど迷惑だ」
「ち、父上っ…////」
顔を真っ赤にさせて抗議の目を向けてくるアスランの態度に満足したのか、パトリックはニヤリと人の悪い笑みを残して去っていく。
「本当に、…ありがとうございます」
父の背に向かってアスランは深々と頭を下げて見送った。
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